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January 03, 2006

産学連携学事始め3

○企業が新製品を開発するプロセスは、研究段階→開発段階→試作品作成→生産と表せる。学に蓄積している科学技術を効果的に産に移転するためには、これら企業イノベーションの各フェーズと学の関与を考える必要がある。

・東北大学の長平彰夫氏の研究。開発の前段階として「アイデア創出・探索」、「アイデア評価」、「製品コンセプトの明確化」、「製品開発の計画立案」を行うことにより開発の成功確立が格段に高まるとする「フロント・エンド・オブ・イノベーション(FEI)モデル」が提唱されている。これらの各フェーズで学はどうかかわっているのか。「研究段階」での産学連携が通常であるが、大規模アンケートの結果、新規性の高い製品開発では、「アイデア創出・探索段階」での産学連携の有効性が確認された。(産学連携学会第三回大会予稿集より)

この結果は、イノベーションのスタートを学がリードできることをデータを持って示したものである。学のこの能力はどこから生まれるのか。小樽商大の瀬戸先生は、イノベーションに重要な「異分野間の融合」の環境が学に備わっていることを指摘している。

つまり、わが国では、農水省=農業、厚生労働省=医薬産業、総務省=IT産業といった縦割りの構造が産における異分野の融合を難しくしているが、学は学部間あるいは学ー学連携により容易に実現できる環境を持っているのである。しかし、この連携は自然には生まれにくい。学の研究者は専門化し細分化する傾向が強いからである。

瀬戸氏は、学における異分野融合の具体的方法として「大学発ベンチャー」と「大学教員のアライアンス」が有効であると説く。

学が潜在的に持っているイノベーション創出能力を引き出すためには、産のイノベーション構造を分析し、どのフェーズで学の持つ能力を連携するかを明らかにする必要がある。その際、蛸壺から研究者が外に出るためのモチベーションを十分に考える必要がある。

官の支援を活用することも有効である。金融機関との連携も必要になろう。単に「学の敷居が高い」と嘆いてみても何も起こらないのである。

産学連携学の基礎として、「企業イノベーション論」は不可欠である。さらに、これら一連の産からの働きかけが学にとって異分野融合による新領域創造の芽を育むことにつながることを忘れてはならない。

・長平先生の論文を読んでいないのでなんともいえないのだが、「アイデア創出・探索」に産学連携の有効性が確認されたというのは、具体的には、何を指すのだろうか。企業の経営者あるいは研究者が良く知っている大学の先生のところに行って会話をし、そのなかから当りを探るのだろうか。それとも、日ごろから会合などを通して知見を得られていることがヒントにつながるのだろうか。

・・大学は、確かに異分野間の融合が「可能」な場所ではあるが、実際には、蛸壺である。企業にとって、A先生のところに一度行ってしまったら、B先生のところへは行きにくい世界でもある。ある企業が行きつけの先生とアイデア創出・探索に有効な会話をかわすことは可能であろう。あるいは、その企業の本来とは異なる別の分野の先生のところを訪ねることも可能なので、企業にとって異分野融合を果たすことは可能かもしれない。

・・確かに、企業にとって、大学にリエゾン(窓口)があってくれて、こうした問題を議論したい、こうした問題を一緒に解決して欲しいときに、適切な先生を紹介してくれることはとっても有難い仕組みといえる。

・・荒磯先生言うように、企業のイノベーションにとって、いつ大学の知を活用したいものなのか、活用すると効果が生まれるのかを研究することは産学連携を考えるうえで必要なことは確かだ。

・・金融機関は、本来、どの企業がどんな技術を持っているか、どんな分野に進出したいと思っているか、あるいは、地域のどの先生がこの分野に詳しいかなどの知識を総合的に持っており、仲人役を果たせる力を持っている。ただ、金融機関が単なる日々の業務に追われるだけの部署しかないと、融資先以外の情報を蓄積していないかもしれない。昔のように余裕のある時代には、そうした次につながる情報を持ち、ニーズやシーズをつなげる役割を果たして、金融機関にとっても次の商売を生み出してきたものだが、こうした機能が今低下してしまっているように思われる。

・・官は、「支援」機関であることに徹してくれるなら、産学連携を促進するうえで、とても良い立場であると思う。モード2の知的生産の場を作るための政策(資金出し:あるいは仲人役を雇用)は、それなりに促進材料になる。問題は、補助金が大学や企業のモラルハザードを招いたり、逆に自由さを縛ってしまう可能性があることだ。

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