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September 08, 2007

クリエイティブ・シティ特別寄稿

陳潔華氏:上海における創造的階層の勃興

・日本語には、クリエイティブにあたる創造はあるが、イノベーションにあたる日本語がない。

・中国語:発明、発現(発見)、創新、原創(創始するのいみ)、首創(同左)、創意など創造に関する語彙が豊富。原創と首創は新たな知的作品や知的産物を創造する最初の活動を指す。

・「創新」は創造的な構想、考え方、設計のことを指す。創新という言葉には、非常に豊かな意味が含まれている。創造、発現、発明、原創、首創、創意という意味を含むほか、物質の創造という意味と知識の創造という意味を兼ね備えており、重大な科学的発明という意味にも、市民による小規模な改革、改善という意味にも使われる。

創新活動は、これまでの思考様式、生活様式、生産様式、管理様式を変えることによって、人類文明や歴史の進み方に影響を及ぼす。唯一無二性が備わっていなければならない。特許。→これだと科学者や技術者のみのことで自分には関係ない、苦難に満ちているなどと思われてしまう→筆者は国民が創新活動に幅広く関与するため緩やかな定期を用いることを主張。

●鄧小平時代における中国および上海の創新の要因(1976-1980年代)

・欧州のルネッサンスのよう。農民や個人経営者が物資の欠乏という機会に乗じ、都市部と農村部の価格差、内外価格差、二重価格体制を利用して商品を転売して(暴利を追求)万元戸になった。知識の創新によって豊かになったのではない。知識人は貧困な最下層であった。「ミサイル技師がゆで卵売りにかなわない」、「メスを持つよりカミソリを持つほうがまし」、「教授は教えれば教えるほどやせる」。

・経営形態としては、国営経済、私営経済、外資系企業併存。分配メカニズム「多く働いた者が多くの分配を受ける」原則がコンセンサスに。国が富を分配する機能が揺らぎ始めた。個人が合理的に金を稼ぐことが認められるようになった。

・これまでの「プロレタリアートは誉れ高く、ブルジョワジーは罪深い」という考えかたが揺らぎはじめた。鄧小平は、一部の人を先に豊かにさせるという方針を打ち出し、富の追求が正当化された。

・政治では、プロレタリアート独裁が緩やかになり、国民は部分的な自由を手に入れ、法制が確立されはじめたが、知的財産権を保護する法制は有名無実。マルクスの言う「科学技術は人類共通の財産である」という意識が根強く、特許の保護に関する法的意識はなかった。

・社会は、秩序と安定に向かいはじめ、外交的にもオープンになり、先進国のほとんどと正常な外交関係を樹立した。その結果、先進的な設備を先進国から導入できるようになったが、先進的な設備を導入しさえすれば現代化の目標を達成することができると誤解していた。

・人身、財産、政治、学術の安全が基本的に保障され、学術の自由、創新の自由、起業の自由が達成され、競争メカニズムが社会を活性化しはじめた。

●江沢民時代における中国および上海の創新の要因(1989-2003年)

・文学・芸術で自由に創新が行われるようになり、人文科学の面で多くの成果が生まれた。計画経済が歴史の舞台から去り、市場経済に切り替わり、市場経済、競争メカニズム、私営経済が重要な役割を果たし始めた。

・多くの商品が不足していた段階からあまる事態へと転換し、競争が激化した。経営者は、価格差の利用を意識してもビジネスが難しくなり、より競争力に富んだ商品を模倣しようと考えはじめた。粗悪な模倣品が大量に出回った。

・国営企業、集団所有制企業、株式会社、私営企業、外資系企業が併存していたが、外資系企業は、いずれも、土地に関する優遇や免税に関する優遇、輸出入に関する優遇、雇用に関する優遇などを得ていた。外資系企業のホワイトカラーが新富裕層となり、新たな買弁(外国資本の利益に奉仕した中国人)となった。彼らは、街五区後や貿易、経営管理などの専門知識に依拠して外国企業に従属しているのであって、自分が創新した特許に依拠していたわけではなかった。

・分配メカニズムは、「多く働いた者が多くの分配を受ける」という原則が徹底的に貫徹され、国が富みを分配する企業は徐々に弱まっていった。金を稼ぐことがもてはやされ、それが流行となった。「ブルジョアジーは誉れ高い」に変わった。市場経済体制によって富の追求が正当化され、合法化された。

・一部の権力者が権力を利用してビジネス上の利益を追求し、官僚買弁層へと変わり、新富裕層になった。さまざまな企業家と手を組み、国有資産を極めて安い価格で外資系企業や私営企業に売り渡し、そこから利益を得るほか、汚職に手を染め、巨額の国有資産を国外に移すといった深刻な問題を引き起こし、汚職官僚の腐敗という危機。

・一党独裁ながら、国民は、出国の自由、経済と起業の自由、思想と言論の自由、生活スタイルの自由、富を蓄積する自由を獲得し、法制と知的財産権保護法が確立された。しかし、法律が厳格に執行されておらず、有名無実で、粗悪な模倣品が出続ける。マルクス主義の「科学は人類共通の財産」の影響が続く。外国ブランドや技術・特許を模倣する商行為が盛んに行われ、新富裕層が現れた。

・外資系企業を大量に誘致し、極めて優遇したため、国有企業が相次いで倒産、失業が増えた。私営企業と知識人が創新や起業のチャンスを見出した時期。

・一方で、貧しい農民労働者(出稼ぎ労働者)が大都市に大量に流入、都市では、窃盗や強盗、殺人などが爆発的に増加、人身の安全と財産の安全が、創新活動を妨げた。学問、創新、起業の自由が存在し、経済面での競争や科学技術面での競争が白熱し、活性化した。

・欧米が400年かけた近代文明の発展を中国は27年で歩んだ。立ち遅れた農業国家から世界最大の鉄鋼大国、家電製造大国、IT大国となったが、多くの深刻な問題に直面。

●胡錦涛時代における総合的な危機と創新階層の出現(2003年ー)

・一気な近代化で、歴史の底に沈殿していた課題がすべて水面に浮上。一方、上海、ないし中国でまとまった数の新富裕層が相次いで現れた。しかし、いずれも新しい知識に欠け、中国が現実に直面している危機的な問題を解決することはできなかった。

・その結果、増え続ける危機的問題が、上海の創新に向けた新しく強大な動力の源泉となり、上海の創新階層が非常に活気づいた。

①経済成長方式の危機:創新による特許ではなく、大部分は労働集約的産業に依拠し、わずかな給料を得ている→創新活動を模索し、多くの経済学者や経営学者による刷新を促し、経済学者の新富裕層を生み出した。

・欧米に追いつけ追い越せというなかで、経済学の分野で創新が生まれたとはどういうことか?富裕になるほどの創新があったのか。経営はトヨタの真似をせざるをえないはずだろうに。??

