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2005年9月 2日 (金)

ジャンヌダルクになれない

今度の仕事は、産学連携を仕事しながら観察できる。大学では、産学連携や地域経営などを研究しており、それを外からではなく、なかから観察できる良いチャンスに思えた。

最近では、国立大学のなかに、産学連携を仕事とするセンターができ、そこに外部から助教授などの肩書きで人を雇っている。この先生の多くは、学生に教えるのではなく、専ら大学発ベンチャー支援や研究を企業に結びつけるといった仕事としている。彼らは、実際に仕事をしながら、それについて論文を書いたり、講演したりしている。こういうポジションがうらやましいと思ったこともあった。しかし、自分では、やはり人のために奔走するのは性に合っていないと思い直していた。

ところが、今度の仕事は、札幌IT産業を活性化させるためのビジョンと具体的な方策づくりだという。個々の案件の事業化はコンサル経験のない私には難しいけれど、ビジョンづくりならやれるのではないかと思って、アクションリサーチのつもりで引き受けた。

しかし、霞を食ってきた人間が現場に入ってみると、これはやはり身に余る。

第一には、地元の人にしかわからない人や組織の確執があることだ。

同じサッポロバレーの企業でも、派閥のようなものがあるらしい。もともとは同じ会社を立ち上げたのだが、今では、犬猿のなかという社長同士もいるらしい。つまり、意見をまとめあげるのも大変だし、誰かをトップにかつぐこともできない。誰がが言い出したことは誰かは聞かないのだ。

第二には、日本の財団は、単なる補助金の受け皿でしかないということだ。

私は、北欧の産学連携の仕組みを学んできたのだが、たとえばフィンランドのオウルのテクノポリスのように、第三機関がエンジンとなって、地域の産学連携を引っ張っている。この機関のボードメンバーには、市長、学長、経済界の代表が入っていて、大きな方針のもと、この機関にエンジンとして動くよう委託している。つまり、ボードメンバーは株主だが、機関の長は社長といった感じだ。

私がいるのは、仕組みは同じ財団なのだが、どうやら、国の補助金の受け皿でしかなく、財団そのもの(地元のボードメンバー)が大きな方向性を決め、財団が判断して動けるようにはなっていないらしい。財団が何か決めるには、道庁の意向を聞かなければならないし、市や経済産業局にも根回しをしなければならない。では、道庁には、政策を考え、実行するだけの力があるかというと、そうでもないように見受けられる。

同じ補助金を受けるにしても、財団が機動的に判断する力があれば、もっと有効なお金の使い方ができるだろうに、もったいない。テクノポリスのような実行力のある財団にするには、どうしたらよいのだろう。知事がそうしようと政治的に判断し、実行すれば良いのだろうか。

第三に、札幌IT企業の熱意がまったく感じられないことだ。

デンマークのオールボーは、ワイヤレスバレーとして著名だが、そこでは、地元IT企業がロビー活動をして大学に必要な講座を作らせたり、インキュベーションをする第三者機関を設けている。ところが、サッポロバレーの企業からは、自分たちの地盤を強くするためにこういうことをやって欲しいといった強い思いが伝わってこないのだ。

非常に志のある社長が、札幌IT企業の底上げをするためのプラットフォームづくりをしたいとして、文部科学省から5年間で25億円も得る事業を取ってきたのだが、数社を訪問した限りでは、皆シラーっとしている。今現在、業績が厳しく、自分たちの足元しか見られないという状況だからだというが。

サッポロバレーの主役といわれた人たちもたぶんもう40代だ。この主役たち以外でよいから、小さくても良いから、元気ある企業から、是非こんなことがしたい、こうしたいのだが、という声が聞けないものだろうか。

らしい絵を描くことは簡単だ。

しかし、絵に描いた餅ではつまらない。私は神輿を担ぐのは好きだし、担がれるのも好きだ。ジャンヌダルクになりたいのに、民衆の声が聞こえなくては、旗が振れない。

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