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December 28, 2005

札幌ITクラスターの検討 その13

私の良く存じている札幌IT企業のY社長は、市場に出回っている高額な商品をリバースし、たとえば、10分の1の値段にすることを考えて、大衆市場を開拓するという手法をとっている。2割安いではなく、10割安くすることで中の部品やソフトウェアをうんと工夫するのだ。どこよりも安く作ることで、参入者を寄せ付けない。

日本製品は、中国などの安い量産品に負けている。東京に比べれば、札幌のコストは2割くらい安いかもしれないが、これでは、中国品に負けてしまう。そこで、札幌では、低賃金や量産ではなく、ソフトウェアや部品の工夫で安くする(しかし、他に真似できにくいXが何かしらある)というのはどうだろう。

中国は、低賃金や量産ということで対応しようとするが、札幌の知恵には敵わないというようにならないものだろうか。もっとも、Y社長は、量産品でOEMをしているが、その生産は、中国などで行っている。

ただ、中国やインドには、安くて英語ができて優秀なIT技術者が豊富なので、札幌と同じような戦略を取られたら負けだ。しかし、低賃金と量産品で競争力があるため、札幌のように背水の陣(低賃金と量産では勝てない)で望まないであろうから、そこは、差をつけることが可能かもしれない。

Y社長は、高額商品でかつ組込系のものを見つけ出すのが上手い。彼は、札幌IT企業のなかでは、サラブレッドではなく、異端だが、彼の方式を真似て(競争を増やしたと怒られそうだが)、札幌ITクラスターは、10分の1以上の価格破壊をソフトウェアと部品でやると決めてはどうだろうか。

これは、札幌ITクラスターが全部そうなるという意味ではない。彼に続く企業が10社あるだけで、大きなインパクトになれるのではないだろうか。彼が主に狙っているのは、予防医療機器の分野だが、農業機械や建設機械などもそうなのではないだろうか。要は、法的に何かしら守られてきた業界が狙い目だ。

あるいは、福祉機器のように、強いニーズはあるが、これまで市場が小さかったので、特殊な人がムリして購入していたような分野だ。こういう分野は、競争も少ないし、技術革新も進んでいないのではないだろうか。

自動車や携帯電話のように、世界中を相手にトップ企業がしのぎを削っている業界から比べたら、まだまだなのではないだろうか。こうした競争力のある業界の常識(センサーや部品など)を援用するだけでも、大きなコストダウンや性能向上が見込まれるのではないだろうか。

それには、医療機関が使っていたものを低価格にして自宅用に、特殊な人が使っていた福祉機器を高齢化でさまざまな機能が劣化した多くの人が使うものに、農業機械を低価格にして農家以外でも使えるように・・・低価格化することで市場が大きく開くような分野を探し出す必要がある。

札幌ITクラスターに価格を10分の1以下にし、大衆市場を開拓する能力があると認められるようになれば、そうした相談がやってくる(ハブになれる)。そして、個々のIT企業には、そうした商品の開発を通して、たとえば、ある分野のセンサーでは非常にシンプルで誤差がないコア製品を持つとか、流体力学の計算式について特別な特許を持つとか、要素技術的に優れた蓄積が出来るようになれば素晴らしい。

センサーのソフトウェアの開発は札幌IT企業だが、加工ノウハウは、大田区かもしれないし、それを作るのは中国かもしれない。

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