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2006年3月 8日 (水)

技術革新の玉突き現象

ドラッカーの本で面白いと思った記述の一つが、イノベーションが次ぎのイノベーションを産むのだが、それは必ずしも直接的ではないということだ。

1785年、綿紡績にワットの蒸気機関が利用され産業革命が起こったが、それから50年間の間に起こったことは、それ以前から存在していた製品の生産の機械化だけであった。確かに、生産量を大幅に増やし生産コストを下げ、大衆消費者を生み出したが、前から存在していたものの品質のばらつきがなくなり、欠陥が少なくなっただけであった。

そして、1829年に、まったくの新産業として鉄道が現れ、一気に普及した。これによって、心理的な地理を変え、経済を変えた。

次に生まれたのは、電報と写真であり、次が光学器械と農業機械であった。1830年代後半にはじまた肥料産業は、農業を変えた。公衆衛生が普及し、伝染病の隔離、ワクチンの発明、下水道の発達と続いた。こうして都市の住環境が健康になった。続いて、近代郵便、新聞、投資銀行、商業銀行などの新たな社会制度が現れた。

つまり、蒸気機関によって鉄道が生まれたが、次に生まれた新技術は、蒸気機関とは直接関係のないものであった。つまり、鉄道によって世界観が変わり、それによって電報や郵便が生まれたのである。

現在までのところ、IT革命は、それまでに存在したものを単に簡単にした程度であるが、これは、おそらくその後の大きな変化の序盤である。今日のIT革命を考えるにあたっても、次にくるイノベーションは、ITと直接かかわるものではないかもしれない。IT革命によって世界観などが変わり、それが次ぎのイノベーションを生むのである。

ドラッカーはそれをバイオであるとしている・・が。

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