敗戦と戦後
藤井良広『頭取たちの決断』日本経済新聞社の第一章を読んだところだ。長銀破綻の記述だ。買って読んでいなかったのだが、今日は腰が痛いので、寝転がりながら読みたくなったのだ。
バブル崩壊からの時期は、素直に「敗戦」だったと認識すべきである。長銀がではなく、日本がである。
1.戦争が何故起きたのか
2.何故敗戦したのか
3.敗戦後、ルールが変わった世界のなかで、どのように国を作り直すか
1と2にも興味があるが、取り急ぎ考えなければならないのは、3である。
3.1.どのように世界のルールが変わったのか
3.2.国をどのように作り直すべきなのか
3.2.1.これまでのレガシーをどうするか
3.2.2.新たにどのようにすべきか
まず、どのように世界のルールが変わったのか。
1.グローバル経済のなかに巻き込まれている
インターネットの普及と高度化は、どんな田舎で蝶が羽ばたいても、世界中のいろいろなことと連動する。
2.アメリカの覇権が揺るぎ、世界にはさまざまなプレーヤーが台頭している
ロシアが復権を果たし、EUが基盤を固め、中国やインドが台頭し、イスラムほかいろいろな民族宗派がそれぞれの思惑でいろいろ動きはじめ、世界に影響を及ぼす力をつけはじめた。いわば戦国時代・群雄割拠の時代。
3.2つの世界が共時的に存在
グローバルな金融と情報の動きが世界を嵐のように吹き荒れ、足し算のリアルな世界と掛け算というより幾何級数的な資本・情報の世界とがあるという現実。
こうしたなかで、国の構成要素の一つである企業は、グローバル経済に対応できる力をつけなければならない。
・本社を置く場所も世界のなかで考えつつ、社員にも現地の文化や情報に精通した現地の人々を雇用するようになり、人事制度もグローバルにし、日本の企業というよりも、「企業」としての生き残りをかけなければならない。
かつて長銀は、情報力を武器に、日本の企業を先導しているという自負を持っていたのだが、結局、バブルとバブル崩壊(自らが崩壊)の時期には、真のインテリジェンスを持ちえていなかった。これは、自らの置かれた状況をきちんと認識するとともに、内外の金融筋に政治力を発揮できるだけの情報力を持っていなかったこともそうだが、取引先である企業にバブルの時期に貸し込むにあたって、損失を与えないよう、ポートフォリオを組んだり、いち早くバブル崩壊を見極めて、売り急がせるということもしなかったわけで、本当の意味の情報力を持っていなかった(他行と同じことをただ競ってやっただけだった)。まぁ大きな流れのなかでしかたがなかったにせよ、したたかに売りぬくというリスク回避をしなかったのも確か。
今日では、トヨタにせよ、グローバルに事業を展開している企業は、あちこちの情報をきちんと得ているはずで、もし、長銀が生きていたなら、それ以上の情報力を持っていなければならない。
長銀は、投資銀行になろうとしていたものの、不十分であったらしいのだが(上記本によると)、本来なら、いち早く外国人でそういうことが出来る人材をもっと大量に導入しておくべきだったのだろう。当時は、「優秀」な行員をなかから育てようとしていたはずだ。バブルに走る前から投資銀行化は言われていたのだから、その頃から、外国の銀行ともっと四つに組んでいてもよかったのかもしれない。
別の本で、オランダの女王などが中心となった世界の金融クラブがあるとのことであったが、こうした欧米のクラブにしたたかに入り込んでいたとは思えない。パーティなどで表面的なつきあいは出来ていたにしても。イギリス、オランダのように世界をまたにかけて金融ビジネスをしてきたしたたかな人たち、スイスのように永世中立で世界中の大金持ちのお金を預かってきたしたたかな人たちとどこまで本当につきあっていたか、心もとない。こういう力を持つことが本当の情報力なのだろう。
これからの企業は、少なくとも、こうした世界中の業種別、地域別、宗教別のクラブ的なものの情報を持てるくらいになっていなければならないだろう。
私は、幸いなことに、もう61歳で、こうした企業で働くことは無いが、もし働いていたら、グローバルな企業風土のなかでどのように踊りきれるか、コミュニケーション力がないと無理だろう。もちろん与えられた仕事だけこなすクラークならば、それは可能だろうが。
・そう考えてくると、政治家や行政も、同じように、グローバルな世界で切った張ったができなければならない。
企業と違って、場所を海外に移すことはできないにしても、日本を守るためにも、情報力とそれを活かせるだけの力が必要である。国のインテリジェンス(諜報機関)を強化すべきという議論があるが、これは喫緊の課題であろう。行政マンも、海外留学経験者や海外勤務経験者などが国際部をどうにかやっているという状況ではなく、もっと国際的な人脈や考え方が出来る人を増やす必要があるだろう。
アメリカとの関係は、表面維持しながらも、独自の外交政策・産業政策を、アメリカに潰されないようしたたかに進める、時には、逆にアメリカを巻き込んで日本の戦略に沿って進めていく必要がある。
地域が地域の計画を実現するために、国の施策を上手に(主体的に)活用したり、法制度を自らの都合が良いように変換を迫るといったしたたかさが必要なのと同じように、日本は、アメリカを上手に使えるくらいにしたたかになる必要がある。
お伺い外交、お願い外交ではなく。大義名分を打ち出し(本当は日本のためなのだが)、だからアメリカも賛同すると世界的にも評価されますよ、といったやり方で。
・では、こうしたなかで、私が考えるべき地域、つまり足し算のリアルな世界は、どのようにしたら良いのだろうか。
地域でイノベーションを起こすにあたっては、地域にとってのメリットを考えた上で、グローバルな視点で動く、必要ならば、国の法制度を変えさせる(国にもそのほうがメリットがあると思わせる)。
具体的には、どのようなことが考えられるだろうか。
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