« 都市再生のための道具箱3 | Main | 都市再生のための道具箱4 »

June 13, 2007

都市再生のための道具箱訳者あとがき

その前に、監訳者である後藤さんのあとがきを丁寧に読んでおこう。

彼女は、このところずっと「創造都市」をやってきており、このあとがきが2003年に書かれているので、その後、さらに進んだかもしれないが、このあとがきには、この時点までの彼女のこの問題への整理がなされている。

+++++++++++++

1.この本は、都市計画家であるランドリーによって、経験に裏づけられた数多くの説得力のある事例やものの見方が書かれている。「すべての人々の創造性を引き出しながら社会に参加する機会を作り出す」など。

1.創造性といえば、従来、アーティストや科学者などに属するものと考えられてきた。アメリカの類書では、これら創造的な階級の人々をいかに惹き付けるかが都市発展の鍵を握るといった分析が行われている(フロリダのことだろうか)。・・社会的排除を肯定することにつながりかねない。

1.ランドリーは、そこに住む人々(これが最大の資源である)やその地域の資源を最大限活用してその創造性を引き出し、都市再生に結び付けていくという発想である。マイノリティ、女性、ホームレスなど社会的弱者の社会参加の問題を丁寧に扱って都市の創造性に結びつけている。(これは理念として分かるが難しそうだが?)

1.時には、マイナスと思われる地域条件をプラスに転化させる発想(これは日本にもすでにある)。

1.通常では相矛盾する側面を統合的なアプローチを採用して新たな産業を創出するとともに、矛盾を発展へと転化させていく。環境問題と経済発展、観光の振興とコミュニティの発展、文化的伝統の保存と地域開発など。・・・こうした考え方は、従来の縦割り型の組織や中央集権型の行財政システムと齟齬をきたす。(統合が重要でそれが縦割り行政と合わないことは良く分かる、地域とは生活そのものなので、行政の縦割り政策と会わない、地域の視点で中央の縦割り政策を上手く活用する力が求められるのは、日本でも同じ。しかし、相矛盾する問題をどう解くのかは本文を読んでみよう)

1.1985年にはじまったヨーロッパ文化首都:本書に登場する都市の多くがヨーロッパ文化首都に指定されたのを契機に創造的な都市再生プロジェクトを展開している。(この政策は知らないので、要チェック)

1.ヘルシンキ「ケーブル・ファクトリー」約900人のアーティスト等・・ビル管理・運営担当者が面白い・・従来創造的でないと思われた職種が創造的になることが重要である

1.パットナムらの言う社会関係資本(納税者や市民など行政のサービスの受け手の享受能力によって同じことでも効果が異なる:その地域や都市に歴史的に蓄積されてきた自発的な社会参加や公的問題への市民の積極的関与といった市民的伝統によって大きく異なる)への関心と相通じる。

1.社会関係資本(市民的積極参加、互酬性、信頼、水平的ネットワーク)が重要だが、信頼や互酬性だけでは、かえって実験的な試みを行おうという人々の足枷となる可能性がある。社会的関係や組織は、そこに自発性や創造性と伴わないと既得権益や発展をとめる閉鎖性に転化してしまう可能性がある。

パットナム:第三イタリアでは、社会関係資本が上手く機能しているが、南イタリアでは、市民自治が発達していないので、アナーキーでないようにするには、ヒエラルヒーと権力に頼る(付け届けをして守ってもらう)。

1.創造的都市:外に向かって開かれ、多くの人々や情報を受け入れつつ自己変革を遂げている。

1.社会関係資本に加えて、人々の創造性を鼓舞する文化的価値観や文化資本が重要となろう。

1.D.スロスビー『文化経済学入門』で文化を定義して、次の3つの特徴を指摘している。

  ・なんらかの創造性を含んでいる。

  ・象徴的な意味の生産やコミュニケーションに関係する

  ・ある種の知的財産を含んでいる

 文化とは、創造性を含み(文化的価値)、社会的なコミュニケーションやある集団のアイデンティティの形成に関与し(社会的価値)、知的財産となって経済的価値を創出することもありうる(経済的価値)。

1.スロスビーは、文化資本を文化的価値と経済的価値の両方を生み出すポテンシャルとして経済学の理論に位置づけている。

1.文化ストックに蓄積された文化資本がフローとなってサービスを生み出すことで文化的価値と経済的価値に転化することを指摘。持続可能な発展のためには、自然資本だけでなく、文化資本の維持とそのための投資が必要である。(この考え方は面白い)

