ユートピアかもしれない日本の田舎
東京財団では、市区町村職員の研修プログラムを実施しています。
HPによると、「問題発見と解決の手法を勉強する」らしい。現在第二回目が実施されているのですが、それに参加している人の話で面白かったことをメモっておきます。
最初にアメリカ人の先生から「問題発見と解決手法」を学ぶらしいのですが、その時、参加している複数の人が当惑したというのです。
というのは、自分達の自治体には、ことさら問題がないというのです。もちろん現在三位一体改革が実施されていますから、お金がないのは確かですが。参加者は、一生懸命問題を発見しようとしたとのことですが、重箱の隅をつついた話になってしまうそうです。
そのうち、彼らは、問題発見からではなく、こういう町にしたい、こういう暮らしがしたい、というビジョンから発想すべきなのではないかという考えにたどり着きました。そのビジョンを実現するには、もちろんいろいろな課題があるわけで、その課題を解決するためにどうしたらよいかについて考えたらよいのではないかと考えたのです。
私に話をしてくれた人の町では、地域通貨を実施したり、最近では地域リーダーの育成に取り組んでいます。こうした事業をやった折にも、問題(マイナス点)があったからはじめたのではなく、もっとこうしたら町がよくなる、もっとこうしたら楽しくなる・・という役場の若手のプラス発想からはじまったと言います。
彼は、研修がはじまってから2ヶ月くらい、問題を発見できないことにずっと悩んでいたそうです。ようやく、ビジョンから発想すべきではないかという解を得て、すっきりしたとのこと。
イギリスなどでは、財政が破綻し、小さな政府にしたために、教育や福祉にお金が回らなくなり、見るに見かねてNPOなどが登場してきたわけです。しかし、今現在、日本の自治体は、まだまだ目に見える形で困ったことは起きていないわけです。
もちろん近い将来、財政改革や高齢化が進展し、日本の自治体もこうしたことに当面するのだと思いますが、現在の問題点を探せといわれると「無い」というのは事実なのでしょう。ある意味、これまでの全国あまねく平等にという国の政策は行き着くところまでいって、とくに地方(田舎)は、もしかしたら理想の地域が実現しているのかもしれません(同じ地方でも大都市は問題を抱えていると思いますが)。
アメリカ人の先生が「現在の問題点を探せ」と言ったのか、それとも「将来起きるであろう課題も含めて探せ」と言ったのか、本当のところは分かりません。
もし前者であれば、日米では自治体の現状がずい分違うということになります。もし現状が違うなら、マイナス点を改善するという発想ではなく、プラス思考で課題に取り組むという姿勢はとても大切です。アメリカやイギリスのやり方を鵜呑みにすると日本の実情と合わないことになります。
逆に後者であれば、日本の自治体職員は、現状に甘んじ将来に向けて危機意識がない(視点が狭い)ということになります。
彼らは、7月からポートランドに研修に行きます。自治体職員の目で日米の自治体を比べ、上記の発見が本当のところどうだったのか、報告してもらうのが楽しみです。
The comments to this entry are closed.
Comments