« 札幌ITクラスターの検討 その9 | Main | 札幌ITクラスターの検討 その11 »

December 27, 2005

札幌ITクラスターの検討 その10

昨年作成した「有効な地域イノベーションシステムの構築」と題した論文で私が十分捉えきれていなかったことがあった。

それは、「地域」という言葉である。

この論文では、国のイノベーションシステムについての体制がほぼできあがり、次の地域のイノベーションシステムを構築することが重要であるとし、国は、地方自治体にもっと裁量権を拡大すべきであると述べている。

文部科学省が知的クラスター創成事業を実施しているが、そこでも、「地域の自立性、主体性」ということが言われている。では、具体的に「地域の自立性、主体性」とは誰のことだろうか。ここが問題なのである。

他府県は知らないが北海道の場合には、道庁は、神様みたいなものである。道庁には、競争がなく、独占企業なのだ。

おまけに、自分が裁量できる予算なら、もう少し寛容なのであろうが、お国から頂戴した資金を仲介者として流している立場である。このため、企業のなかで、中間管理職が上司の顔色を見て、部下に必要以上に細かく仕事をさせるのと似たような立場になってしまう。

文部科学省が「こんな風」にやるようにといったとしても、道庁は、「こんな風」をいろいろに解釈し、どんな指摘にも耐えられるようにと、全方位で仕事をするように実行機関に命じてくる。これは、道庁のだれだれさんが気が小さいというような個人攻撃ではないので、念のため。そうではなく、立場がそうさせてしまうのだ。

このため、本来の意図とは別に、無駄な仕事が非常に増えるとともに、本来の意図が忘れ去られてしまいかねない。

たとえば、文部科学省に提出する資料の作成にものすごく力を入れる。きちんとした資料を作ることが悪いわけではないが、それに数ヶ月も事務方全員が追い込まれる。また、5年間の成果をきちんと出さなければという脅迫観念があるので、無理やり成果を出そうと取り繕ってしまう。

地域のクラスターが持続的に発展し、そこから新しい事業や企業が生み出され、自立的な経済になることがそもそもの意図であったはずだ。しかし、書類作成と関係者全員の合意を得ることに時間を費やしすぎて、本来、IT企業の多くが何を考えているのか、ユーザ産業の企業がどのような課題を抱えており、そこにITがかかわれる必要があるのかどうかといった市場調査すらやれていない。

つまり、この事業に関わる偉そうな人々が山ほどいるために、こうした関わっている人の間のみをぐるぐるグルグル回っているだけで、本来活性化すべき地域産業(IT産業とユーザ産業)のところに回る余裕を少しも持てないのだ。

誰が地域の主役なのか、ここが忘れ去られてしまっている。

実行機関も、主役である産業界の方を少しも向かずに、道庁の顔色とその先のベールに閉ざされた文部科学省の顔色のみをうかがうという構図になっている。

道庁の職員も、大学の先生も、実行機関の職員も、すべてサラリーマンである。誰も本当のリスクを背負っていないのだ(せいぜい、出世競争というリスクがある程度だ)。このため、ややもすると、産業界に、ボランティアを求めすぎてしまう。これは、私自身への反省を含めてそうなのだ。

札幌エリアのIT企業は、言ってしまえば、吹けば飛ぶような経営体力の弱い企業ばかりだ。これらが、少しでも地域の体力を高めたいと思ってこの事業を誘致し、歯を食いしばってボランティアで協力している。しかし、道庁がお上として実行機関を叱り付け、そこが産業界に協力を頼むという形で、ボランティア協力を無理強いしてしまう。

目鼻の利いた企業は、こんな儲からないことへの付き合いはごめんこうむるということになる。協力してくれている企業は、地域への熱い思いがあるので、歯を食いしばって付き合ってくれている。

でも、これもヘンなのだ。

そもそも、地域のクラスターを強化することの主役は、産業界であるはずなので、産業界がリードするくらいでなければならない。だから、本当は、私のいる財団は、道庁を向いて仕事をするのではなく、産業界を向いてその代理人として仕事をしなければならないはずなのだ。そして、産業界は、自分達にメリットのあることだからと、実行機関を補佐し、道庁にもムリをお願いするという形であるべきなのだ。

産業界も産業界なのだが、日本では、昔から役所がサーバントではなくお上であるし、さらに北海道では、長くお上が支配した歴史なのだから仕方が無いのだが、どうも関係性が逆なのだ。

実は道庁だって、悪気があるのではないのだ。地域を活性化するために、国から事業を持ってきて、地域のために一生懸命になっているのだ。しかし、それがうまい方向に回っていかない。道庁は、実行機関がだらしないから、口を出さざるをえないのだという。実行機関は、何をやっても頭ごなしに怒られ、細かいところまで指示されるので、いじけてしまっている。どうせ何をやっても直されるのだからと自分でリスクを負って判断しなくなっている。本当は、産業界の代理人として、道庁に意見を言うなり、少なくとも、産業界にメリットになるように働きかけるべき立場なのに。

せっかく、それぞれの立場の人々が地域を良くしたいとの思いではじめた事業であり、税金を沢山つぎ込んでいるのに、どうしてこうなってしまうのだろうか。

|

« 札幌ITクラスターの検討 その9 | Main | 札幌ITクラスターの検討 その11 »

Comments

The comments to this entry are closed.

TrackBack


Listed below are links to weblogs that reference 札幌ITクラスターの検討 その10:

« 札幌ITクラスターの検討 その9 | Main | 札幌ITクラスターの検討 その11 »