貯蓄率低下
日本は、長い間貯蓄過剰で欧米から消費拡大に努めるべきだといわれてきた。1980年代から90年代前半まで、貯蓄率=(可処分所得-消費支出)/可処分所得は、二桁15%~10%であったが、90年代後半から減少しはじめ、2004年度には2.7%とフランス、ドイツ、イギリスより低く、アメリカに近づいている。
この理由は、世帯主60歳以上の無職世帯の家計貯蓄率がマイナス30%となり、貯蓄を取り崩していること、こうした世帯の比率が26%にもなっていることによる。勤労者世帯の貯蓄率が高くても、全体として貯蓄率が低下することになった。
また、国民の意識調査によれば、「未来志向(貯蓄・投資など将来に備える)」よりも、「現在志向(毎日の生活を充実させて楽しむ)」が昭和60年から逆転している。→勤労者世帯でも、貯蓄率は低下してきている。
長期金利が上昇していくと、自己資本の少ない借入金の大きい企業は、大きな負担になる。ここ10年で民間部門のストック調整は終わりつつあるが、これからはフローの調整、すなわち、不良資産はなくても、借入金過多で収益性の低い企業の淘汰が始まる。
これまでは、民間部門の不良債権処理を加速するため、金利が意図的に低く抑えられてきた結果、借入金過多で収益性の低い企業も存続できたが、金利が上昇していくと、こうした企業は赤字に転落する。
日米金利差が4%以上も開いている(アメリカが高い)と、日本の個人投資家は、日本の国債よりも、アメリカの国債を購入する(為替レートが円高にゆれても、なお有利と判断する)。円高に触れるとアメリカの国債=ドルを購入するので、円高が進まない(介入なしには)。
しかし、日本の長期金利が上昇し、日米金利格差が縮小すると、金利上昇と円高が同時に進むことになる恐ろしいことになる(何故恐ろしい?→輸出列島ではないなら、円高でよいはず、輸入が増えて物価が下がる、海外投資が進む、一方、日本への旅行者や日本への投資が不振になる。金利が上昇すると、年金生活者は楽になる。借り入れている企業は困る。日本の国債の買い手が増える?収益性の高い企業が残る。金利が上昇すると、国債を発行している国は金利負担が大変になる。)。
そのために、財政を健全化し、長期金利が大幅に上がらないようにすることが必要。
プライマリーバランスの回復を目指す場合も、日本経済の活性化を図りつつ、長期金利の高騰を防ぎながら、金融規律を守りつつ、財政健全化を図ることが重要。財政健全化を急いで、日本経済をおかしくしたり、財政健全化を忘れてさらに財政赤字を重ねて長期金利を跳ね上げることは絶対に避けるべき。
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