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January 02, 2006

設計科学 その14

②秩序の数学的構造

秩序の数学的構造は、「非経験的秩序」の数学的構造(純然たる数学的秩序)と「経験的秩序」の数学的構造とを区別する必要がある。

○後者は、(1)法則的、(2)シグナル性プログラム的、(3)シンボル性プログラム的、そして(4)経験則的な、すべての経験的秩序に妥当する。

○「数字で書かれた自然という書物」の解読というガリレオ以来の数学的科学観は、「経験的秩序の数学的構造」一般を「法則」と誤解させがちであった。

○だが、新科学論は、「法則」と「経験的秩序の数学的構造」とを分離し、両者は別のコンセプトであるとする。所得税プログラムは、数字式で表現されるが、それは「シンボル性プログラム(的秩序)の数学的構造」であって「法則(的秩序)の数学的構造」ではない。「規則」であって「法則」ではない。数学的に表現されているからといって「法則」であるとは限らないのである。

複雑系科学の台頭は、「線形的な数学的構造をもつ経験的・非経験的秩序」から「非線形的な数学的構造を持つ経験的・非経験的秩序」へのパラダイム・シフトであり、それ以上のものでも、それ以下のものでもないのではないか。

○「法則的な複雑系」(非線形力学や気象学)もあれば、「プログラム的な複雑系」(金融工学)もあれば、「純数学的な複雑系」(任意に構築された複雑系ゲーム)もある。複雑系理論は、この三つのタイプを識別する必要がある。

○計算機シミュレーション一筋の研究生活を過ごした人にとっては、物質界の法則とチェスの規則との区別は不必要であろう。

○「非線形性」という数学的構造は同一であるが、それぞれの「秩序原理」が異なる。「秩序原理の進化」というパラダイム・シフトと「複雑系科学」というパラダイム・シフトは、まったく別のものである。

前者はニュートン以来の「汎法則主義」から「秩序原理の進化」へのシフトであり、後者は、「秩序の数学的構造」というガリレオ以来の数学的科学観を継承した上での「線形性から非線形性」へのシフトである

○「秩序原理の進化」という視点からすれば、数学的秩序の非線形性という問題よりは、「プログラム的秩序とその数学的構造との関係」が「法則的秩序とその数学的構造との関係」とはあり方を異にするという指摘の方が重要である。

○社会科学の中でもっとも法則主義的な近代経済学を例にとれば、たしかに経済合理的プログラムとその数学的構造は、法則の場合と同様、同時成立している。だが、それは「ホモ・エコノミクス」というプログラム選択の合理的基準を前提とした上でのことであり、この基準の論理的・経験的先行性や先所与性に気づけば、経済法則なるものの数学的構造が、物理科学法則のそれとは違って、あくまで人間による「選択の結果」であることに気づくはずである。

○こうして問題は、経済合理的選択を動機づける価値観や市場構造の解明へと移行することになる。

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