②資源面の危機:上海での資源を再生し、節約し、代替するという創新活動に火がついた→工学系知識人による知識や技術の創新が行われた。

③環境汚染の危機:上海の知識人が環境汚染や環境保護をめぐる困難な問題を解決する創新活動のきっかけとなった。

④知的財産権の危機:先進国からの訴訟→中国の自主的な創新や技術面の創新、特許の保護重視への刺激となった。

⑤腐敗の危機:官僚買弁に対する大規模な反腐敗キャンペーンを決意→党内の監督制度、政治制度、法律、清潔な政治、政府機能の創新を加速。政治学者による学術面の創新を後押し。

⑥国有企業の危機:外資系との競争で相次いで倒産→中国政府と経済学者や企業家が創新を実践、多くの民営企業、私営企業が活気づき、多くの起業家が育成された。

⑦国内市場の危機:長期間にわたり、技術と知識の創新が不足していたため、政府が改革・開放の後、技術導入をし、外資系企業が大量に進出して中国市場を占領した。国有企業が倒産した。民族経済の危機。

⑧国際貿易摩擦の危機:外資系企業による安価な労働力と豊かな資源を利用して生産量を拡大、中国は世界の工場となったが、各国への輸出急増から貿易摩擦が生じた。中国はわずかな賃金しかえていないのに。→国や地域のバランス、国内市場と輸出市場のバランス、商品のバランスを考えるようになった。貿易方法についての創新が生まれた。

以下には、上海の創新機関と創新資金についての記述がある。

・先進国の創新は胚的分野に集中→中国では、科学技術、社会的、国際的、政治的な難題への創新というように多様である。

・創新活動を地域別に6つのランクに別けると広東、上海、北京が一番上のランク。上海の研究開発費は、2004年には、域内総生産の2.29%に上昇(中国全土では1%に満たない、先進国は2%を超えている)、ハイテク輸出の比率も上昇。上海の研究機関は80年から95年には増加したが、2003年まで縮小し、最近また増加して約1000.基礎中心から応用研究へ(特許をできるだけ早く発展させる)。

・資金的には、政府の比率が減少し、企業の比率が高まっている。上海市も支援を拡大。中国では、国の研究資金が企業に振り向けられる比率が低い。中国の大学の比率も低く、主に、研究機関が国からの資金を得ている(しかし、成果がなかなか出ていない)。留学生が創新に果たす役割が高いが、外資系企業に就職することが多い。留学生の帰国希望では、北京より上海が高い。起業している。

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September 07, 2007

クリエイティブ・シティ第6章

庄司昌彦氏の第6章:韓国クリエイティブ産業とユビキタス都市の展開

1960年代以降の高度経済成長
1996年アジアで2番目のOECD加盟
1997年アジア通貨危機
1999年金大中政権:国家的なICT戦略「サイバーコリア21」:高速インターネットの普及、電子政府化、PC房(ネットカフェ)急増、オンラインゲーム流行、情報技術関連ベンチャーたくさん誕生、映画やドラマ世界的に高い評価、サムスン電子、LG電子の台頭。
2004年ユビキタス

●映画・ドラマ産業の開花と政府の支援

1980年代後半から進んだ民主化以降、映画やドラマの制作が進んだ。
1999年「シュリ」国内外で大ヒット。2004年「オールドボーイ」カンヌ国際映画祭グランプリ。

単価が安いので、中国、香港、台湾のテレビ局で1990年代後半から韓国テレビドラマを数多く放送していた。台湾では「韓流熱風」:テレビに出てくるファッションや商品、ライフスタイルへの人気が高まった。

2001年文化コンテンツ振興院設置:担い手の育成や海外への売り込みなどについて政府の強力な後押しがある。政府が主導して、テレビドラマ作品の著作権を放送局などが一括して管理するようにし、海外の放送局やインターネット放送での再使用でも放映許諾が比較的容易に取れるようにしている。

●即戦力を求める韓国企業とクリエイティブな人材の流動

サムソン電子:年間の純利益が100億ドルを越えるのは、MCI、エクソンモービル、シティグループなど9社だけであり、製造業としてはトヨタ自動車に次ぐ2位。英インターブランド社の「2004年度世界100大ブランド」でソニーの20位に次ぐ21位。従業員の3分の1以上が研究開発者であるという人材の豊富さ。修士・博士学位取得者:2000年に5000人が2004年には1万7000人。博士号取得者数は2000人でソウル大学の教官数1700人を上回る。LG電子の2倍。

サムソン電子の競争力は、プロダクトのイノベーションだけでなく、プロセスのイノベーションにある(新技術に最初から大規模投資をし、大量に生産・規模の利益を生かして量販して短期的に大きな利益をあげ、次の投資に振り向ける。技術が普及して価格競争が激しくなり、利益幅が減る前に量産効果で投資を回収してしまう)。

韓国の理工系人材は供給過多であるのに需要を満たさない。就職できず失業率は96年の9%から03年には17%。→優れた人の流動性の高まり。外国企業からスカウトされた経験がある。ベンチャー企業や外資のストックオプションやインセンティブ制度などによる。サムソンやLGもこうした制度導入、即戦力になる人を海外からスカウト。インド、中国、ロシア。サムソン総合技術院の研究者の10%が非韓国人。

●人材の海外流出

年間1万2000人から1万5000人が移住している。海外に居住している韓国人は663万人、韓国の人口4850万人。特に20から30代に移住希望が多い。韓国社会の現実や未来に対する不満や不安、子供の教育や自身のキャリアアップのため。

●U-CITY

サイバーコリア21→eコリアビジョン2006→IT839戦略・・一人当たり国民所得を2万ドルに。2.3GHz携帯インターネット、インターネット電話、RFID活用などの8大新規サービス、ユビキタスセンサーネットワーク、次世代インターネット(IPv6)などの3大インフラ、ホームネットワーク、デジタルコンテンツ、知能型ロボットなどの9大成長動力を指す。2010年までに1兆2000億ウォンの政府予算を集中的に投資する。

11の都市でu-Cityプロジェクトが進められている。都市機能や都市住民の生活水準を高めるとともに、都市間競争の促進を狙っている。ソウル一極集中(他の過疎化)を是正。

仁川の松島新都市では、IT企業6社が10億ドルを投入してゲームや映像などの流通団地「デジタルエンターテインメントクラスター(DEC)」を構築中。2014年完成を目途。

u-Cityは、サービスを提供する地方自治体が中心となり、自治体の予算で実施している。政府では、情報通信部と建設部が推進しているが、政府の役割は、基本的な技術開発やビジョンやガイドラインを作り、標準化、互換性の問題解決、法制度的支援に止まる。政府主導でu-Cityフォーラムが2005年に結成された。KT、SKテレコムなどの通信会社、IBM、HP、サムスンSDSなどのシステムインテグレーター、建設会社、研究者、政府系研究機関、地方自治体が参加しており、政府はオブザーバー。しかし、ユビキタスとは何かについてとまどいも。

●ソウル

デジタルメディアシティ(DMC)。1998年からソウル市がミレニアムシティという新都心として開発を進めていた場所。ゴミの埋立地であった麻浦区上岩地域。現在の都心と仁川空港との中間に立地。地下鉄、空港鉄道、京義線鉄道、高速道路などへのアクセスが便利。東西に走るコンテンツ通り、南北に走るIT通り、ビジネスセンタータワーの計画も。

コンテンツ関係の5大産業(映画、放送、e-Education、ゲーム、アニメ)の誘致を集中的に行い、インターネット・デジタル衛星放送などのメディアエンターテインメント産業の拠点化、メディア関連のベンチャー企業育成、技術教育やサイバースクールの実施、デジタルメディアの研究、先端科学技術の展示などを行う予定。ドイツの8つの大学とフラウンホーファー研究財団がドイツ大学コンソーシアムを構成し、韓国ードイツ工科大学院を開設する。ビジネス工科大学研究所開設、西江大学、弘益大学なども中小企業育成の支援を行う予定。

