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January 11, 2007

バブルと金融政策

日銀金融研究所のディスカッションペーパー『「バブル期の金融政策」座談会の模様』2000年を読みます。

これは、バブル崩壊から10年経過した時期に、日本銀行としてバブル期の政策運営に関する総括をしようと、同研究所と外部識者とが別々に論文を作成し、それをもとに両者が座談会を開いたもの。

以下は、私の勉強を兼ねて気になったことを箇条書きする。

●バブル現象の理解の仕方

1.日銀研:バブル経済:資産価値の急激な上昇に加え、マネーサプライ・信用量の膨張、実態経済活動の過熱という3つの要素が揃った時期。

 香西班:物価安定はバブルの前提:利潤インフレ:情報技術革新などにより価格低下が進行するもとで、利潤インフレによるバブルが発生しやすい環境になっている。

1.金利の低下はバブルの必要条件だが、バブル発生の主因ではない。金融政策がバブルを生んだ訳ではないが、「まった」はかけられたはず。(金利引き上げによる金融引き締め)

1.バブル自体は自己増殖的:資産価値は、マクロ経済や金融によらず、独立的に自己増殖している。

1.国際経済環境から影響を受けやすくなった。

1.住専問題の処理のように、ミクロでみて、金融機関の破綻処理をもっと迅速に進めるべきであったという政策的誤りはある。

1.チューリップバブルの頃には、中央銀行は存在していなかったけれど、担保価値の上昇を通じて金融緩和をもたらしたということはあるといえる。こうした環境のもとでは、金利水準を同じに保てば、金融がどんどん緩むはず。

●物価の安定と金融政策

1.どちらの論文も、国民経済の健全な発展の前提条件、ないし、その結果として物価安定が持続する状態を日銀の金融政策の目標とするところは同じ。円高が進行すると同時に物価が低下するなかで、資産価値が急騰するといった現実的局面では異なる意見。香西は、物価安定という大枠のなかで、バブルといった資産価値の変動に対応することが日銀に許されるのではないかという意味。足元の物価安定に捕らわれ過ぎると、政策運営を誤るリスクがある。

1.吉冨:バブル生成は、単に銀行監督政策の失敗といっている。金融政策運営とはほとんど関係がない。

1.1980年代後半の経済環境では、早期の引き締めを行って、景気にどれほどの悪影響があったのかは疑問。実際には、コンフリクトはなかったのではないか。

 市場関係者は、(1)なぜ名目ゼロ金利政策は長くは続けてはいけないのかの説明、(2)金融緩和状況は持続するという2つを明確にして欲しいといわれた。

1.バブル当時、資産価格上昇がもたらしえる弊害としてインフレ懸念に言及すると、反論された。東京が国際的な金融センターとして発展していく中で、オフィス需要の盛り上がりを反映して地価が上昇しているのが何故悪いのかと言われた。インフレが顕現化しない状況のもとで、資産価格上昇が平等性や公平性に与える影響という論点には強い反論があった。→結果として、資産価格の下落が金融システムを通じて経済活動に大きな影響をもたらしたが、この潜在的リスクを説明できなかった。

1.後知恵かリアルタイムでの政策判断に資する教訓とか。

1.資産価格バブルの問題を金融システム(金融)の安定性と結び付けてはどうか。

1.日銀は、個別金融機関に対する規制・監督権限は付与されていない。バブルは個別金融機関に対する規制・監督で対応すべきという議論に立つと日銀はそういう役割を担う立場にない。

●金融システムとバブル

1.金融システムの形態とバブルの関係、金融システムの移行期とプルーデンス政策の在り方、資産価格バブルとプルーデンス政策の役割について議論する。

1.直接金融中心の米国型金融システムでは、バブル崩壊は家計を直撃する。間接金融部門の大きい日本型の金融システムでは、いったんは、銀行の自己資本をバッファーとし、ショックが受け止められるが、その間に危機が深刻化し、バッファーの許容範囲を超えると、ややラグをもって大津波が家計・企業を襲う。

1.今後の金融システム構築にあたっては、ショックに対する耐性を検討することが重要であるが、既存システムからの移行が引き起こす問題にも目を向ける必要がある。

1.金融政策が資産価格と物価安定の両方に割り当てられない以上、追加的手段としての選択的統制も緊急措置として必要ではないか。資産価値バブルに対しては、プルーデンス政策を割り当てればよいは、正論だが・・。

1.預金は、固定的な負債という側面が大きいので、バッファーとして過大に期待するのは間違い。預金のこうした性質が、バブルの後始末を極めて難しくした。

1.香西としては、決済業務はナローバンク(低リスクの資産を保有すべき、イトーヨーカ堂銀行)、信用仲介業務は直接金融という組み合わせが望ましいのではないかと考えている。

