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June 20, 2007

ITカロの責任者になってみる

ITカロが失敗した要因は、いろいろあるが、まず第一に当事者意識が無かったことである。

これは、文科省(中央)が枠組みをつくり、地方(自治体)が自らの地域に適した計画を作り・実施するという制度であった。残念ながら、主役は地元産業界ではなく、地方自治体であった。

ところが、ITカロの場合には、道庁が主導者でなければならなかったのだが、担当者レベルでは労力をかけてくれたものの、知事(道庁全体)が積極的に関与してくれなかった。知事にこの事業に対する認識が薄かったからなのか、担当者が知事を動かせなかったのか分からないが。

知事が先頭に立って(自らの威信をかけて)プロジェクトをリードすることが必ずしも良いことかどうかは分からない。福岡県は、知事がリードしすぎて、箱が出来てしまったという問題もあるらしい(要チェック)。

しかしながら、担当者レベルか、知事が乗り出すかによってプロジェクトへの収斂が異なってくる(要チェック)。

この事業は、各地域の大学に地域貢献を迫ることを目指している。大学の知財(研究内容、研究者)を活用し、各地域に世界水準の知的クラスターが生み出されることを目指していた。

ランドリーの本で「行動を変える」という項目があり、6つの方法が挙げられている。

1.力や規制を通じて強制する。
2.お金や動機づけを通じて誘発する。
3.議論を通じて説得する。
4.ペテンにかけ、騙し、罠にかける。
5.誘惑する-自発性と非自発性の奇妙なコンビネーション。
6.期待を集めるモデルをつくり、公表する。

文科省のこの制度は、2であり、その結果6を目指していたと思われる。また、大学に対しては、暗に、こうした競争的資金獲得で頑張らないと優れた大学として今後処遇しないぞということを暗に示しており、これは1にあたる。

道庁の担当者は、この事業を進めるにあたって、知事(道庁内)や大学や産業界の行動を変えさせる必要があった。

まず、知事に対しては、2・3・4・5を使う必要があった。この事業では、道もお金を出さなければならない。少ないお金を出して文科省から大きな金額を得るメリットを説得しなければならない(3)。あるいは、他県における知事の関与を示し、これに成功しないと知事が恥をかくことを暗に示して脅す、あるいは、これで成功すると知事個人にとってどんなメリットがあるかを示して動機づける(2・4・5)必要があった。計画の当初は分からなくても、少し事業が進めば、他県の知事の動きが見えてくるので、そこから動機づけをしてもよいし、優れた担当者であれば、最初から嘘でも知事のライバル心を掻き立てる嘘をつけたはずだ。

こうした力のある担当者を得なかったことも不幸であった。

窓口の担当者自らがそこまでの力を持たない場合、少なくとも、事業総括には、道庁や大学、産業界を説得できる当事者能力を持つ人を据えるべきであった。これらの既存勢力に対しものを言える人材となると、信念を持つ人(自分の言葉で話せる人)、あるいは、ある分野で成功したと評価されている人などが事業統括になる必要がある。

ところが、残念ながら、事業統括は、道庁の、しかもITとは異なる分野にキャリア(地方支部の部長クラス)を持つ技官のOBであった。道庁のランクづけのなかで、技官や部長どまりで退職した人が知事に物申すことはムリである。ましてや、一般の道庁職員は、ある狭い範囲のことを決められた通りに処理するのが主な仕事であり、自らプロジェクトを企画提案したり、少なくともプロジェクトを遂行した経験はない。このため、さまざまな立場の人々を説得し、それぞれの人々に適切な行動を取ってもらえるだけの交渉力も説得力も持ちえていない。

したがって、さまざまな利害組織から集められたプロジェクトのメンバーをまとめ、ある方向に導くだけの能力は皆無であった。

この事業では、資金は、大学に流れる。大学の先生というのは、まず第一に自分の研究を進めることを考えるので、資金を得るために大きなことを言うが、それは専門的すぎて事務方は煙に巻かれる。この事業の目的を大学の先生にきちんと納得させ、ノルマを課す必要がある(産学連携である程度の成果を地元にもたらす、研究だけしているのではない)。しかし、大学の先生は、それぞれお山の大将であり、これまでは、大学においても、ノルマを課せられたことがないので、納得しないまま大金を手にすれば、思いのままに使ってしまう。

この大学の先生方に、この事業では、どういうネズミが評価されるのかを明確にし(3)、それをお金で動機づけする必要がある(2)。あるいは、この事業で成果を上げることが大学内での評価に結びつくよう、時には、学長を説得させる必要がある(必要ならば、文科省を活用して)。

また、この事業が札幌地域のIT企業にとって、どんなメリットがあるのかを理解してもらい、事業に参加してもらう必要がある。実際には、この事業を札幌に持って来たのは業界人であり、当初の企画メンバーがこの事業で採択してもらえるよう、企画書を作成し、知り合いの大学教授や仲間のIT企業に呼びかけたのであった。

しかしながら、一部の人々は、この事業を活用する意味を理解していたものの、地域のIT企業に、この事業を通してどのように自らにメリットを引き出すかということについての認識が非常に薄かった。

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