« 戦後 | トップページ | 敗戦から20年後 »

2008年6月 1日 (日)

野口提案の検討

95年に出版された野口さんが40年体制を変換すべきと言っている項目を検討しておこう。

1.東アジア発展のインパクトと産業構造転換

東アジアの発展と企業の海外投資→グローバル企業への脱皮は、かなり進みつつある。問題は、産業構造転換、なかでも空洞化した地方における経済を牽引する産業が育っていないことである。

例の知的クラスター創生事業は、おそらく、いずれもたいした成果を挙げていないはずである。ニセコのような観光産業の国際化を日本が主導してやれていないことが問題だろう。

一方で、ITやバイオなどの新しい先端産業では、日本は世界のなかで競争力を持ちえていない。金融もしかりである。マンガとアニメのみ話題になっているものの。

2.生活関連社会資本の不足(生産優先主義が勝っている)

これはどうなんだろう。住宅が劣悪、公園がない、道路が不足、通勤ラッシュ、下水道が整備されていない・・公共投資の比率が下っていることを問題にしているが。地方では、下水道が普及していない問題があるのかもしれないが(讃岐うどんの流す水が富裕化した問題をあつかったうどんという映画)。

むしろ、現在だと、病院や保育園などの福祉を含めた生活社会資本の不足が問題となっている。

別のところで、野口さんは、大学施設の充実や通信インフラなども挙げている。理系などでは、こうしたことは言えるのかもしれない。

また、よくわからないのだが、野口さんは、日本は、財政再建が市場目的とされ、消極的であったとしている。対外経常収支が黒字であるなら、公債の増発によって公共投資を増加させれば、日本経済の資源配分を海外投資から国内の社会資本形成に振り向けることができたのにとしている(資本移動が自由で為替レートが変動する場合には、本来、内需拡大が資本流入を招き、円高を導く、これによって経常収支黒字が縮小する)。

今日公共投資をしすぎて(最も景気刺激策としての低生産性部門への投資で、ほとんど意味がなかったのではないかと私は思うけど)、財政悪化になる前のことなのかもしれない。要チェック!

3.低生産性部門保護のための見えない税金

農業・中小商店などの保護が見えない税金投入となっている。円高なら消費者は得をするはずなのに、農業保護で高い食料を食べているとある。

しかし、今日では、食の安全・安定供給などを考えると、食管法のやり方を変える必要はあるが、国内自給率を高める必要が生じている。

また、中心市街地活性化など、競争力のない、やる気のない商店を残そうとしており、これは確かに良くないが、コンパクトシティなどの別の観点からの検討も必要である。どうやって大型店と競争できる地元商店を生み出すかが課題ではある。

私も、円高=悪というのは、反対だ。企業だって、円高なら原材料が安くなるし、多国籍化した企業は、上手に為替レートを見ながら、仕入れ販売を行うはずだ。消費者にとっては、海外旅行、輸入製品安で嬉しいはずだ。

問題は、今日でも、輸出産業が日本経済を牽引しているので、円高だと、日本の株価が下ることではないのか。しかし、前述のように、グローバル化している日本企業は、必ずしも日本からの輸出だけではなく、為替レートは原材料の輸入や海外生産車の輸入などで多面的に効いて来るはずである。

良く分からないが、円高で得をする産業(小売業などの輸入の多い産業)が日本経済の大きな地位を占めれば、円高による株価下落は相殺されるのではないのか。

野口さんの指摘でなるほどと思うのは、低生産性部門の産業・事業者の保護政策をするのではなく、競争で敗れる個人に一般的な社会保障(セーフティネット)をすべきだということである。雇用を守るために低生産性部門の企業を保護すると、無駄なことをやってしまうので、潰れたら、失業手当や生活保護で対処するのが経済的には正しいという指摘だ。

1.閉鎖企業への限界

終身雇用が前提であったため、早くに会社を退職すると、損をする給与・退職金体系になっていたが、確か、これは変更されたのではなかったか(要チェック)。

2.間接金融が阻む新産業の誕生

これも、今日では、ずいぶんと変わった。ベンチャーのためのインフラ(法制度)は、ずいぶんと整備された。問題は、種が居ないこと、種を育てるだけのソフトが不足していることかもしれない。

低生産性部門を保護政策で守るのは限界だが、農業などは、食の安全保障という意味でも重要な産業であり、緑を守るなどでも重要なので、競争を導入しながらも、創意工夫をして競争力のある産業に生まれ変わらせるか、生活空間として、納得のうえでの税金・寄付対策をきちんと検討する必要がある。これは、地域ごとかもしれない。アメリカの中小都市やEUの政策のように。

3.進まない都市開発

ここでは、貯蓄率の高さを前提とした議論がなされているが、確か、日本の貯蓄率は、今日大幅に下ったはず(要チェック)。

土地税制、借地法・借家法を要チェック。野口さんは、都市開発を進めるよう、土地を借りてでも活用するようにとの意見のようだ。

しかし、緑を残すという観点から、相続税で都会の緑が無くなることも要チェック!

|

« 戦後 | トップページ | 敗戦から20年後 »

コメント

この記事へのコメントは終了しました。