ドイツのケルンメディアパーク、フィンランドのヘルシンキにあるアラビア地区再開発プロジェクト、コペンハーゲン市とは交流し、情報交換しながらDMCのモデルを造っていこうとしている。

韓国内では、若者のストリート文化とショッピングの街・明洞、芸術や骨董品の街・仁寺洞、ITベンチャーの街・江南のテヘランバレーの3つを参考にしている。

●釜山

370万人の人口。先端産業への構造転換に遅れ、製造業が衰退。99年に「釜山戦略産業育成計画」を定め、10大戦略事業(港湾物流、観光、金融、ソフトウェア、映像産業、構造高度化産業:自動車・部品、造船・機資材、靴、繊維・ファッション、水産・加工)。都市の知的な機能の強化を目指している。96年から釜山国際映画祭を開催。1999年に官民合同で設立した釜山映像委員会(BFC)フィルムコミッション。

釜山のシリコンバレー(ソフト産業育成)2000年にオープンした釜山ソフトウェア支援センターには、80社のIT企業が入居している。5つの大学。

u-Cityを実施するうえで、政府からの支援はない。→民間企業とのPPPを締結して政策を推進することとした。KT(通信会社)と締結、釜山市とKTは、共同で1兆ウォン(1000億円)を2010年までに投資、どこからでもアクセスできるようにする。(これだけ大規模なPPPは世界初)。

●クリエイティブ都市構築と都市間競争の多層性

世界規模の競争だけでなく、北東アジアにおける都市間競争もあるだろう。

・・・

この本では、私の知らない引用本や各都市の政策など、一つ一つの情報としては得るものが大きいが、クリエイティブ・シティということからみると、どの章も食い足りない。各都市の取り組みの紹介に止まっており、また、フロリダの指摘どおりになぞっているだけにみえる。

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クリエイティブ・シティ第5章

木村氏による第五章:バルセロナ-ネットワーク創造社会へ

バルセロナ・カタルーニャ自治州:州人口680万人。スペイン人口4200万人の15%:GDP18%、工業総生産26%、海外貿易29%、ハイテク輸出37%。市は人口158万人、首都圏440万人。ピカソやガウディなど文化人を輩出した都市。

バルセロナモデル:都市再生の分野において、質の高いデザインの公共空間の創出、官民協働の先進事例:スラム化した旧市街地の再生プロセス(1999年英国王立協会から金賞):都市を建造物の集積としてみる発想ではなく、建造物の間隙に生じる空間の価値に着目し、「空である間(空間)」を公共的生活空間の基点として都市という生活空間の豊かさを創造しようとした観点。

古く疲弊した建物が密集している市街地で安普請の建物を取り除き、そこに小さな辻広場をつくる、その近隣のカフェにテラス席を出してもらう。人々が集い、賑わいが生まれる公共空間が創出されたところで、文化的公共施設を整備する。→するとその空間に面する民有建造物も次第に改修作業が行われ、人々が安心して楽しむことができる空間が波及的に拡大していく。

こうしたアプローチが実現したのは、「公共空間を人の手に取り戻す思想」が社会的に共有されていたから。『持続可能な都市-欧米の試みから何を学ぶか』「都市の社会的結束を促す公共空間(広場や公園)の充実が市民社会全体の利益になるというコンセンサスがある・・日本の都市再生に欠けているもの、それは市民共同体意識である」

バルセロナ市民フォルダ(市民一人ひとりが自分のフォルダを持つということ):市は市民のデータを明確にフォルダとして管理し、情報コントロール権が行使できるように運用する意図を具体化している。オリジナルデータの所有者、管理者を明確にして管理するための法制度を整備し、そのうえで、データベースの整合性を確保することで、市民が自らの情報を必要な時にアクセスし、自分のフォルダで確認することができる。

・Poblenou地区:22aとも呼ばれる:バルセロナのマンチェスター:集落があったところに、産業革命期、繊維産業を中心に工場が次々と侵食して建てられた工業地帯→産業構造の変化、国際競争の進展などにより、歯が欠けるように工場が撤退し、コミュニティとして衰退、スラム化していく。→都市計画基準の見直しが検討され、「22@」という再生プロジェクトが2000年から。15年から20年かけてビジネススペース延べ320平方メートル、10から13万人の雇用創出、3500から4000戸の住宅、22万平方メートルの公園などの緑と公共施設に利用するというもの。既存の街並みを生かせる部分は生かしながら漸進的に再生。高さとファサードが揃った街並みを維持しながら、通りに面していない中庭をより緑豊かな場所、あるいは高層ビルで整備。ITとハイテク。家賃率15%とし、IT技術者など短期滞在することを容易にし、職住近接の環境を整備。

・ポルタ22:市によるプロジェクト:将来に必要とされる職業・職能をのための能力要件分析をし、データベース化して就労支援システムを開発、運用。①宇宙産業、②ロジスティクス、③食品、④健康科学、⑤生命科学、⑥美容・レジャー・文化、⑦メカにクス、⑧環境、⑨化学、⑩企業向け専門サービス、⑪個人向けサービス、⑫情報津ス新など。→700以上の職種カタログ作成、個人が自分の職業適性を判断するためのツールも開発されている。ネットで公開するのではなく、イントラネットを整備したポルタ22の施設でグループ学習として提供。このほか、一般にも開放。

現代産業社会は、成長の駆動力がモノを介した活動から、サービス、知識・情報・感覚を介した活動へと大きく変化してきている。大量生産・消費に向かず、個別性、差異性に価値が生み出される。人々が集い、活動が集積する都市的空間がさまざまな不均一性、多様性、差異性を生み出すことにより、発展を駆動する力として重要な役割を果たす。

フロリダの論を志向しているようだ。

・イタリアのエ・ロ州は外人比率が6.5%、日本は1.5%。東京でも2.8%。バルセロナ16%。  カソリックなのでバイオが難しい。

フロリダの3つのTに加えて、信頼Trustを加えるべきではないか。

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クリエイティブ・シティ第4章

木村忠正氏による第四章:ボローニャ-市民社会としての情報ネットワーク社会という視点

・「eCitizenship for All」(すべて人に情報ネットワーク社会の市民権を):電子政府推進活動:欧州において電子政府を積極的に推進している100以上の都しが組織するテレシティーズ(改組されて現在は、EUROCITIES Knowledge Society Forum)とコンサル大手のデロイトが設立:2003、2004年に参加各都市の電子政府進展に関する比較基準づくりと評価を行うとともに、数都市に対してe市民権顕彰という表彰を行っている。

2004年:スウェーデン・ストックホルム市、イタリア・ボローニャ市、スペイン・バルセロナ市に与えられた。さまざまな指標では、イタリア、スペインの情報化は低いのに、何故アワードで選ばれたのかという木村氏の疑問→市民社会として情報ネットワーク社会を発展させようとする極めて強力な社会的意志。