1.新産業が創出されたり、人々を惹き付ける魅力的な場所には、こうした文化資本が豊かに蓄積されているとみなすことは、何に投資すべきかを決定するうえで、重要な論点(後藤)。

 ○東京都写真美術館:顧客満足の追求、実験的試み、こどものための企画:観客数は経済的価値として需要、実験的試み(文化的価値)、こどものための企画(社会的価値)を同時に追求。→こうした魅力的な場には、人々の創造性を鼓舞する文化資本が蓄積されている。(後藤)

1.従来は、ある活動の結果として経済的価値がどれくらい増大したかを問題にした。都市の再開発は、投資に比べてどれだけの経済的価値が増したか。→創造性を捉えようとすると、人間の行動に内在する価値や価値の評価を問題にせざるをえない。

 スロスビーは、芸術家の制作活動の創造性について、彼らが経済的価値と文化的価値のそれぞれにどれくらいの時間やエネルギーを費やすかによって創造性という視点から見た結果が異なるという経済モデルを示している。(??)

 都市の創造性においても、同様の仮説をおいて考えることは可能であり、人々が対話を通して、文化的価値・社会的価値・経済的価値をいかに評価するかが重要なポイント。

1.魅力的な場や都市を形成するためには、さまざまなプロセスを共有しながら対話を通して何が価値あることなのかという評価を形成し、公共的な資源配分(どこにどれだけ投資するか)のための意思決定の仕組みをつくることが必要。

1.A.クライマーは、『The Value of Culture』のなかで、こうした対話を通した価値評価の重要性を指摘し、NPOセクターが対話を通して価値形成機能を持つことを指摘している。(都市という多様な価値観の人が暮らす地域をデザインするにあたって、これらは大切なのだと思うが、非常に骨の折れることだと思う。ランドリーの本には、この経験も書かれているのだろうが。札幌での経験を思うと、多様な価値観の人が納得する一段高いビジョン、人間が本質的に理解するビジョンならまとまるだろうが、具体的な実施になるといろいろな利害に立脚する人々を取りまとめるのはどうするのだろうか。市長が力があるタイプを除いて)

1.創造的都市の発想も、こうしたプロセスを重視する大きな流れのなかに位置づけることができる。

1.21世紀は、知識社会へ移行すると言われ、今後成長する産業分野としては、福祉など対人直接サービス分野、バイオや医療などの科学技術を応用する分野、文化関連産業が予想されている。(コムスンの問題もあるが、これを働く人の満足度とサービスを受ける人の満足度、資金的問題を含めて、どうやるかは問題!)

 こうした産業の多くは、知的な付加価値が占める割合が大きく、対人直接サービスという特徴を持つため、創造的産業として捉えることができる。

 日本では、バイオや医療といった大学の知的資産である科学技術を中心とした知的クラスター創出の試みが開始されたばかりであるが、ヨーロッパの創造的都市においては、文化産業や文化クラスターあるいは創造的クラスターの創出によって都市を再生した事例が大変多い。

 中心市街地の工場や倉庫の跡地を文化産業のインキュベーターとして再利用して成功している事例だけでなく、空き店舗をギャラリーとして使用できるよう安い家賃で貸与し、既存の商店街を再活性化した例もある。

1.文化や伝統とは、過去のものを保存することではなく、今を生きる人々に生きるよりどころを与え、新たな創造の苗床となるものである。「ライブラリーからライブへ」(桝一市村酒造のセーラさんの言葉)。伝統技術は保存するのではなく活用すること、文化は今を生きる人々が作るもの。(これは賛成。しかし、ある文脈のなかで産まれた文化資産を現代にどう活かすかには知恵が必要)

1.文化クラスターは、そこに住み集う人々の創造性を引き出し、場の魅力を高めることによって文化資本を形成し、そこからフローとしての文化的価値や経済的価値が創出されるという仕掛けである。(文章・理念としては美しいのだが、文化資本が増えて、それが人々の暮らしを高めた事例を再検討する必要がある)

1.創造的産業や文化クラスターの中心に文化資本や文化的価値を位置づける発想は、今後都市再生の議論においてますます重要性を増すだろう。

|

« 都市再生のための道具箱3 | Main | 都市再生のための道具箱4 »

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)




« 都市再生のための道具箱3 | Main | 都市再生のための道具箱4 »