道
別のページで吉田民人さんの設計科学の論文を読んでいる。
吉田さんのことは良く知らないのだが、シンポジウムでみて、地味なおじさんに見えるのだが、頭の構造がしっかりしているし、若い研究者の意見にきちんと反論しているのですごい親父だと思った。
公文先生も、まだまだ考えを続けている。本を読むのが速いし、いろいろな本を読みながら考えを進めている。あるいは、いろいろな人と議論しながら考えを進めている。最近では目が悪くなり、日本語を読むのがつらいが、横に流れる英語の方が読みやすいと言っていた。
私は、公文先生の周辺に居たことがあり、このほかにも、いろいろな優れた人の側に居たことがある。
当時は若かったので、自分も大きくなったら、この人たちと同じになるとか、世代が変われば取って変われるものだろうと、なんともうぬぼれが強いというか、怖いもの知らずというか思っていた。
これは、私が若かったのと、こういう優れた人たちといつも会話できる立場に居たので、自分の脳みそは、1%くらいなのに、30%くらいに感じられたからだと思う。つまり、こういう凄い人たちと日々何気なく会話しているだけで、門前の小僧が習わぬお経を読むように、自然と認識レベルが高まり、別の世界の人々と話をすると、なんだか自分も賢いように思えたからだ。
今は、こういう優れた人々が議論する場に居合わせることが出来ないので、1%の脳みそが一生懸命本を読んでも、空回りするだけに終わっている。
優れた人々が議論する場に居合わせられないのは、そういう人たちにとって私は呼びかけるほどの意味がないからで、意味がないのは、私が1%レベルであることもそうだが、私がこうした人々の興味を惹くような発信をしていないことにもよっている。
昔うぬぼれていたころの考え方からすれば、本来、そろそろ私が回りに影響を与えていなければならない年代のはずなのだが、それは、やっぱ1%の脳みそであることの結果でもあるのでしかたがない。
そんなことで、私は、かつては、知識人の端っこに居ると自らを位置づけていたのだけれど、どうやら知識人ではないようだ。
公文先生などを見ていると、どんなに身体が弱っても知識好奇心から、本を読まざるをえないみたいだ。
ところが、私は、年末には、大掃除にかこつけて、本を読もうと思わない。掃除の方が捗るからだ。そして、草臥れはてると、結局TVのくだらない番組で癒している。やっぱ知識人ではないなぁとつくづく思う。こんなに時代が変わっている折に、掃除とTVで時間をすごせるという神経は、やっぱミーハーでしかない。
吉田さんの論文の途中でアインシュタインの伝記をネットで読んだ。アインシュタインは、子供の頃からの疑問、光の伝わり方について、ずっと考え続け、それが解決しそうに見えたときには、寝食を忘れて没頭したようだ。
知識人は、知識を得ることでさらに知識を増せる人であろうし、知的エリートは、自分の身の回りのことよりも、世界の在りようなどを考えるに違いない。アインシュタインのような研究者は、不思議に思ったことを突き詰め整合性の取れた解に結びつけることに喜びを見出すのだろう。あるいは、南方熊楠のように、観察をやめられない人もいる。
「知識人」というにはおこがましいのだが、それでも、私は、あこがれとして、その端っこには居たいものだと考えている。これは、まぁ趣味だと思ってもらうことにしよう。そのうえで、知識に係わるにあたっても、いろいろな道があるのではないかと思う。
大きな流れをつかみたい人、美しい数式をつりたい人、観察をこよなく愛する人、実験が好きな人、先端的な流れをつかみたい人、社会の設計をしたい人、体系化を好む人などなど。好きという志向性と技としての方法論などから、それぞれの道が選択されていく。
では、私は、何をやろうとしているのだろう。あるいは、何をしたいのだろう。
たぶん、今動いていること(人間が係わっている社会の動き)の筋を見つけたい、一般には、これが筋であると思われているのだが、そうではなく、こっちが本筋であるということを見せたい。
アメリカでは・・という「ではの守」ではなく、今動いていることを観察し、自らの感性で構造を見つけ出し、Aを動かしたらBになるという仕組みを明らかにしたい。
そのための方法論は、現場を良く観察すること、人と話をすること、似たようなことを研究している論文などを読んでヒントを得ること・・だろうか。ミーハーな私には、前者はやりやすいと思っている。
観察が虫や動物ではなく、人間とその社会であることがちょっとやっかいだ。
しかも、研究論文では、何故その事例を取り上げたのかがきちんと説明できないと意味のない論文になる。たまたま札幌では駄目なのだ。
でも、まずは札幌を観察し、地域におけるイノベーションシステムの在りよう、上手くいくには、何が筋なのかを考えたいと思っている。
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