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December 26, 2005

札幌ITクラスターの検討 その5

第三にイノベーションインフラの充実である。

イノベーションインフラとして、①研究型大学・研究機関の設置、②モード2の知識生産の場づくり、③プロデューサー人材の獲得、④クラスターが求める人材育成・学部設置をあげた。

札幌エリアには、①は、それなりにある。問題は、②のモード2の知識生産の場づくりだ。

現在のITカロッツェリアは、メンバーが限られているものの、モード2の知識生産の場を提供している。札幌ITクラスターの担い手は、かなり顔見知りである。とはいえ、それなりに目的を持って産学が集結することが必要である。

今回も当初は、CAD・CAEの研究者が組んだ相手は日立製作所や富士通であったが、途中から地元企業を入れるようにした。地元企業にとっては、このプロジェクトを通して、大手企業や研究者と知識交換が出来たことは、成果物そのものの開発よりも、有益であったようだ。

これは、国のお金でやれた事業だが、常日頃、こうした国の政策的な資金であれ、企業が出す資金であれ、モード2の知識生産の場が作られやすい環境にしておくことが重要だ。

だが、特に核になるような大手企業がいるわけではない札幌ITクラスターの場合、誰かが常に仕掛ける必要があるのかもしれないが、はて、それは誰なのだろうか。

フィンランドのオウル市の場合には、テクノポリスが国の競争的資金を獲得し、それを地域の産学に振り分けていた。

これを札幌に置き換えれば、私のいる財団ということになる。現在、たまたま知的クラスター創成事業において、こうした役割をしているが、そうではなく、恒常的にそうした役割を担う財団に本来なるべきなのだろう。

もう一つは、前の記事で書いたように、ニーズ産業とITクラスターとの間でモード2の知識生産の場が生まれることである。ここには、ニーズ産業の研究者、企業、そしてITクラスターの研究者、企業が集まることが望ましい。

たとえば、農水省のプロジェクトに、ITクラスターの研究者や企業が参加する、厚生省のプロジェクトにも参加する、といった仕掛けが必要である。こういうつなぎを誰がするのかだ。これも、やはり最初は、上記のような国のプロジェクトなどを活用して、ケースとしてのモード2の場をまずは作ってしまうことが必要だろう。

札幌では、道庁の役人、経産省の役人、道経連と北大の産学連携担当教授などなどが私的に開催している集まりがある。こうしたなかには、ITクラスターにとってのニーズ産業の分野の研究者や企業の部長クラスも出席しており、その気になって話をしてみると、彼らがこれからやろうとしている面白い話がころがっている。

ところが、残念ながら、こうした集まりでITクラスターの企業関係者にほとんどあったことがない。おっちょこちょいの私が繋げればよいのだろうか。私よりやはりIT企業の経営者がその場に居て、これなら俺がやる、あるいは、それなら○○さんが適任だなどと話をしたら、すぐにいろいろなプロジェクトが生まれそうだ。

IT企業の経営者は、こうした場所にまで出てきて、仕事を得る必要性を今は感じていないのかもしれない。モード2の知識生産の場があったらよいのにと思っているのは、私くらいなのだろうか。

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