1.金融自由化にかかわるひとつひとつの措置が非常に重要な役割を果たしたとの印象を強くもつ。自由化にあたって、業態規制の撤廃と規制金利体系の自由化は、いずれを先にすべきであったかとの順序の問題も重要だったのではないかと思っている。

1.システムによって、バブルの生成・拡大・破裂過程は相当異なっていると思う。バブル生成過程に限ると、資本市場を中心としたシステムと銀行を中心としたシステムとでどのような違いがあったのだろうか。・・バブル期の日本は、直接金融に銀行が併存する中間的システムであった、これによって子会社を利用して信用を拡張する状況に陥り、問題をより一層深刻化させた。銀行がバブルに巻き込まれることが最も危険。

1.資産価格が上昇していく過程において、「信用の受け手」の担保価値が上昇し、信用へのアクセスが容易になっていくというメカニズムは、どういったシステムでも共通なのではないか。

1.預金者は、バブルに染まった銀行とそうでない銀行を区別できない、銀行の選別が進まなかった。これに対し、投信中心の場合には、投資政策の違いそのものが商品性になっているので選別が進みやすい。

1.あるリスクシナリオがもっともらしいということと、そのシナリオが発生する可能性があるということは別で、シナリオについて警告を発しても、発生する可能性はないのではないかといわれてしまう。

●バブルを生み出す社会的要因

1.バブル期の引き締めへの移行が遅れた要因の1つとして、さまざまな政策思想に象徴される社会的な環境が足かせになった。

1.政策思想のひとつである国際的な政策協調について:避けるべきは、思い込みや近視眼的な判断であって、国際協調は必要だし、説得努力も必要としている(香西論文)。その上で、低金利神話の定着について、財政当局が中央銀行を無視して低金利を国際公約したかのような状況が伝えられたことを一因として指摘。

低金利神話の定着については、為替市場介入が金融政策のシグナルとして誤認されたことも挙げられる。

1.1987年秋のブラックマンデー当時における各国政府・中央銀行間のつばぜりあい。日本にとって不幸であったのは、低金利の維持が国際協調であると認識されてしまったことにある。

1.バブル期当時、日本全体として、バブルの弊害に対する正しい認識が存在しなかったのは事実。そのなかで、早期の引き締めに理解が得られたどうか。

1.日本は、国際協調が好まれる傾向にあるが、欧州各国は、こうした枠組みのなかで議論することを好まない。・・日本銀行幹部は、国際的な圧力を受けることが現実問題としてあるのではないか

1.1987年の局面で国際協調にこだわった理由として円高恐怖症の影響が大きい。国際協調の枠組みに乗らなければ、協調介入で円高を止めてもらうことができないという考えが浸透していた。

1.円高について、何故日本社会は、為替レートに対してこれほどセンシティブなのでしょうか。1971年以降、ドイツは数回にわたって通貨切り上げを行っているのに、日本は一度もやっていない。企業経営者は、円高に対する備えができちえる。

1.資本移動が自由なもとでは、為替介入は広い意味での金融調節である。日本ではこうした理解が進んでいない。

1.日本銀行法では、為替介入は大蔵省の権限。中央銀行がやるべきという意見の1つは、為替レートの変動は、物価を含め経済に大きな影響を与えるので、もうひとつは、為替介入には、金融政策上の示唆が生じるので。

1.バブルは新聞の発達とともに生まれた。FRBのスタッフは市場の「知恵」である地価や株価の水準が間違っていると思いたがらない。

1.金融市場には、民主主義における衆愚政治的側面があるように思う。・・不良債権問題を処理せよと市場の声を認識すべき局面で、もっと財政を出動せよということを市場の声として語る民間アナリストがいる。市場の声に猫なで声で接近していくことは対話ではない。メディアはバブルを煽ったのだろうか、そうではなく、不作為の責任(バブルと気付かなかった)。メディアの影響は、大きなイベントではなく、むしろ小さな報道の積み重ねである、読者受けすることを選択的に報道する結果、現状を正当化する議論だけが残りやすい、人々の関心や考え方を方向づけている(シラー)。

●中央銀行への教訓

1.香西論文:①バブルの怖さを知った上で予防的引き締め策を準備しておくこと、②信用秩序維持政策を事前的・総合的に準備していくこと、③思い込みに対抗するために機動的に政策運営を行うこと、④対話促進的な情報提供を行っていくこと、⑤金融システム改善のための研究努力を勧めること。

1.マネーサプライの伸び率と引き締め策。マネーサプライの伸びそのものの水準よりも、潜在水準からの乖離が問題。潜在成長率を高い水準と考えると間違ってしまう。

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