サイコロ人生
長銀が潰れたときも、本当は、嬉しかった。誰も長銀に勤めてくれと頼まれたわけでもないのに、それまでは、なんだか辞めてはいけないように思っていたのだが、それが急になくなって、空がぱぁっと晴れたような気がした。
私なんか、会社では、自由勝手に振舞っていたほうなのに、なんだか、社長も部長も意味を失ったことがざまぁみろという感じで嬉しかった。戦争が終わって、焼け出されたのに、皆の顔が晴れ晴れしていたというが分かるような気がした。会社が潰れて皆青くなっているのに、ニヤニヤしていると、不思議がられた。
本当は、あの時、辞めておけばよかったのかもしれない。でも、しばらくするとやっぱり不安な気もして、そのまま社会基盤研究所に移ってしまった。そして、行きたいと強く思ったわけでもないのに、人の紹介に任せて、大学教授に、しかも北海道に流れてきてしまった。
でも、サイコロではないけれど、コロコロころがって出た目に乗るというのも、ちょっと面白いかなぁと思ったのも確かだ。研究室の窓から学生たちがサッカーの練習をしている。最初に住んだマンションの五階の部屋からは、雪が残る青い山が見える。ちょっと新鮮だった。若々しい気持ちで働けるのではないかと期待に胸がふくらんだのも確かだ。
だけど、性に合わなくて辞めてしまった。辞めて嬉しかったのだから、そのままプータロウをしていたらよかったのかもしれない。でも、また、ここで、少しの不安があり、人の進めで今の仕事を引き受けてしまった。
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