web2.0とロングテール
梅田さんの『ウェブ進化論』を読んだ。
web2.0もロングテールも知っているつもりでいたが、どうやら理解不足であったようだ。
まず、web2.0だが、私は、全員参加型になったインターネット利用を指すのだと思っていた。これ自体は間違いではないようだ。
しかし、梅田さんによると、その背景には、グーグルに代表される新しい動きがあって、ネットの「あちら側」に独自に巨大なコンピュータシステムを構築し、それが他社の追随を許さないほど低コスト構造のシステムであるらしい。
グーグルは、それを使って、個人に大きなスペースを提供し、それを検索して、内容にマッチした広告を載せるビジネスモデルを生み出したのだという。また、個人のサイトなどを検索し、それに適した広告を載せる「アドセンス」というビジネスも始めた。そして、その広告を訪れた人がクリックすると、サイト運営者である個人や小企業にお金が落ちる仕組みなのだという。
これによって、名も無い個人がお金を稼げる仕組みができた。
ロングテールというのは、「スモールワールド」や「新ネットワーク思考」を読んで一人勝ちの話であると理解していた。だから、たとえば東京一極集中のなかで札幌はどうするといったことを考え、差別化しかないなどと思っていた。こういう理解の仕方自体は間違いではない。
しかし、梅田さんが書いているのは、グーグルやアマゾンは、この名も無いようなロングテールからお金を生み出す仕組みを考えたということだ。
アマゾンは、ベストセラーではないいわば売れない本を新たな話題と結びつけることで蘇らせた。ここから売上の3分の1を稼ぎ出しているのだという。さらに、グーグルの「アドセンス」は、アマゾンの売れなかった本ではなく、これまで広告と無縁であったサイトにお金を稼ぐ可能性を提供したのだ。
勝ち組でビジネスをしてきた大企業は、高コスト構造になっているので、ロングテールを追いかけられない。追いかければ追いかけるほど赤字になってしまうからだ。安いコストでロングテールから利益を上げられる仕組みを作ったところに、グーグルらの面白さがある。
グーグルのやり方では、APIという開発者がプログラムしやすいデータを公開することによって、たとえば「グーグル・マップス」のAPIを公開したので、地図情報に関連したサービスをいろいろな人がさまざまに開発できるようになる。
これまでの閉じたシステムである「こちら側」でこうしたシステムを開発するとなると多額のコストがかかるが、「あちら側」のAPI公開により、多くの人が参画して多様なサービスをいとも簡単に作れるようになるという。
技術が分からない私が要約しているので間違っているかもしれない。正しくは梅田さんの本を読んでもらうとして、私が驚いたのは、
1.単に通信コストや端末が安く高速・高機能になったので、誰もが発信できるようになったのだと能天気に思っていたが、グーグルは、ネットの「あちら側」に低コスト構造のシステムを作り出し、環境変化をきちんと自分達のものにしたことだ。
ネットの「あちら側」と「こちら側」とどちらが主導権を握るかについては、幾度か行ったり来たりしていたように思うけれど、パソコンが高性能になるとか、通信速度が高速になるといった他力本願なだけでなく、自ら優れたアルゴリズムの高性能システムを開発することで、新しい時代の覇者になるように動いたことである。
つまり、環境変化を読み込んで、それを自らに引き寄せた。目のつけどころが素晴らしいことと、そうした素晴らしいシステムを開発できるだけの人材が居た。日本は、ネットの「こちら側」のマイクロソフトにやられていて、今度もグーグルにやられるのかヨと思ってしまう。
2.2割の人が8割の利益を得るということを逆手にとり、8割の名も無い人々を上手く使うという発想をしたことだ。それは、上記の低コスト構造のシステムを開発したから可能になった。ロングテールを活かすというのは、実にインターネットっぽいのに、日本では、誰も?それに挑戦しなかった。してやられたという感じだ。
3.民主主義っぽく見えるのだが、個人に大きなスペースを提供したり、APIを公開しいろいろな人が地図などさまざまな道具を活用したサービスを開発することによって、実は、グーグルは個人情報など全ての情報を握ることが可能になる。そういう意味では、怖い会社なのだ。もちろん、人間が見るのではなく、機械が検索するのだが。
技術が分かる人ならこうしたトレンドは読めたはずだ。
違いは、ビジョンを描き、かつそれを実行したところだ。
先駆者にはもうなれないが、こうやって見えてきたweb2.0の考え方は活用できるはずだ。
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