自発的組織への参加率
前述の中野さんは、「解説」の最後に、世界価値調査のデータをあげ、日本について述べています。
1990年に実施された調査によると、「教会、教育・文化活動、政党からスポーツ・娯楽活動に至る15種類の自発的組織に一つでも所属している人の率は、アメリカでは82%に達するのに、日本では36%しかなく、先進国ではイタリアと並んで最低水準にある」とのことです。
中野さんは、日本は、アメリカに比べ集団主義といわれているのに、このデータでみる限り、個人主義といわれているアメリカよりも、市民共同体に参加する人が非常に少なく、危機的な状態なのかもしれないと結んでいます。
Jリーグが「百年構想」を掲げて、各地にサッカーを中心としたスポーツクラブをつくりたいとしていますが、市民共同体がないなかで苦戦しています。サッカークラブが日本における市民共同体づくりのきっかけの一つになることを期待したいと思います。
日本では、檀家制度がありますが、これも今では、葬式仏教になってしまいました。宗教が地域の市民参加に結びついているのは、創価学会くらいです。
地方自治体は、これまで中央の政策を代行するのが中心で、それに対応してお金も流れてきたので、市民生活と自治は乖離していました。このため、20歳になって選挙権が与えられても、一票の意味を身体で感じることができません。
最近は、禁煙が時代の流れなので見かけなくなりましたが、昔はよく、「たばこは自分の町で買いましょう」というポスターを見かけました。市民は、たばこを買うくらしか、地方自治に参画できないのです。
北海道に人口1万5000人の栗山町があります。一次産業人口が約2割を占める小さな町でも、就業・就学者の約2割が札幌市、岩見沢市、近隣の町に働きに行ったり、働きに来ており、隣がどんな暮らしをしているのか見えなくなっているといいます。
そこで、栗山町は、「クリン」という地域通貨を導入し、これによって市民が参加するイベントなども増え、同じ共同体の住人であるという意識が生まれはじめたとのことです。
地域において、市民共同体を増やし、地域を身体で感じられるようにする(閾値まで上げる)ことが、政治や経済のパフォーマンスを高めるうえでは必要といえそうです。
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