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2005年6月12日 (日)

繊維産業:窮鼠猫を噛んで欲しい

今日では、繊維産業が日本経済の要であったなどと言っても多くの人が不思議そうな顔をする。現在、糸換算した日本の繊維供給量の63%を輸入が占め、内需の83%が輸入になっているからだ。日本の繊維産業は輸出産業の花形で、貴重な外貨を稼ぎ、それによって原材料や機械を輸入して日本経済は発展してきたのだ。ちなみに、1951年(昭和26年)の輸出額をみると、繊維品が44%を占めていた。

juugyouinn しかし、日本経済が発展するなかで、相対的な競争力が低下し次第に規模が縮小してきた。図は、従業員数の推移を見たものだが、繊維産業は1960年代中頃をピークに減少の一途を辿り、それに代わってファッション産業の発展とともに成長した衣服その他の繊維製品も90年代中頃から減少している(クリックすると拡大)。

これほど見事に縮小したきた産業であるが、そのなかでも新しい開発が進められているのに驚く。

たとえば、丸和ニット(和歌山)では、「バランサ」という丸編とトリコットの特徴を併せ持ったニット生地を作る機械を開発した。この機械で作った生地は、ニットなのだが、ハサミで切ってもほどけない、普通のニットよりも形が安定しているなどの特徴がある。同社は、機械の特許は取らず、それを使った生地で世界市場に勝負をかけたいとしている。

このほかにも、写真や絵をスキャンし、多色糸を使ってあたかもその絵のようなタオルを織るソフトを開発した企業もある。インテリア用途を考えているようだ。

日本の繊維機械メーカーは優れているが、優れているからこそ、それが海外に輸出され、繊維品輸入が増えるという問題がある。同じ機械を使って、世界各国のデザイナーがそれぞれの創造力を発揮し、機械の可能性を広げるというのは素晴らしいことだ。しかし、一般には、低賃金を利用した単なる価格競争に陥ってしまう。

丸和ニットが機械を内製で工夫し、それを使った生地で勝負するというのは、新しい展開だ。日本の繊維企業が窮鼠猫を噛むというようになってくれたら面白い。

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