コムスンがTVのニュースになっています。
1.昨年母を自宅で介護する必要になり、依頼したのがコムスンでした。
2.コムスンの親会社であるグッドウィル・ブループが元ジュリアナ東京の折口さんであることや、六本木ヒルズ族であることなどから興味は持っていました。
こんなことで、少し気になってネット検索してみました。私の関心は、次の点です。
1.確かに不正請求など違反をしていたし、改善命令への対応が姑息だったのは認めるけれども、全国に利用している人がいて、影響が大きいであろうのに、なんだか唐突に、少々魔女狩りのように思えたこと。
2.折口さんに社会起業家としての思いのようなものがなく、福祉を単にビジネスとして捉えていたことへの批判があり、確かに良い視点だと一度は思ったのだけれど、ビジネスにならなければ事業は回っていかないわけで、思いがあるということと、ビジネスとして事業を継続させることとをどう両立させることができるのだろうかと思ったこと。
1については、薬害エイズ問題のように、人が実際に死んだり、長期間苦しんでしまったにもかかわらず、企業やそれに加担した研究者やそれを放置した役人への処罰が後手後手であったのに、今回は、確かに保険金を掠め取ったという意味では悪だけれど、薬害エイズのような悪ではないのに、どうして、こんなに迅速な対応を採ったのだろうかということが疑問です。
ネットでのうがった見方では、社会保険庁への非難の矛先を変えたかったからというのがありましたが、年金問題の影響はもっと大きなもので、これは違うように思います。
現在の大企業も、明治の時代などには、政官との癒着や分からない闇の部分が多かったはずで、これが根源的な資本蓄積になったと思うのですが、ホリエモン、村上、グッドウイルなど、確かに若造のずるさ・軽薄さのようなものはあるにしても、昔の起業家のような政治力(闇も含めて)があったら、こうはならなかったのではないかと思われます。
料亭政治などが良いと言っているわけではないけれども、六本木族は、根回しとか、本当の意味の人脈というのを持っていなかったのではないでしょうか。もっとも、現代では、政治家もお坊ちゃんですし、昔の児玉や小佐野のようなドンみたいな人も居ないので、起業家の側だけそうなろうと思っても無理ですが。
こうした良く分からない闇の部分というのは、本当にいけないことなのでしょうか。アメリカのロビー活動や、欧州における秘密クラブのようなものは、あるはずで、教科書どおりに綺麗ごとだけで進まないのが世の中のはず。上っ面の格好良い人脈(有名スターと知り合い、官僚に顔が利く程度)だけではない世界を作り上げること、権謀術数のようなもの、あるいは、情報網(スパイ網)のようなものを張り巡らして、常に何かあったら動けるようにしておくこと、こうした危機管理などのノウハウを持っていなかったのではないだろうか。
役人の方も、不正を摘発しないと、またマスコミなどに叩かれるというだけで、業界育成という感覚を持っていなかったのかもしれない。実際、次にみるように、介護を今後どうするのかということに対するビジョンを持っていないのではないか。ビジョンや改善の方策を見出すことなく、ただ、現在の法律への適用が出来ていないということで叩いてしまった可能性がある。
役所の方も、社内根回しなどをしないで、自分の成果をあげたい一人の官僚が(時には、個人的に折口が気に入らないということだけで)先走った可能性もある。もっとも、グッドウイル側が役所への根回しなどをしていなければ、一官僚が先走っても、止める人もいなかっただろう。
2については、ネットでみる限りは、折口さんは、福祉を儲かるビジネスとしてしか考えていなかったようだ。福祉分野は成長分野であり、介護保険制度で需要は見込めるのであるから、そこを儲かるビジネスにしようと思うのは、起業家として当然ともいえる。儲かるビジネスにするために技術革新をするなら正しいのだが、それを不正請求にするのはもちろん問題だが。
買収に名乗りを上げたところが一括購入は難しいといっているので、その意味が最初分からなかったのだが、どうやら24時間サービスというのが難しいというのが分かった。これは、採算を考えて事業を考えたのでは、生み出されないサービスであるらしい。
そこで、よくも折口さんは、こんなこと考え出したものだとネット検索してみらたら、どうやら、このサービスの発案者は、社会福祉法人せいうん会理事長の榎本憲一さん(03年に亡くなられたらしい)という方らしい。コムスンというのは、コミュニティ・メディカル・システム・ネットワークの頭文字とのことで、榎本さんが1988年に株式会社で設立したもので、当時顧問には、農村医療のパイオニア、佐久総合病院の名誉院長の若月俊一さんが就任していたという。ここの記述は、「ゆき.えにしネット」(物語・介護保険という連載:雑誌の2005年6月)による。このサイトは、大熊由紀子さんという方のもので、彼女は『「寝たきり老人」の居る国、居ない国』という本を上梓しているらしい。
コムスンは、訪問介護を24時間行う独自の取り組みが当時の厚生省から評価され、94年度に北九州市から事業委託を受けるなど評判が広がり、東京にも進出を果たした。その後、97年にコムスンが買収したようだ(2000年4月から介護保険制度スタート)。
