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January 02, 2006

設計科学 その24

6.新科学論の科学史的意義

○科学史の用語法では、T.クーンの言う個別科学のパラダイム・シフト(物理学のパラダイム革新、生物学の・・等々)は、小文字・複数のscience revolutions(普通名詞)と呼ばれる。一方、17世紀中葉の古典力学の成立を契機とする近代科学それ自体の成立(科学総体の古代的・中世的学術からのパラダイム・シフト)は、定冠詞付き・大文字・単数のThe Scientific Revolution(固有名詞)と呼ばれる。

○そこで、17世紀における正統派近代科学の成立を「大文字の第一次科学革命」として総体化させるため、新科学論を「大文字の第二次科学革命」と名づけた。

設計科学でいう「設計」は、シンボル性・シグナル性の「プログラム設計」を意味している。そして、シンボル性・シグナル性の「プログラム設計」は、記号の集合として、「記号情報の一種」である。かくて、「大文字の第二次科学革命」の核心は、「非記号的・記号的情報」という進化論的「情報」範疇の導入へと収束する。新科学論が別称「知の情報論的転回」と名付けられた所以である。

○新科学論をめぐる上記の科学史的意義は、internal approachによるものであった。ここで、external approachの視点から新科学論の科学史的意義に言及する。主に社会的要請に基づく、各種各様のハイブリッド形態やクロス・オーバー形態が形成される。M.ギボンズらのいうモード2の知識生産もその一例である。

○だが、総括的かつ一般的な立場からすれば、「社会のための科学」がもっとも強く要請しているハイブリッド形態は、「物質的・生物的・社会的・精神的な全人工物」を対象にする「認識科学と設計科学」、すなわち「人工物システム科学」ではないのか。もちろん「精神的人工物」には、神や絶対者が含まれている。すべての科学領域の成果は、それ自体が有する固有の価値に加えて、「人工物システム科学」との直接的・間接的な関連を問われることになるにちがいない。いや問われるべきである。

○17世紀の大文字の第一次科学革命にはじまる科学の第一フェーズの基調が「科学のための科学」であったとすれば、20世紀後半の大文字の第二次科学革命に始まるその第二フェーズの基調は「社会のための科学」であり、「人工物システム科学」は、まさにその中核をなす学術形態である。すでにサステナビリティ・サイエンスは、「人工物システム科学」の一つの具現化である。

○物理学が大文字の第一次科学革命がもたらした科学の象徴であるとすれば、第二次科学革命がもたらす科学の象徴は「人工物システム科学」ではないか。

・・モード2にあたる、地域でのイノベーションが起こりやすい仕組みをどのようにつくりあげるのか、これが現在の私の課題であり、これは、まさに人工物システム科学の領域である。そして、まずは、現在の地域に働いているガバナンス(プログラム)を理解し、それをよりよいプログラムに書き換えていかなければならない。

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ちなみに、吉田民人氏のこの論文の要点は、日本学術会議のHPに掲載されている。学術会議のなかで開催されている「新しい学術の体系委員会」(吉田委員長)の報告書の内容をまとめたものという。http://www.scj.go.jp/ja/scj/taikei/index.pdf

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