・バルセロナ市民フォルダ:行政の情報に市民自らがアクセスし、必要によって公文書を発行できるワンストップサービス:2004年から:税金、罰金、国勢調査、戸籍、土地台帳、車両台帳、選挙人名簿などの6つのDBに市民がアクセスできる。・・自分に関するデータを自分がアクセスし、確認し、場合によっては訂正を求めることができる:情報コントロール権。一般には、それぞれ分野ごとに独立した情報システムで管理しているなど、難しい。→1999年からこうした利用を見越して、DBにおけるフォーマットの相互運用性確保など整合的なDB構築を行ってきた。・・技術の特性を理解するとともに、それによって何を実現しようとするかという社会的価値観、社会的意志に強く規程される。

・1995年:「シティ・オブ・ビット」ウイリアム・ミッチェル「われわれのなすべきもっとも根本的な仕事は、広帯域コミュニケーション網のためのデジタル回線や電子機器を用意することではない(いずれ手に入る)。ネットワークに乗せるコンテンツを作ることでもない。一番大切なのは、どんな人生を送りたいか、どんなコミュニティで暮らしたいか、それにふさわしいデジタル環境はどのようなものであるべきかを想像し、創造していくことなのである」(13ページ)

・ボローニャ市(人口40万人)イペルボーレ市民ネット:1995年市民に無料でネット接続を提供するサービスとしてスタート。ネット接続、電子メールアドレス、市政に関するニューズグループへのアクセス、市政に関する情報へのアクセスなど→1996年からインターネット上の全てのサイトへのアクセスが可能になった。2001年末登録利用者数1万8000人、2005年7月1万7200人(商用ISPサービスは別途)。1807団体が登録(3分の1はNPOやNGO)。・・商用ISPサービス以前から市民への無料インターネットサービスを開始したことと、現在でもこれが市民に生かされていること。

・エミリアロマーニャ州は、人口400万人、企業数41万社、10人に1企業がある計算。(日本では260万社法人数で50人に一社・・個人事業所を含めれば日本も500万社→24人に1社)。

・全国職人連合会エミリア・ロマーニャ州本部(CAN)は、州内14万社の中傷・職人企業のうち8万6000社を組織し、2000人のスタッフがさまざまなサービスを提供している。

・ボローニャ市は「地区住民評議会」発祥の地:反ファシズム闘争を支えてきた革新政党が市政を担ってきた。:小学校や保育所などの公共施設の運営、地区の公共事業の実施など、さまざまな公的事業、社会的サービスである市の行政に参画することになった。

1963年「市行政への市民の参加と分権に関する条例」が定められ、地区住民評議会が制度化され、その後、国レベルでも法律が定められ、人口10万人以上のコムーネは地区住民評議会を設置することが義務付けられている。ボローニャは現在9つの地区でそれぞれの評議会がある。議員は無報酬だが、住民の直接選挙で選出され、事務所と事務職員には市の予算がつく。都市計画、地域整備、交通、公衆衛生、青少年問題、学校、マイノリティ、独居老人等社会的弱者の問題など、地域に即した行政課題について審議、計画するとともに、教育やスポーツ、住宅などの公的(公営)施設の運営なども手がけている。歴史的市街地区におけるファサードなど外観を保存しながら建築物の内部を修繕・刷新する「保存的開発」などが行われてきたのも、こうした評議会の力が大きい。

・イペルボーネ市民ネットは、ボローニャという都市が文化的歴史的に積み重ねてきた「公共空間」を形成していこうという社会的意志の表現と思えてくる。

・レピーダというプロジェクト:エ・ロ州を構成している340余りのコムーネ(市町村)すべての行政機関、医療、教育など社会的サービス機関に光ファイバーを中心とした高速ネットワークへのアクセス環境を整備しようとするもの。2006年末に完成予定で、93%の人口をカバー、残りの山岳部などは、衛星やHDSL。

・日本では、再封建化が懸念されており、「市民社会として」という観点が重要。

・近代社会は、市民一人ひとりが民主的に制度をつくりあげ、「公」という秩序を形成する理念に基づいている。近代社会の形成過程においては、市民が負担を共有して社会的インフラ、公的空間(道路、通信・・公園、教育・・)を創出し、便益を共有してきた。

しかし、近代社会が成熟するにしたがって、公的空間は、既得権益、非効率と批判の目でみられ、民営化、市場化テストの圧力に晒されている。駅、公園のように公的空間だからこそ危険な空間と認識され、私有化され、所有者を明確にし、監視の対象とすることで秩序形成が行われると考えられるようになってきた。≒社会的空間を私有化すること=再封建化

・第三イタリアの取り組み:単に行政が住民にサービスを提供するという形ではなく、公的空間を形成していく意図を官・民を問わず、市民として共有していくことの重要性、そうした意図に促されて発展する情報社会における市民権こそ社会的サービスのプラットフォームとして機能するのではないか。

木村さんの着眼は良いと思う。しかし、読んでいて、再封建化=公的空間の私有化というのに、違和感を感じてしまった(言葉的に正しいとして)。というのは、私のなかのイメージとして、「再封建化」という言葉を聞いた時に、お上が個人を支配するというように読み取れたからだ。市役所などは、本来市民のサーバントなのだが、人々の深層心理には、江戸時代のお上のようなイメージがあり、市長はお殿様、市役所職員は武士というアナロジーがぬぐえない。現在、電子政府に反対している意見の多くも、個人情報が漏洩するという言い方をしているが、戦争時代のように、個人が管理されるというような認識があるように思えるからだ。

明治時代には、まだ混沌としていたこや江戸時代の気風の名残があって、それぞれの町の有志や成功者が町のインフラを整備してきた。ベンチャー気風もあった。ところが成熟化するにつれて、お上(行政)に委ねてしまい、自分達が公共空間をつくりあげるという意識がなくなった。これは面倒ではないので良いのだが。我々もただ不満をブーブー言うだけで、自ら汗をかいて改善しようとは思わない。行政はブーブー言われるのは嫌なので見せないようにする。一方で、我々は監視もしないので、行政はやりたい放題のようなところがあり社保庁のようなことにもなる。江戸時代には、実際もっと潔癖だったと思うのだが、水戸黄門の世界のような政治と金と行政になってしまっている。

これは一つには、サラリーマンになってしまい、地域は女子供だけになったことにもよっている。サービスを受けるだけの人。自分達で町を考える第一次産業や地元中小企業群がいなくなってしまい、商店街もなくなり、坊主も葬式だけの役割になりというように、地域の共同体を支える人々が居なくなってしまったのでしかたがないとも言える。

「公的空間の私有化」なのではなく、公的サービスをただ受けるだけと認識していることが問題。公的空間を自分達がデザインする(汗もかくが)という認識が失せている。誰もやらないので市役所がやってしまう、さらには、中央官庁が決めてしまう(お上が住むところのデザインも決める)。本来主人公であるはずの市民に虚無感がある。もちろん汗をかくのが面倒ということもあるが、その手立てがないと思っている。(選挙か、コネで政治家に頼むかぐらい・・これは特殊な人々、逆にただ反対するだけの野党)政治とまでいかなくても、自分達の公的空間をどうするかという一番身近な問題について、多くの市民は足がかり、手がかりをもっていない。

