2010年5月13日 (木)

地域イノベーションの現状と課題

公明党の機関誌『公明』2010年6月号に「地域イノベーションの現状と課題」という記事を書かせてもらった「chiikiinnovation1006.pdf」をダウンロード

社会イノベーションの手法で地域イノベーションを考えてみようという内容で、法政大学大学院での授業で使った道具を整理したもの。

1.ファストカンパニーとモニターグループの社会企業家賞の評価項目を紹介し、日本の地域イノベーションの事例で不足していることを述べた。

評価項目は、①社会インパクト、②成長戦略、③起業家精神、④イノベーション、⑤持続性の5つからなっている。

日本の事例では、①社会インパクト(システムを変化させるという明確な認識を持っていない、活動を評価する評価基準を持っていない)、②成長戦略(社会インパクトを大きくするために、事業を標準化し、他地域へも展開する)、⑤持続性(リーダーに依存しすぎて、組織化されていない)が弱い。

2.Theory of Change(TOC)=社会変革モデルを作成するにあたって、MAPを作成する手法を紹介し、地域イノベーションでもこの手法を使うとメリットがあることを述べた。

天気予報が、現在の状態から将来を見通す(forecasting)のに対し、MAPを作成するにあたっては、望ましい未来をもたらすには、何をしなければならないかを考える(backcasting)手法を使う。

実態を調査して問題点を明らかにし、解決のための方策を練るところまでは、プロジェクトの実施主体など少数の関係者が行うが、最終ゴールを決め、MAPをつくり、評価指標を設定するにあたっては、多くの利害関係者が参加し、議論しながら作成する。このプロセスを経ることにより、多様な立場の人たちがプロジェクトの内容を納得し、上手く協働しやすくなる。いわば、MAPは、コミュニケーションの道具でもある。また、プロジェクトの実現可能性を示したり、透明性を確保することによって、資金を得やすくなる。

++++++

社会イノベーションの分野では、社会変革に取り組むだけでなく、それを評価する仕組み、プロジェクト計画を作成するツール、支援サービス、お金が流れる仕組みが提供されており、これを地域イノベーション分野に適用することは有益であるとして、この記事を書いた。

しかしながら、書いてから、「地域イノベーション」は、社会イノベーションとどこが同じでどこが違うのかをちゃんと整理する必要があるのではないかと思えてきた。それがこのブログ。まだ考え中。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2005年6月 3日 (金)

地域情報化の意味

reagional innovationでも触れましたが、地域情報化の研究会に参加しており、5月26日の研究会で私がご報告させていただいた折の資料「chiikijohoka.ppt」をダウンロード です。

  1. 地域情報化とは何か→ソーシャル・キャピタルを増加させる道具と考えました。
  2. 札幌エリアの地域情報化→
    (1)NCF(ネットワークコミュニティフォーラム)をきっかけに、市民活動の玉突き現象が起きている報告をしました。
    (2)その結果として、では札幌エリアのソーシャル・キャピタルは増加したのだろうかを既存データで読み取ってみました。
    (3)札幌エリアは確かに住みやすいが人間関係が疎、経済状況が弱、それぞれの活動が非連携など克服すべき課題をあげました。
  3. 札幌エリアの課題克服に情報化は役立つのか→
    (1)ここで細胞生物学を援用し、地方都市がべき法則を上手く使ってハブになるための方策を探ってみました。
    (2)ソーシャル・キャピタルをもう一段高めるための道具と予感とは何かという問題を提起してみました。
    ・NCFが盛り上がったのは、インターネットの衝撃(新しい時代の予感)によるのだが、現在では、限界も見えてしまった。もう一度ワクワクさせるためには、どんな道具とどんな予感が必要なのだろうか。

内容は、regional innovationのブログでぐじゅぐじゅ考えてきたことをまとめたものです。

報告について、いろいろなご意見を頂戴し、自分でもまた頭が動き出したりしておりますので、今後もう少し考えを続けていきたいと思っています。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2005年5月13日 (金)

地域イノベーション戦略

「産業集積がイノベーションの母体として有効に機能するための必要十分条件-地域イノベーション戦略の必要性」「sanngyou.doc」をダウンロード を産業学会研究年報に書きました。これも原稿段階のファイルですので、実際の印刷とは異なっているかもしれません。

