幼馴染
文科省の知的クラスター創成事業、札幌ITカロッツェリア構想の手伝いをしている。
サッポロバレーと呼ばれるIT企業群が集積しており、これをもう一段強くするためにはじめられた事業だ。
IT企業の社長たちは、30代、40代、50代である。
私は、彼らが大人になってから、企業の社長だと思って名刺交換し、付き合いはじめているので、大人だと思っている。
しかし、どうやら社長同士は、学生の頃から知り合い、同じ地域で仕事をし、あるときは同じ会社に席を置いて働いてきて、10年、20年と付き合っている幼馴染なのだ。
だから、あいつがどんなやつか、困ったとき助けてくれたやつか、いざとなると逃げるやつか、昔付き合っていた女は誰などなど、弱味も、嫌なところも、皆分かり合っているらしい。
前職で、学生たちが大学生になっても、江別とか小樽とか、それぞれの地元の仲間と夜とか土日とかいつも集まって遊びあかしているのに驚いた。東京の経験で、大学生ともなれば、学校やクラブ活動などが面白くなり、中学や高校時代の友達とは疎遠になると思っていたからだ。地元の仲間との付き合いのなかで、親分肌の子供が居て、仲間の揉め事を差配するなど、昔あったという若者講のようで、これは良いと思い、またいくつになってもそうした友達が回りにいるなんて、ある意味うらやましかった。
ところが、どうやら、IT企業の社長も、同じようなのだ。
サッポロバレーは、「ビズ・カフェ」という喫茶店兼セミナーハウスのような場所を持っていて、そこで三々五々集まって、勉強したり、情報交換していることが知られている。最近では、特に、次世代を育てるという意味で、学生などを中心に運営されている。
しかし、これは、表のビズ・カフェであって、夜になると、IT企業の社長たちが集まる裏のビズ・カフェもあるらしい。昼間なかなかつかまらない社長も、ここに来ると会えるようだ。
情報交換の場があるというのは、良いことだし、互いに裏も表も分かり合った同士が仕事をするのは、信頼関係もあって効率が良いだろう。しかし、学生たちの行動から類推すると、居心地の良い仲間との付き合いから外に出ようとしないで、小さく固まっているように思われる。
また、法人としての企業同士なら、ある目的を達成するために、メリットのある企業間連携をするのだろうが、裏も表も知り合った同士なので、あいつと組むのは嫌だという非常に個人レベルの話に留まってしまう。
そうかといって、外人部隊には、心を許さない。
こうして、同じような面子で集まっているので、大きな化学反応も起きなければ、小さな差異にこだわるといった砂粒の集まりのままになっている。
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