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クリエイティブ・シティ第3章

土屋大洋氏による第三章:スウェーデンにおけるネットワーク創造都市戦略

・スウェーデンは日本の1.2倍の国土に890万人が住んでおり、ストックホルムでも人口が167万人しかいない。主要産業は、自動車ボルボ、携帯電話エリクソン、家具IKEA。音楽の輸出は、米国、英国に次いで世界第三位。1739年に王立科学アカデミーが設立された。1652年にオルフ・ルードベック:人間のリンパ腺のシステムを発見、18世紀前半にアンデルス・セルシウス:セ氏温度計を発明。1876年にエリクソンが電話関係の機器を作る会社を作った。1892年にヨハンセンがモンキースパナを発明。ノーベルがダイナマイト発明。テトラパックやボールベアリングもスウェーデンの発明。18世紀を契機に農業国から工業国へ。

・福祉国家でもあり医学に強く、バイオに。バイオはストックホルム地区とマルメ地区。

・エクスペリエンス産業:増大する体験への需要、体験の消費を満足させる人々や企業と定義。IKEA:品質の良い商品を扱うという企業イメージを売る=エクスペリエンス産業。今日の製品は、価格や品質に体験を加えることによって売られるようになってきている。氷で作ったアイスホテル。GNPの5%を占める。

五感に訴えかける知識産業:体験・経験することで楽しめる、生活を豊かにすることができるものへの投資。B・ジョセフ・パインとジェームズ・H・ギルモア:生活必需品(経済的機能:抽出)、製品(製造)、サービス(配送)に次ぐ4つ目の経済カテゴリー「エクスペリエンス」(演出)である。

・スウェーデンの知識財団:エクスペリエンス産業(13分野を特定):建築、アート、コンピュータゲーム、デザイン、ファッション、映画・写真、飲食、文学・出版、マーケットコミュニケーション、メディア、音楽(音楽輸出で黒字なのは、米・英とスウェーデンのみ)、パフォーミングアーツ、観光:デザイン、ファッション、音楽、観光は輸出志向の分野

・アルビン・トフラー:第三の波(プロシューマー)→ダニエル・ピンク:第四の波を指摘:グローバルな情報化で米国の知識労働の仕事は発展途上国にアウトソーシングされる。単に知識を必要とするだけの仕事は途上国でも可能になっている。農業の時代、工業の時代、情報の時代に続くコンセプトの時代が到来し、コンセプトの時代に求められる人材は、既存の思考の殻を破った「ハイコンセプト(新しいことを考え出す人)」であるという。右脳人間。ビジネススクールでMBAを取るのではなく、アートスクールに行ってMFA(Master of Fine Arts)を取る。

・ダニエル・ピンク『ハイコンセプト-新しいことを考え出す人の時代』大前研一訳、三笠書房2006

・B.Joseph Pine Ⅱ and James H. Gilmore, ""Welcom to the Experience Economy," Harvard Business Review, July-August 1998 p.98 第四の経済としてのエクスペリエンス「experience_economy.xls」をダウンロード十分理解できていないので、表を添付しておきます)

・スウェーデンは同性愛者が社会のなかで認められている。人口の10%が外国人か外国生まれ。寛容であり、新しいものを取り入れる。社会保障がしっかりしているので、引退後もお金を使え、未来を考えなくてもよい。順番待ちの医療サービスという悪い面も(メディアルツーリズムと言われ、すぐにサービスを受けられるタイなどに行く)。

寛容性は表面的であるとか田舎は違うとか、同質性(ファッション)という指摘もある。教育は無料これが強み。大学も無料。平等思想が強いので天災が生まれない。・・・最近では、アート志向。大企業志向でベンチャーが生まれにくい→最近は増えてきている・・などなど。

・ヨーテボリ:ボルボ本社:環境自治体(長い時間をかけて公害の克服を羽蟻、現在も大気汚染防止などの対策や電気自動車の導入、バイオガスプラントの建設)、産業創造都市:2つのサイエンスパーク:大学も多く文化の町。オープンな街(大阪、上海)

・キスタサイエンスパーク

・日本への示唆:日本との違いは、空間の豊かさと社会保障。インフラ投資。日本は地方空港整備にあたっても、東京との結びつきではなく、国際的な人材を呼び寄せるという視点も必要。知識偏重ではなく、創造的な都市の姿:地域環境との調和を目指しながらアートやデザインに力をいれる。

エクスペリエンス産業についての記述のほか、特に得られることはなかった。

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クリエイティブ・シティ第2章

第二章:上村圭介「新しいニュージーランドブランドを目指すニュージーランドの創造的産業」

・面積:日本の4分の3.人口約400万人。80%が都市部に居住。オークランド38万人、クライストチャーチ32万人、首都ウェリントン17万人。オークランド地区120万人、カンタベリー地方49万人、ウェリントン地方44万人。先住民系(マリオ人)人口13.8%。

・オーストラリアの人口1940万人、先住民系人口45万人、2.3%。(2001年)

・NJ:GDPに占める一次産業6-7%、二次産業20%、三次産業70%(2005年)。輸出は一次が主要。外貨獲得では観光産業。

・シンクタンク調査:2001年にGDPに占める創造的産業の比率は3.1%。電気通信・情報通信産業3.2%、行政・国防3.3%、金融3.5%、教育3.9%。「Growing an Innovative New Zealand」(首相名による公表)。NZTE(特定の産業分野の重点的な振興を行うセウター開発を責務のひとつとしている)が対象としているのは:バイオ技術・農業技術、創造的産業、情報通信技術、食物飲料、木材・建築・内装、特殊加工、教育、専門サービス、マオリ企業、観光→重点:バイオ、情報、創造→重点は①他産業へ波及する、②NJが競争優位をもたらす、③NJブランド創出もの。

・NJでは、創造的産業は、社会の革新と成長のための枠組み(GIF)のなかに位置づけられている。デザイン、情報通信技術、バイオ技術、映像制作(スクリーンプロダクション)の4つの分野。

・NJの創造的産業の特徴:

①輸出志向(グローバル市場での活躍を通じて、世界市場でのNJの地位を向上させる)課題:全体的に国際競争力がたかくないし、成熟した輸出産業もない、国内市場が小さい。大規模な市場から距離的に離れている(半径2200キロのなかに他国がない)。

②人材の育成と維持:課題:知的労働力の人口流出:OECD加盟国のなかで、アイルランド(人口の23.5%が国外に居住)に次いで在外同邦人の割合が高い(16%:うち4割が高いスキルを持つ人材)。→人材を呼び込むこと、引き止めることを政策目標にしている。

③イギリスの植民地として出発→投資の供給源として、輸出先としてイギリス依存が高かった。

・NJが創造的産業を強化するうえで鍵はICTだが、トップ企業のシェアが高く、価格など硬直化している。羊毛など既存産業の高付加価値化。

・創造的産業にとってのNJの魅力:ウェリントンの映画産業:ウェタ(特殊メイクや特撮などの制作を手がけるウェタワークショップとデジタル編集を手がけるウェタデジタル)を中心とした映画・映像制作企業群。1987年に2人が創設した視覚効果スタジオ→94年に規模拡大し、社名をウェタに。ウェタデジタルは世界で3番目の規模。スタジオ群のために2000万NJドルが投じられた。ロードオブザリングの撮影の折には、165人もの専門家が働き、うち、4割がNJ人で残りは海外から。経済効果と知名度アップに。