榎本氏は、その後、当時の宮崎県知事浅野さんに乞われて宮城県迫町など同県北部の八町が出資した民間の介護サービス会社「宮城登米(とめ)広域介護サービス」の社長となるが、手当てを支払わず介護士への過重な時間外労働をさせていたとして、改善命令が出され、最終的に撤退してその後、北九州に戻る。
その後、榎本さんが地元でどのようなことをされていたのか、24時間介護サービスをされていたのかどうか良く分からない。理念が良くても、経営は難しかったようだといろいろな記事に書かれている。
榎本さんは、宮城では(広域なので移動に時間がかかる)320人で採算に乗る、コムスンのような大手でも、1事業所当り200人の顧客が必要といっていたらしい。
介護保険スタート時には、在宅、施設合わせて利用者が149万人であったが、2006年4月には、348万人、介護費用も当初の三兆六千億円が、〇五年度には六兆四千億円と倍増。高齢者は増えるので安定した需要が見込める市場だが、法律でサービスの単価が決められているし、そろえなければならないコストも決められているので、多くの企業は、赤字らしい。
特に、訪問介護は、採算に乗りにくいらしい。WEB東奥日報には次のように書かれている。
しかし、厚生労働省が〇六年度から予防重視の政策に転換、介護費用抑制に乗り出したことで曲がり角を迎えた。生活援助サービスの利用が事実上制限され、コムスンの主力の訪問介護サービスの利用者も減少。〇六年十二月中間決算では、コムスンを含む同グループの介護・医療支援事業は営業赤字に転落した。
改正介護保険については、要チェックだが、受ける側からすると、たとえ1割でも、毎日のこととなると負担は大きい。保険財政にしても、逆に9割なので負担は大きいだろう。しかし、実際在宅介護となると、日常のことなので、本当は、もっと利用したいくらいなのだ。
寝たきりになってしまえば、ヘルパーの都合の時間にオムツを替えればよいかもしれないが、ある程度起きている場合、排泄の時間がポイントのタイミングで決まっていることはないから、継続的な時間が拘束される。確かに、オムツの品質はあがっていて、時間がずれても大丈夫なようにはなっているが、介護される側が排泄したいという意思がある以上、オムツでしたままにしておくのは非人間的だ。
一方、食事の時間は、ある程度どの人も同じくらいの頃だろうから、訪問時間が決まってしまい、平準化させるのは難しいに違いない。顧客が10人いたら、少なくとも5人ヘルパーがいないと、朝食や昼食や夕食時のヘルプはできないだろうし、そうなると、その間は稼動しないことになってしまう。
結局部分的にヘルパーに助けてもらうにしても、介護者は、私のように、外に仕事に出ることは難しくなり、在宅での仕事をせざるをえない。それでも、ある程度の手助けを得られることで、介護者の心に余裕が生まれるというのが現在の介護制度である。
デンマークなどの4人も介護者を抱えられる(音楽を楽しむ、車で外出する、仕事を介助する・・・と4人を税金で雇える)という仕組みは、どうやって可能なのだろう。(上記の大熊さんのコラム)
コムスンを非難するのは良いとして、では、このままで国民が満足できる介護サービスが受けられるのだろうか。他者が24時間サービスに二の足を踏んでいる状況、訪問介護サービスの単価が低くなった(一方で一割負担でも大変)という状況などなどを考えると、制度的なムリがあるのではないだろうか。
銀座でお世話になっていたセントケアの村上会長は、この仕事は福祉と事業のギリギリのところなので、儲からない、株式公開はどうしようかと昔言っていたように記憶する。その後、店頭公開を果たされている。良心的な企業が上手に回って行くことが出来ているのだろうか。
結局、金持ちを対象とした施設経営など別のところで儲けないとやっていけないのだろうか。
高齢者が増える時代、保険制度で国が管理しながら、民間ビジネスで賄うという介護保険制度で、サービスを受ける人・家庭、実際にサービスを提供するヘルパーが人間的の誇りを持つことができて、事業としてちゃんと回って行く仕組みは、どうしたら可能なのだろうか。介護保険制度の仕組みやその先進事例などを再度勉強する必要がありそうだ。
ところで、ネット検索をしていたら、コムスンのやり方は、年一回、シーガイアとか大きな施設を借り切って、各事業所の責任者が一堂の下に集められる研修会というのがあるらしい。そこで、業績(ノルマ)の高い人が表彰され、低い人は、立たされるらしい。その後の懇親会では、折口さんがボートで現れたり、皆を激励してまわったりするらしい。
・・・これは、まさに、ホストクラブの業績会議のようだ。この年代の男の子達にやる気を起こさせるには、競争心を煽ったり、成功すれば俺のようになれる(カッコウ良いと思わせる)、体育会系の賞罰などが良い方法なのかもしれないが・・。これでは、質の高い介護サービスが提供されるとは思えない。
せっかく、株式公開をして資金を手に入れ、全国展開を一気にやり、ブランド力も高めたのだから、規模のメリットを活かしながら、サービスの効率化への工夫などをきちんとやって欲しかったと思う。
コムスン社長の樋口公一さんは、1999年コムスンに買収された株式会社日本介護サービスの社長であった。彼の会社は、当時資本金1000万円、かたやグッドウィルは、19億円。しかし、面白いのは、従業員が505名に対しグッドウィルは196名しかいない!いずれにしても、大人の彼は、何もできなかったのだろうか。
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