世界中でイノベーションの母体として産業集積が図られ、産学連携が強化されつつあります。ITとか、バイオとか、同じようなクラスターが各地にあるなかで、北大・北キャンパスが成功するには、クラスター間競争に打ち勝てるようなクラスター経営戦略が必要ではないかということをまとめたものです。

そして、クラスター間の競争を高めるために、クラスターの評価・格付け機能が必要になるのではないかとしました。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

北大・北キャンパスへの課題

前述の論文をもとに、北欧サイエンスパークの紹介と北大・北キャンパス構想の課題を講演したときのパワーポイント資料です「kitacampus.ppt」をダウンロード 。(11.6M:画像が多いので重いかも)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

地域イノベーション・システム

「有効な地域イノベーション・システム構築の要件-北欧5地域から抽出された要件とその札幌エリアへの適用」「kiyo2.doc」をダウンロード を前勤務していた大学の紀要に書いたものです。これも原稿なので、印刷とは違う可能性があります。

日本では、90年代半ば以降、国のイノベーション・システムは、ずい分と改善されてきました。しかし、産業集積を考えるにあたっては、地域のイノベーション・システムを考える必要があります。

science_park 2003年3月末に北欧(デンマーク、フィンランド、スウェーデン)の5つのサイエンスパークを訪問する機会を得ました(図をクリックすると拡大します)。これらのサイエンスパークも日々変化していますが、当時、すでに実績をあげていました。そこで、これらのサイエンスパークの事例から、有効な地域イノベーション・システムをつくるための要件を抽出し、それを北海道地域と比較してみました。

ちょうど、札幌エリアでは、北大北キャンパスにリサーチ&ビジネスパークを作る計画があるため、比較を通して課題をあきらかにしたものです。

そのなかで、北欧地域から抽出した要件がうまく当てはまらなかった点がありました。

  1. 日本のように中央集権的な経済社会体制のなかで、地域イノベーションシステムをどう構築していったらよいのか(北大の優秀な学生は本州に就職する、北大が連携する相手は本州の大手企業である)。
  2. 北欧地域の例は10~20万人規模の都市であり、200万人弱の札幌エリアには別の要件が必要かもしれない。
  3. 北欧地域の成功は聞き意識の共有化がまずあったのだが、札幌エリアの場合、これまでの補助金等への依存体質や北海道の首都機能を持っているため、危機意識を持ちにくい。

日本の地域に有効な地域イノベーション・システムを構築するにあたっては、ここをさらに研究する必要があるといえます。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2005年5月12日 (木)

産業集積論に欠けている十分条件

「産業集積論に欠けている十分条件」「kiyo1.doc」をダウンロード について、前勤務していが大学の紀要に書いたものです。原稿なので印刷されたものと異なっている可能性があります。

日本では、経済活性化のために、シリコンバレーを手本にし、創業支援・ベンチャー育成を図ろうと、1990年代後半からさまざまな施策が講じられ、各地では、産業集積をつくる試みがなされてきました。

しかしながら、これらは、ベンチャーが生まれるための必要条件に過ぎず、これだけでは、競争力のある産業集積にはならないのではないでしょうか。たとえて言えば、料理するための材料や鍋は全部揃ったけれども、それらを沸騰させる火(十分条件)がないのではないかと考えました。

Paris この十分条件を考えるにあたって、ファッションの世界でのパリコレをヒントにしてはどうかと論じてみたのがこの小論です。(図をクリックすると拡大します)

パリコレには、プロの目利きが集まり、信頼できる評価がなされ、それがビジネスにつながるので、世界中のデザイナーがやって来る。世界中のデザイナーの作品を一堂のもとに見れるので、世界中のバイヤーがやってくる。そこでの評価が世界中に発信されるので、パリコレがファッションの世界の中心となる。・・・といった正の循環が起きています。

こうした、総覧機能・評価格付け機能・新人がデビューできる機能(イチバ機能)を持たないとその分野で世界の中心にはなれない(シリコンバレーやパリ)のではないかとしました。

これは、情報発信機能の重要性を言いたかったのですが、未消化のままです。もう一つのブログに書きましたが、林原で聞いた「高野の午睡」の話が頭から離れなかったということもあります。最近流行の言葉でいえば、ネットワークのハブにならないと、いくら集積しても意味がないと言いたかったのです。

| | コメント (0) | トラックバック (0)