フロリダによる紹介と市の情報担当者であったネイラーの二人のリチャード:情報通信網整備を市役所内だけでなく市全体のシティリンクへ。

●まとめ

NJでは、国内に市場も資本も生産力もない。握手の前に手を伸ばす必要がある地域。グローバル化のなかの(競争ではなく)コラボレーションであるという。著者は一点突破主義の危うさも指摘。

NJに映画産業が部分的に発達していること以外は、特に得られるものはなかった。

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September 06, 2007

クリエイティブ・シティ7章

第7章は、知的・産業クラスターと創造都市-産業集積とイノベーションをめぐる日本の政策(山内さん)。

日本の産業集積と立地政策(1950年の国土総合開発法、1962年-98年全国総合開発計画(全総)+各省の施策)

1次全総(1962年):国土の均衡ある発展を目指して、新産業都市(15ケ所)、工業整備特別地区(6ケ所)。→高度成長のなかで、大都市への集中が進み、過疎・過密が一層進んだ。

2次全総(1969年):ジェット航空機、新幹線、高速道路、高速コンテナ船などの交通網と電話・データ回線などの通信網により、工業集積間を連結し、中枢管理機能の集積と物流の機構を広域的に体系化。札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、広島、福岡の7大集積地を交通・通信網で結んで国土の主軸を形成。国際化。

3次全総(1977年):73年のオイルショック、経済成長率10%から4%へ。大都市圏への人口集中が一段落、地方定住が進展→創意工夫を生かして地域づくりをしよう。定住構想方式。

4次全総(1987年):80年代後半、地方圏では、産業構造の転換による素材型産業や輸出依存型産業の不振。東京圏の世界都市機能の集中・国際化への対応、地方圏の産業構造転換→産業振興施策。

多極分散型国土の具体化としてテクノポリス構想(技術集積都市):産・学・住を有機的に結びつける:半導体、コンピュータ、精密機械などの新産業を誘致・地域開発。1983年テクノポリス法(26地域)。国土庁、農林水産省、通産省、建設省の承認を受ける。企業誘致のための工業団地造成、大学との共同研究センターやリサーチパークなどの研究施設を設置。総合文化施設や歴史的な観光資源、地域の景観などを利用した生活環境を整備。

1988年:情報処理産業サービス関連機能の立地促進を目的とした頭脳立地法(26ケ所)、1989年:オフィス機能の地方展開を目的とした地方拠点法。

1998年:新事業創出促進法(産業再生計画に沿って):テクノポリス法と頭脳立地法はこれに発展的に移行。完全失業率が過去最高、製造業は過剰設備と過剰雇用→業態のスリム化、競争力回復に懸命。開業率が廃業率を下回る。テクノポリス財団、中小企業振興公社などは統合・ネットワーク化し地域プラットフォーム事業などの総合的支援体制へ。→国のイノベーションシステムのあり方の変革へ。

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・クリストファー・フリーマン『技術政策と経済パフォーマンス』1987年:技術変化やイノベーションには、増分的(インクリメンタル)な変化と根本的(ラディカル)な変化がある。彼によれば、日本の1980年代後半は、グローバルな50年周期のコンドラチェフの第Ⅴ波の上昇局面に当っていた。

・公文は、60年周期説、1980年代後半を第Ⅲ期の下降局面として解釈した。2005年に底を打ち、2035年にかけて上昇局面に転ずる。80年から90年代からはじめる世界的なイノベーションの波は、フリーマンの言うメカトロニクス化ではなくインターネットの普及。

・西澤昭夫・福嶋路『大学発ベンチャー企業とクラスター戦略:日本はオースティンを作れるか』学文社2005年

・Kline, Stephen, and Nathan Rosenberg :"An Overview of Innovation "in Ralph Landau and Nathan Rosenberg, eds., 'The Positive Sum Strategy' National Academy Press 1986 pp.275-305  

:大企業による中央研究所による米国型のイノベーションシステムが行き詰まりを見せている。中央研究所によるリニアモデルからチェーンリンクとモデルへ(イノベーションの契機は、市場ニーズや生産現場にある。イノベーションとはユーザの動向や生産ラインの障害などの具体的な事象に対応する際の技術的(テクノロジカル)なものであって、サイエンティフィック(科学的)である必要はない。米国大企業は、基礎研究部門を縮小して応用研究へ。

→他方で国際的な競争力の観点からサイエンス型産業の重要性はましており、このような変化に対応するには、①企業と産業界・大学・政府の書記官の協力関係の推進、特に産業界と大学を結びつける努力、②技術移転の促進や技術開発に対する補助金、③大学や政府と共同作業する産業界のコンソーシアムが産業技術の変化の方向性を示すロードマップを作成する必要がある。

・1980年のバイドール法:大学から民間企業への技術移転の促進を目的。大学が政府の資金を使って開発した成果物の特許を大学が所有するようにする。大学からのスピンオフやベンチャー企業設立を推進する契機になった。

・1984年の国家共同研究法(NCRA:National Cooperation Research Act):技術研究組合など企業間の競争以前の段階での協力を促進するために、反トラスト法の適用緩和を明確にした。さらに、開発研究成果の商品化のための企業連携にも対象を拡大。→1993年にNational Cooperation Research and Production Actへ。

・1988年の包括通商競争力法の一環として、先端技術計画(ATP:Advanced Technology Program)が作られた:開発リスクが高く、企業だけではコスト負担ができない場合には、連邦政府が一定割合の助成金(最大で研究開発費の50%)を出す。現在のATPでは、大学を含むコンソーシアムを支援対象とする場合、500万から1000万ドルのマッチングファンドの支援を行うことになっている。ATPはNIST(National Institute of Standards and Technology)が運営している。

・米国は、このほか、外部研究開発予算が1億ドルを上回る省庁に対して、予算の一定比率(2.5%程度)を中小企業(従業員500人以下)に振り向けることを義務付けるSBIR(Small Business Innovation Reserach)やSTTR(Small Business Technology Transfer)などの施策を実施している。

・オースチンは政府のMCC(マイクロエレクトロニクス・アンド・コンピュータ・テクノロジー・コーポレーション)1982年からと1097年からのSEMATEC(セミコンダクター・マニュファクチャリング・テクノロジー)の立地を獲得し、これが世界のハイテクセンターとなった要因。

・S.J.クライン『イノベーション・スタイル:日米の社会技術システム変革の相違』嶋原文七訳(1992)p。20

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・ロベルト・カマンニイ:1991:創造的な立地環境(イノベーティブ・ミリュー) のなかに存在するネットワークが情報収集や分析のフィルタリングの役割を果たしており、イノベーションや全般的な企業の活動にともなう不確実性のもとで、企業活動に競争優位性を与える源泉になっている。創造的な立地環境とは、企業にとって、次のような機能を司る、演算子(オペレーター)のようなものである:①探索(サーチ)、②篩い分け(スクリーニング)、③報知(シグナリング)、④読解(トランスコーディング)、⑤選択(セレクション)、⑥制御(コントロール)。中小企業にとって、技術革新と企業経営を成功裏に進めるためには、地域的主体間の相互依存関係としての立地環境を利用して、静的、動的な不確実性の程度を下げる仕組みが有効である。

