バーチャルコーポレーション
94年に小田急学会でバーチャルカンパニーについて報告した頃に、『バーチャル・コーポレーション』という本が刊行された。
ウィリアム・ダビドゥ/マイケル・マローン著、牧野昇監訳で、原書は、1992年、翻訳本は1993年に初版が出されている。
私が報告したような変化の兆しがあるなかで、この本のタイトルは、ビジネスマンを惹き付けるところがあった。この本も情報化が進展するなかで、これまでの主としてアメリカにおけるビジネスのやり方が変容を迫られることになるだろうということを書いている。
1.量産品ではなく、オンディマンドに
2.ピラミッド型の組織形態ではなく、フラット化し、知的労働者が担う組織に
3.企業のなかで完結するのではなく、流通の組織化や消費者のファン化など運命共同体へ
ここでお手本とされているのが、トヨタ生産方式で、リーンな生産方式や考える現場や流通系列化などであり、アメリカ人からみて日本方式から多くの示唆を得た内容となっている。
もちろん、日本のやり方から示唆を得て、そこに情報化の効果を加味し、バーチャル・コーポレーションという概念をまとめあげたところが新しいわけだが、日本人からみると、本の表題の衝撃に比べ、ちょっと拍子抜けしてしまう内容だ。
私のバーチャルカンパニーは、無意識にこの本で述べている内容からトヨタ的な部分を引き算したものになっている。私にとってトヨタは、最も大きな組織であり、量産メーカーであると思えたからだ。日本人にとっては、トヨタに就職するのではなく、シリコンバレーのように大学や大企業をスピンオフして創造的な活動に挑戦するビジネス風土が欲しいからだ。
でも、私はどうやら「組織」の力を評価しなさすぎたようだ。若い頃には「組織」のなかで働き、その恩恵をかなり受けたのだが、組織の有り難味を理解していなかったし、恩恵を受動的に受けただけで、自ら組織を活用する術を身につけてこなかった。
そうかといって、必殺仕事人のように、本当に一人で戦えるだけの剣を磨いたり、リスクを認識し、それを最小限する術を得てこなかった。
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