武士の商法
実は、この仕事の話があった時に、この財団(産学連携の窓口)の人になるのは、縛られるようで嫌だった。
そこで、やってもらいたい仕事があるなら、それを私なり、私の個人会社なりに受託して欲しいと言ったのだ。
私にこの仕事を持ってきたIT業界の社長さんは、私の事務能力の無さを知っていて、私が個人会社を作るのは大変だろうから、彼の会社の社員となり、そこがこの仕事を受託するというようにしましょうと言ってくれた。
財団(この事業は道庁が管理)との間に入って交渉しますからとのことだった。
この話があったのは、2月頃で前職の大学を辞めると決めた後である。私自身もプータロウになるのは、少々怖かったこともあるし、産学連携という現場を見れるというのもちょっと魅力であった。
そこで交渉をお任せすることにした。
ところが、こういうスキームが始めてということもあり、道庁・財団の担当者同士のコミュニケーションが上手く行っていなかったこともあり、思いのほか難航だったようだ。
3月末には決まるだろうと、すぐまた戻るつもりで東京自宅に来ていたため、郵便転送もしていなかったり、暖房器具の設定も雪が残っているのを前提にしてきたため、いろいろとトラブルもあり大変だった。
年金や保険も彼の会社がやってくれるというのでそのままにしていたが、長引いているので、結局自分でやらなければならなかった。それなら、最初からそうしたのにと恨みも言いたくなった。
そのうち、プータロウの生活にすっかり慣れ、「地域」の視点なんてどうでもよくなった。東京では、友人がさまざまな勉強会を開催しており、暇なのであちこち顔を出すだけで沢山の刺激がある。札幌の約束があるので、必死に仕事を探さなかったが、友達の大学の手伝いくらいなら仕事がありそうだ。自分で企画し、出版を前提に本を書くこともやれそうだ。
そんな折、ようやく決まりましたとのことだった。間に入ってくれた方々は、相当苦労をしてくれたらしい。だから無碍に、もうや~めた!とは言いづらい。
しかしながら、間際になっても、仕事の条件というのが提示されない。
仕事の内容は概略分かったのだけれど、いったい幾らで受けて、どういう立場で仕事をするのかが見えないのだ。
今だに、本当の給与というは分からないのだけれど、暗黙に提示された金額は、ほぼ前職の半分だ。これは、私と同じ仕事を既にしている人の半額でもある。確かに、間に入ってくれた社長さんに、90歳と60歳の老女が二人で暮らすなら300万円もあればやっていける、だから大学を辞める(自由が欲しい)というような話をしたことがある。
これをまともに受けたのだろうか。それとも、札幌価格なのだろうか。
自由が欲しいということを受けて、私の労働条件は月の16日働けば良いというものだった。
そうか、月の半分だから、給料が他の人の半分なのか、それならしょうがないかと納得した。
ところが、これが馬鹿だった!
一月は30日か31日なので、月の半分だと思ったのだ。それがそうではなく、平日の16日だったのだ!月曜から金曜まで平日は週5日である。つまり、20日のうちの16日だった。やれやれ、これでは5分の4ではないか。
だったら、もっと給料上げてくれ!
むなしく叫んでも、もうしょうがない。あと8ケ月は、これで行くしかない。
間に入っていた社長さんにこの間問い合わせたところ、知らない振りをしたが、担当者に聞いたところ、最初から週4日ということで話を進めていたらしい。
まぁ、新しいスキームを入れるために、いろいろと譲歩したり、ご苦労されたのだろうけど、なんだか嵌められた感じだ。
この社長さんは、元、札幌地区では、トヨタのトップセールスマンだったというから、交渉ごとは得意なのだろう。私には、柔軟にやって下さいということであった(東京に居るのを上手く出張にするなど)。
武士は、融通が利かないので、こうしたことをやるのは良心の呵責に耐えられない。こんな私が、この産学連携事業の事業化担当というのだから笑ってしまう。
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