札幌ITクラスターの検討 その2
第二に、地域資源を活かせるクラスターへの選択と集中である。
前述のように、一口にITクラスターといっても多様である。
当初、札幌ITカロッツェリアでは、組込系のIT企業を対象にしていた。組込系というのは、家電製品や産業機器に組み込まれた特定の機能を提供するためのコンピュータシステムを組み込みシステムと言い、これを動かすソフトウェアを組み込みソフトと言っている。
昔は、限られた利用範囲であったようだが、最近では、ほとんどの機械にソフトウェアが組み込まれるようになっている。
組込系の代表が携帯電話であり、最近では、カーナビやハイブリッドカーなど自動車分野が大きな地位を占めるようになっている。しかし、それだけではなく、テレビ、ビデオ、エアコンから、デジカメ、コピー機、お風呂、魔法瓶、炊飯器などなど、ほとんどのものにコンピュータシステムが組み込まれており、それを動かすソフトウェアが組み込まれている。ユビキタス社会の到来もあり、今後組込系ソフトウェアの市場は拡大すると期待されている。
しかし、組込系は、現在、大きく二つの問題に当面している。一つは、ある程度定型的な開発や量産物に関しては、アジアなど海外に仕事が流れていることだ。もう一つは、携帯電話や自動車関連のように、大きくて複雑なシステムが増えそれをどのようにマネジメントしながら開発していくかという問題である。
このうち、後者は、トヨタやNECなど大手メーカーの開発にかかわる問題であり、その下請けや一部を分担している札幌エリアのIT企業が独自で何に取り組まなければならないのかは、私にはまだ見えない。
前者については、札幌エリアのIT企業にとっては、直接仕事がなくなることを意味しており、これに対応するために、自ら独自開発する仕事を増やす必要があると言えよう。
札幌ITカロッツェリアは、そのためのツール(共働で仕事をしやすい開発環境づくり、試作品をすぐに作れるためのソフトウェア開発とハードウェア開発の連携など)を用意するという位置づけで始まった。
札幌エリアのIT企業で、自らが組込系であると意識している企業は、1割ぐらいであるというが、組み込みの仕事は、実質的には売上高の3分の1くらいを占めているとみられている。
また、札幌エリアのITクラスターの顔として知られている企業の多くは、マイコンが出た頃のマイコン少年からスタートしていることもあり、組込系で相対的に競争力があると言われている。
しかしながら、どうしても組込系は全体の一部であるとの認識から、ITクラスター全体の事業として認知されていないという問題がある。
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