札幌ITクラスターの検討 その12
昔書いたブログをもう一度読み直し、札幌ITクラスターをハブにする戦略を考えてみよう。
ハブになるには、(1)その分野が成長していることと、(2)魅力的なノードであることが必要なのだが、(2)の魅力的という意味は、必ずしも優れているとは限らない。安く制作できるポルノ映画の俳優が、時々普通の映画に出るという設定でだと、その俳優が映画俳優のハブになっているという話がある。
組込系は、前述のように成長分野である。
たとえば、札幌IT企業が優れた開発をしなくても、どんなIT製品にも使われる安くて手軽なソフトを持っていれば、ここがハブになる。
普通の体温計で、非常にシンプルなセンサーを作っている日本のある中小企業が世界のハブになっていると聞いたことがある。これは優れたセンサーの事例だが、昔の技術なので参入が無いが何にでも必要なものなのでハブになるというモノもあるだろう。
たとえば、現在の学生は、ソフトウェアはダウンロードすればよく、自分で開発しようとは思わない。ましてやマイコンキットなどでハンダ付けなどしたことがないと聞く。もし、そうなら、昔からマイコンを組み立てていた人材が蓄積しており、アナログからデジタルまでを知っている人材がいるというのは、試作品などで何か強みになるかもしれない。この辺りは、札幌ITクラスターが本当に「生きた化石」として意味がありそうかどうかを調べる必要がありそうだ。
あるいは、人を集めてユーザビリティテストをするのではなく、ソフトウェアでユーザビリティテストが出来て、これをネット上で実施する。人を集める方法に比べるとテストの水準は低いが、安く、早くできるとなって、多くの試作品のテストが求められるようになると、札幌に沢山の試作品情報が入るようになる。
しかし、普通は、こうしたソフトウェアが開発されたら、売りたくなる。そうなると、どこでもやれることになってしまう。ソフトウェアを売らずに、サービスとして札幌で提供すれば、札幌がユーザビリティテストのハブになれる。
しかし、開発している企業にしてみれば、サービスでテストするだけの知識や人を抱えきれない。そこで、売ってしまおうということになるはずだ。また、サービスで提供したとしても、すぐに真似されるようなものなら、ほかでもそういうサービスが始まってしまうだろう。
先日、食品の味を損なわない冷凍技術を開発した企業の話を聞いた。その人は確か広島の人だが、北海道の資金を得て開発したこともあり、北海道の役に立ちたいと考えている。この技術を大手に売却することも可能だが、できれば、北海道の経済活性化に繋げたいという。
この技術がすぐに真似が出来ず、北海道でまぐろ、高級フランス料理などなどを冷凍して流通させることになれば、北海道はハブになれる。しかし、普通なら、大手に技術を売却なりライセンスし、東京のフランス料理店の側で加工して、全国に流通させたほうがコストが安くなりそうだ。
ここを曲げて、北海道に経済効果をもたらすには、どうしたらよいのだろうか。ライセンスの一部を北海道に還元する、あるいは、北海道マークをつける(それで還元する方法もある)。土地は広いが遠いので、消費地までの流通コストが掛かる北海道で、どうしたらハブになれるかを考えなければならない。
成長分野で、それほど優れた技術ではないが、北海道でしか出来ないものが見つかれば、ハブになれるのだが、それをどう考えるべきか。
YOSAKOIソーラン祭りは、祭りとしては後発の北海道がノウハウを生み出して、ハブになった事例の一つだ。YOSAKOIソーラン祭りに画期的な技術があるわけではない。他地域の人々をその気にさせる仕掛けでハブになった。
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