2008年5月26日 (月)

携帯電話のプラットフォーム

4月25日、紛争処理の勉強で、依田先生の弟さんで京都大学教授のレクを受ける。弟は生意気だからとお姉さんが言われていたが、賢そうで、自信もありそうで学者らしかったです。「携帯電話市場とプラットフォーム機能」と「ブロードバンド、マイグレーション(移行)、そしてロックイン」というご報告でした。

忘れないためのメモです。

前者は、番号ポータビリティが導入されたけれど、制度導入後わずか3%しか利用されていない。その理由を探ったもので、プラットフォームのオープン化がなされていないために、携帯電話番号は継続利用できても、電話会社を変更すると、メールアドレスや音楽コンテンツなどをそのまま持って行けないから(スイッチング費用が高い)とのこと。

これを証明するために、「コンジョイント分析」というのをやりましたとのこと。コンジョイント分析というのは、アンケートで、仮想の質問をすることで、潜在的ニーズを探り出す方法らしい。

たとえば、メルアドのポータビリティがある場合で、コストが1000円ならそれを選ぶか、3000円なら選ぶかといった質問をすることで、潜在的な乗り換え率を予想する。

あるいは、音楽コンテンツについて、①1曲当りの価格が100円、200円、300円、②アクセスの容易さ(メニューからリンク、検索エンジンで探す)、③決済の容易さ(電話会社の代金回収代行、クレジットカード利用)などのいくつかのパターンを質問して、どちらを選ぶかを見る。

調査の結論として、たとえば、ユーザは、全てポータビリティが可能な場合、2000円なら支出しても良いと思っているとか、音楽配信サービスの場合、アクセスや決済が容易であることが望まれ、そうなら1曲当り100~200円なら支払っても良いと思っているなどが分かるとのこと。

日本の携帯電話サービスは、電話会社による囲い込みの垂直統合モデルで成長してきた。プラットフォームのオープン化の議論は、8年くらい前から言われてきた議論なのだけれど、これを数字でちゃんと証明したことがポイントのようだ。PCの世界からみると異常なのだけれど、確かにクローズド化によって利便性が増し、高度なコンテンツ提供がされてきたことも確かなのだ。

総務省も、大局的に見れば、オープン化で競争促進によって携帯電話利用の活性化を望んでいる一方、クローズドな世界は、ある意味日本市場に合っているともいえ、これによって携帯電話会社の収益が高いこともあり、難しいところなのだ。クローズドなビジネスモデルは、日本だけなので、世界に広がらないという面もある。

そこで、総務省は、MVNOの促進を図ることで携帯電話市場の競争を促進したいと施策を進めているのだが、今のところ、なかなか進んでいない。

一方で、アップルiPhoneやグーグルのようにPCインターネットの世界の雄がいよいよ携帯電話事業に出てきた。アップルは、アメリカではAT&Tの回線網を使って、使用料を支払っている。アップルのビジネスモデルは、ある意味、アップルとしての垂直統合モデルで、アップルのサイトから携帯電話ソフトをダウンロードし、コンテンツもダウンロードする。グーグルは、自ら電波を取得し、MVNOに貸し出すという仕組みらしい。

携帯電話網では、世界のなかで日本が最もブロードバンド化が進んでおり、欧米の2Gでは、それほどインパクトが出ないかもしれないが、これらが動きだしたことで、世界中が携帯電話の可能性に気づき、日本とは異なるビジネスモデルが出てくる可能性がある。

アップルは、ドコモと交渉中というが、諸刃の剣で、これによって、ドコモのトラフィックは維持されるかもしれないが、ドコモの垂直モデルは相当浸食されることになるはずだ。プラットフォームのオープン化などと叫ぶのではなく、このように競争のなかで、利用者が最も喜ぶモデルが生まれてくれることが望ましい。

だが、一方で、日本のなかで、どうして新しいビジネスモデルを提供する強烈な企業が出てこないのかが口惜しい。強烈なコンテンツを持つ企業・・・Wiiの任天堂が携帯電話のMVNOになる??他には?フーム。

もう一つの報告内容は、ADSLでソフトバンクの価格破壊で日本のブロードバンド化が加速したが、現在、FTTHに移行しつつあり、そうなると、再びNTTグループの独壇場になってしまっているという指摘(これを数量的に明確にしたところに意味があるらしい。それぞれの市場が独立しているか代替性があるかなど。)。

NTTがさらに次世代網などでブロードバンド化を主導していく場合、地方のデジタルデバイドがさらに進む。無理して導入しても利用イメージ(利用するメリットが理解される)が湧かないと、使われなくなってしまうとの指摘(インターネット利用と考えるよりも、遠隔医療など公的需要を政策的に考えるとよいといっているようだ)。また、古い電話網の維持費にお金が掛かるので、企業としても政策的に光化したほうが安いかもしれない(もともとの管路などを利用できるのでそれだけ敷設するよりお金がかからないのではないか)。

別件で一次産業を活かすのに、ネットは欠かせないが、インセンティブが明確でないと、一次産業の人がPCインターネットを使うようにはならないと思った。ここは、いろどりのやり方(ネットには、儲かる情報があることを納得させる)が参考になる。そうなると、地方にも需要は増えるはず(本来、過疎地のほうがネットのメリットはあるのだから)。

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2006年10月27日 (金)

電話の統計

郵政省の電気通信局で働いていた頃のファイルが出てきた。

当時、PC通信を普及させる担当をしていて、ヤマトシステム、日本電気、富士通から研究会を手伝ってもらうために若い人を出してもらっていた。顔は覚えている(大分のCOARAを訪問したときの写真がある)ものの名前を忘れていたのだが、ファイルから名前が出てきた。その後一度だけ会食をし、確か日本電気の男の子が私にと赤いバラの花を一輪持ってきて皆を湧かせた記憶がある。富士通の女の子は、確か結婚し苗字が変わっていたように記憶する。皆新人に近かったはずだけど、あれからもう20年!今頃皆どうしているだろう。

それはさておき、電話加入数や電話普及率の国際比較などのコピーが出てきた。現在は、ネットでなんでも調べられるので捨てようかと思い、念のためネットで検索してみたけれど、閲覧できるのは、非常に最近のデータだけだ。出てきたコピーは、明治23年からのデータが載っている。

電話加入数のデータなんて今後使わないかもしれない。もちろん、いざ必要となったら、総務省の図書館やNTTに問い合わせれば数字は得られるのかもしれないが、探すのに時間とか手間がかかりそうだ。そこで、一応取っておくことにした。

電話のデータに限らず、多くの政府統計なども、昭和50年くらいからであることが多い。長期時系列統計もあるがデータKouyou 数が限られている。デジタル化のコストと利用状況を考えれば、古い電話統計など優先順位が低いのだろうが、早く、インターネットにこうした古いデータを載せて欲しいものだ。

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