・ナウバハル・シャリフ:2006年:NISは、官僚とアカデミックからなる認識共同体(epistemic community)が国際的な協議のネットワークを利用して作り出したある種の政治・学術的な概念である。その主要な目的の一つは、当時の市場経済重視のネオリベラリズム的政治思潮とオーソドックスな新古典派経済学に対抗して、進化論・制度論的で、「ナショナル」な政策を立案することにあった。→フィンランドやスウェーデンがNISの概念をいち早く政策的に受容した。

・1997年:ヘンリー・エツコビッツとルート・ライデスドルフ:大学-産業-政府の連携を内容とするTriple Helix理論を提唱。NIS理論及び知識生産の「モード2」の理論。

・マイケル・ギボンズ:1994年:モード2:高等教育の普及と知識社会の進展、NPO・NGOや企業の調査研究活動の普及拡大に伴って、高等教育機関としての大学が担当していたアカデミックな知識生産(モード1)の重要性は低下している。

・これに対し、Triple Helix理論は、①情報通信やバイオなどのサイエンス型産業で大学の果たす重要性は今後増大する、②NISは企業の生産プロセスでの技術革新を重視しており、大学の根本的な位置づけが不明確、③チェーンリンクト型、およびオープンイノベーションによる研究開発マネジメントを前提とすれば、大学-産業-政府の無限連携によるハイパーサイクルを超えた自己組織的、動態的な活動の制度化が不可欠などの理由から、イノベーションにおける大学の社会的重要性を強調した。→大学に対し、教育、研究に加え、産業との連携という第三のミッションを付与。

・エツコビッツ:産学連携に対する米国大学人の批判に応えながら、大学は今後、企業家的パラダイムを指向すべきであるとした。

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・1990年代後半:日本のイノベーションの国家的なシステムの構造改革が始まった。1995年:科学技術基本法を策定(1960年代半ばから科学技術会議や日本学術会議の提言があったが30年間に渡って制度化されてこなかったもの):科学技術振興に関する、国および地方公共団体の責務を決めたもの。→2001年:総合科学技術会議:第二期科学技術基本計画を策定:

ポイント1:日本の研究開発の重点領域の特定と組み替え。①ライフサイエンスとバイオ技術、②情報通信、③環境、④ナノ・材料。

ポイント2:産学官連携推進。2003年:国立大学法人法:産官学連携を国立大学の法人の重要な業務の一つと位置づけ。

・1999年:産業活力再生特別措置法30条(日本版バイドール条項):委託研究に係わる特許権については、受託者の保有が可能になった。国立大学で専任教官や客員教官を配置し、地場産業など地域の産業界との連携、受託研究、技術研修、相談、フォーラム、研究情報提供などを行う共同研究センターや先端的な研究の推進と高度な専門的職業能力を持つ創造的な人材育成を目的としたベンチャービジネスラボラトリーの整備も進んだ。

・2002年:知的財産基本法、2003年:知的財産の創出、保護及び活用に関する推進計画を策定。2002年:地方財政再建促進特別措置法施行令を改正し、地方公共団体から国立大学法人への寄付ができるようになった。→県から国立大学法人への寄付講座の設置や土地の無償貸与などが始まっている。

ポイント3:地域科学技術の振興と知的クラスター形成:2002年度から知的クラスター創成事業と都市エリア産学官連携促進事業開始、2001年度から産業クラスター計画開始。

・大学発ベンチャー2004年度末に1112社で目標の1000社を上回った。2005年末に1503社。売上高1984億円、経済波及効果3642億円、雇用者数1万6383人、同波及効果2万5858人と推計。248大学を母体とする。累積ベースで上位大学は、東大、早稲田、大阪、京都、筑波、慶応、東北、九州、九州工科大学、東京工業大学。

・①素材産業や重化学工業の立地、②交通・通信網の全国的整備や住環境の構築、③国際化とアセンブリ産業やエレクトロ産業の全国展開、④地域プラットフォームなど自治体ベースの自立的な試み?、⑤NISの改革、およびローカルなイノベーションシステムの集積への内包化という一連の政策課題。漸進的・経路依存的であり、何回かの非連続な変化を含む、累積的で非可逆的。

1990年代を通して、日米欧:それぞれのイノベーションシステムを再点検し、そのあり方をより意図的にデザインすることになった。→突破段階・試行錯誤の段階は終わりつつある。

地域クラスターを切り口とする社会科学の研究は、引き続き各国で進展中。①NISとの関係。②クラスター間リンケージ。③イノベーションの急速なコモディティ化、④産学連携が今後日本の大学のミッションとしてどう位置づけられるのか。大学は現在、多様化する高等教育市場に対応するために機構改革中。新しい役割に対する大学自体の具体的検討は緒についたばかり。

地域イノベーションがNISとどう違い、どういう難しさとメリットを持つのかなどの研究は未だだと思う。OECDは地域イノベーションはNISの縮減した形であるとしているらしい。’reduced-NIS’OECD:Innovative Clusters: Drivers of NIS 2001 しかし、プレーヤーの違いや限界などから、そう簡単ではない。

山内さんは、地域クラスター間のリンケージというが、それよりも、地域クラスター間競争の方が重要に思う。どう差別化するか。

また、地域クラスターのマネジメントを請け負う企業も出てくるなど、多様なプレーヤーをガバナンスするマネジメントの研究も重要に思う。

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クリエイティブ・シティ第1章

第1章 土屋大洋・上村圭介:米国におけるネットワーク創造都市戦略。

1979年:ジョーンズレポート、1985年:ヤングレポート、2004年:パルミサーノレポート(2004年の大統領選挙を意識して書かれた:民主党なら実行しただろう)→戦時中ということもあり、注目されなかった。

・サクセニアン:①地域の組織や文化、②産業構造、③企業の内部構造(地域産業システムを見る視点)→シリコンバレー:地域ネットワーク型システム、ボストン:独立企業型システム。前者の特徴;

1.地域ネットワークをベースにした産業システムが存在
2.さまざまな関連技術の専門企業同士が集団で学習したり柔軟に調整を進める
3.社会ネットワークが細かく張り巡らされているうえに、労働市場もオープンなので、実験的な試みや企業家活動が促進される
4.企業が激しく競争しながら、同時に非公式なコミュニケーションや協力を通じて市場や技術の変化について互いに学びあう
5.横のつながりを重視する緩やかな結びつきの組織になっているので、社内部門同士も、社外の供給業者や顧客とも横のコミュニケーションがスムーズ。

・スタンフォード大学教授:フレデリック・ターマン:大学の周りに技術者と研究者のコミュニティを築くことによって大学がもっと積極的にハイテク産業を支援する体制を整えようとした。→1950年代には、軍事費が流れ込むことによあって、バレーは急速に成長、→70年代には、半導体産業が活発に「シリコンバレー」と呼ばれるように。ターマンは、もともとMIT出身だが、ルート128の関係よりも、開放的で協力的なものにしようとした。

++(何故、パルミサーノレポートが注目されていないのかをシリコンバレーとDCでヒヤリングした)++

①未来研究所:アレックス・バン:シリコンバレーでは、たくさんのネットワークがオーバーラップしている(教育の、VBの、VCの・・)。カリフォルニアの農業(労働者のモビリティ、ハイテク農業、自立した経営)とハイテク発展との関係。シリコンバレーには、多文化主義とサブカルチャーがあり、多様な考え方を受容できる。失敗しても再チャンスがあり失敗を恐れない。外科医が互いの手術を見学しあうことが出来るようなもの→皆が学習し、地域全体の能力があがる。9.11の影響は少ないのではないか。

