見える化と郵便局
先月休日に経営書を読む会で、「見える化」を読みましたが、先日札幌中央郵便局を見学する機会に恵まれましたのでご報告。 ここは、本州と北海道との全部の集配をし、さらに北海道の各地との集配もしているところです。
夜に郵便物が届くので、夜から夜中にかけての仕事が多いらしい。
トヨタ生産方式を取り入れ、「見える化」に一生懸命取り組んでいました。以下、私が面白かったところです。見える化によって効率があがるだけでなく、気づきが生まれるなど働く人の自律化が生まれているようでした。
1.いつまでに処理しなければならないとか、何時入った荷物かなどをカートごとに旗を立てていたり、荷物を置く場所の床にラインを引くなどしていました。これは札幌がはじめて全国にも普及したとのこと。
2.ライバル会社に比べて品質を高めようと、カートを二段にして、下の荷物が上の荷物の重さで箱などが壊れないようにしていたり、決して荷物を床に置かないように荷台を設けていたりしており、これを見て、デパートからの取引が増えたとのことでした。
3、過去の平均の稼動にあわせて人員配置をしているが、15分単位で仕上げる実際の仕事量を合わせ込んだグラフにし、人員が恒常的に余っている日時を見えるようにしていました。これにより、年間?で1000万円くらい削減になったとのことです。
4.上記のようなグラフは、とても丹念なものでしたが、これをそれぞれの現場の人がつくれるようになっているとのことで(現場の人でないとつくれない)、一緒に見学しました民間企業の経営者の方々も皆さん勉強になると言っておられました。
トヨタとの違いは、トヨタの場合には、生産計画などある程度自ら計画を立てられるのに対し、郵便局の場合には、およその波を推測することはできるが、荷物や手紙の日々の量を完全には予測しきれないこと。予測しきれないなかで、いかにフレキシブルに対応できるかが違うということでした。
実際、何気なく受け取っている郵便物ですが、配達となると大変な作業が必要です。郵便番号が普及し、機械である程度まで読み取って区分しますが、次には、その地区のなかでどのような順番で回れば効率がよいかを考えて、郵便物を順番に並びかえて束ねる必要があります。これは、今でも人手でやっています。
荷物も時間指定の場合、ベテランの配達の人がまず見て、本当に配達先の人が今でもその住所にいるかどうかチェックするそうです。どうしてコンピュータでチェックしないのかと聞いたら、ここはまだコンピュータ化されていないとのことで、ベテランに頼ったほうが確実らしい。
良くは分からなかったのですが、郵便局全体でコンピュータ化は遅れているように見受けました。もっとも、個人情報も多いので、安易にコンピュータ化しないほうが良いのかもしれませんが。現在、民営化といわれ、窓口対応は非常に丁寧になっているのですが、制度やシステム化されているのではなく、個々の人が親切丁寧に対応してくれているので、コスト高になったり、労働強化になっているのではないかとちょっと心配な面もあります。
具体的に調べたわけではないのですが、個別対応的なイメージがあるのです。親切に対応してもらったので悪い気はしないのですが、何かシステム化されていない気持ち悪さが残ります。たとえば、私が委員として文句を言うと、部長が飛んできて、ちゃんと対応いたしますなどと言ってくれるのですが、それがなんとなく、代議士に個別に対応するような感じで、それを全体のシステムの問題として取り上げ、内部制度改革に生かそうとしていないような印象なのです。
また、ある委員からは、チルド小包への厳格な対応(温度管理など)を見て、良いことは分かったが、コストと価格との関係で、赤字なのではないかとの素朴な疑問が出ました。価格は、郵政公社全体でライバルなどとの関係で決められているようで、地元では答えられないようでした。
・・・とまだまだ課題は残るようですが、現場を見て改善する、問題点を明らかにするために見える化をするというのの第一歩は踏み出しているようでした。
ついでに言ってしまうと、郵便制度のように、一人一人が言われたことを忠実に間違いなく、不正なくやらなければならない仕事の場合、一人一人はコマンドのように動かなければならないのだと思いますが、前述のように、何か言われたことや気付きを制度やシステムの問題として意識し、制度改革に持っていこうという頭の働かせ方、そういう経路が出来ていない気がします。
そういうことは、高級官僚が決めることに慣れていたせいではないかと思います。何か問題が生じたら、文句があったら、菓子折りを持ってあいさつにいく。文句があった人や文句をいいそうな人を人としてマークして丁寧に対応する・・といった感じがあります。
だから、名刺では、部長とか役職であっても、そういう頭の経路が働かない。トヨタ生産方式を取り入れて、現場の人たちとその直属の上司辺りは変り始めているのかもしれませんが。
私のいる組織のように、回路だけ働いて、意見を述べる人が山ほどいるが、誰も筋肉を使わないという船頭多くして船山に登るようなのも困り者ですが。
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