②未来研究所:アンソニー・タウンゼント:NYから来たのだが文化が違う。クリエイティブにはいろいろある。ソウルのデジタルメディアシティ、コペンハーゲンのITシティなど、こうした都市は触媒であり、実験をする場所、ラボ、イノベーションを刺激・促進するキャンパス。

③VC:加藤晴洋:9.11よりもITバブル崩壊の方が影響が大きい。9.11は、それを加速し、雇用がシリコンバレー、米国から逃げてしまった。インドに仕事が流れた。アウトソーシング、オフショアによる雇用喪失と企業の利益の問題が政治的議論となっている。仕事が出て行くと人も出て行く。ビザとH1(就労ビザ)の人がいて、H1は、スポンサーになっている会社が潰れると帰らざるをえない。不況で潰れる企業が増えるとこうした問題が広がる。住宅バブルよりも、長期的に見ると人が流出しているほうが問題。しかし、ライフサイエンスがこれから。シリコンバレーの強みは、ベンチャーを育てるインフラがあること。核となる人や企業がいないと、産業集積はできない(コンテンツ産業はない→やりたい人はハリウッドに行く)。シリコンバレーでは、金儲けが共通の理解になっている(日本ではネガティブにとらえられがちだが)。9.11以降の移民政策が長期的には影響を及ぼすかもしれないが、米国の役割はまだ失われていない。

④富士通:パルミサーノは良いレポートだ。発明ではなく革新に重点が移ったということ。移民の問題はある。ワシントンは、国際的都市であるが文化的摩擦がないわけではない、政府がこうした問題に気を配らなければ、クリエイティブな人々を引き止められない。米国の多様性と寛容性は、軍の基地の役割が大きい。米国の田舎出身の軍人が世界を旅する:そこでの経験が異文化理解に役立つ。国際結婚にもつながる。軍はマルチカルチュアル。若い人たちをふるさとから引き離すことができる。新しいアイデアにオープンな若い人だから意味がある。

⑤NEDO:ヤングレポートもパルミサーノも時の政権が意識を持っていないところを突いている。フラストレーションが技術者に溜まっている。うっかりすると追いつかれるという意識。BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)。政策・法令は誰が提言するかが問題、大統領主導、議員の地元利益誘導、産業界の持ち込みかなど。都市を見るとき、米国では、州や地方政府主導で投資していることを無視できない。(ブッシュ政権はナノに連邦政府予算のうち1000億円を投じた。民間はその2倍投資している。地方政府は連邦の3分の1くらい投じている)。

米国の悩みはブッシュ政権が産業政策・技術政策にやる気がないこと。国をあげて一丸となって政策を進めることができていない。一方、日本は、スムーズな意思決定ができていない、誰がリーダーシップを取るかがはっきりしないという政治体制の問題がある。レポートを出しているだけでは不十分で実効に移す必要がある。その点、米国は、勝手にやれてしまうのが強み。日本は縦割りであり、大きな将来像が描けない。米国は大きな将来像から次の動きを引き出す。   官邸主導というのがそうだったはずだが・・。

⑥ジョージワシントン大学:西海岸に憧れたが政策関連の仕事がしたいのでこちらに移った。インターネット時代に、国家はパワフルではなくなっているがブッシュ政権はそのことを理解していない。エンジニアリングでも外交政策でも留学生が必要。トーマス・フリードマン「The World Flat」が指摘するように、米国はたしかに競争力を失いはじめている。カリフォルニアの人たちはクリエーティブなので政治を気にしていない。実験的。DCはクリエイティブだが、アイデアで戦わなくてはいけない。官民パートナーシップを実現できるかが問題、政府の科学予算は減ってきている。

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●創造都市を巡る3つの仮説:

・(アニメ・ゲーム):東京は、世界の若者が憧れる・夢を実現したいと思う舞台になっている。→創造都市がその外にいる人たちが想い描く理想像のモデルになること、あるいはそれに基づいて考えを進めるべき一種の新しい規範として受け止められるものであるということ

・規範とは、規範に近いものと規範から遠いものとの間の区別を、あるいはその両者の間に力の差をもたらすものである。規範に近いものは規範に遠いものに対してより強い立場に立つ。(たとえば、日本で日本人が日本語を話すのに対し、外国人が日本語を話す場合、日本人は外国人に対して優位に立つ:日本人は規範からの逸脱が少ないから→日本人は、規範からの逸脱が自由である。語彙や文法などの規範を十分に習得しているため、そこから意図的な逸脱が認められる:冗談、皮肉、造語などのメタ言語的なコミュニケーションを構成する。外国人は、ただの間違いとして片付けられてしまう。規範からの逸脱が意図的でメタコミュニケーションのためのものなのか、単に間違えただけなのか区別がつかないから)

・米国の創造都市は、他に対する強い規範となっている→イノベーションとして何を取り上げ、何を捨てるかと言う選択を自由に行うことができる。Web2.0や次世代インターネットについての議論。人がぼんやりとイメージしてきたアイデアにWeb2.0という表現を与えたことが画期的ではあった。それに加えて、その表現を規範として聞き手に受け入れさせる説得力を持つことが重要。

・聞き手を持たない言葉を発することは誰でもできる。しかし、聞き手を持ち、その聞き手に受け止められる言葉を発するためには、話し手と聞き手の間に一定の関係がなければならない。一定の関係とは、信頼関係、主従関係・・などなど、聞くべき相手であると考えていなければならない。シリコンバレーは世界中に聞き手を有し、インターネットの文法と語彙を支配している。

聞き手を持たないというのは、実際良く分かる。長銀というブランド(資金供給という力とこれまで政策に影響を与えてきたことや新しいトレンドを発するという文化的歴史に裏付けられたブランド:それは、部外者からみれば、憧れであったはず)の中に居た時には、我々が話すことを皆が聞くべき相手と思ってくれていたので、発信するとそれが業界標準になったものだ。今は、無名の私が発信しても、それは業界標準とはならない。また、磨かれもしない。審議会委員になっている大学教授やマスコミに現れる大学教授などが現在は、聞かれるようになっている。

・創造的都市であるということは、このような語彙と文法をコントロールする力をその都市が持つということである。米国は、シリコンバレーは、国外から多くの人材を吸収することでこのような力を維持してきたのではないか。

これは、都と田舎(雅と鄙)に通じる。(原宿にマンションメーカーが立地し、ギャラリーが出来るには)憧れが重要である。都になる要素:仕掛けとして文化総覧(カタカナ職業人の生活圏;と格付け。

・梅田:シリコンバレーや米国のIT企業には「力の芽」が備わっていると表現する。次の世代の技術とそれに基づいてビジネスのあり方を決定づけるような影響力の大きい変化が常に生み出されてくるのがシリコンバレーの魅力である。「力の芽」は、技術力や資金力だけがあったとしてももたらされるものではない。おそらく、この力の芽を芽吹かせ、育んでいくことができるということは、都市の持つ力であり、そのような力を持つ都市こそが創造的としの一つの現れであるに違いない。

・2つの疑問:①そのような力はいつまで続くのだろうか、②そのような力を都市に与えるために何ができるのか。

①Web2.0時代のインターネットは、利用者の数から言えば、アジアが牽引する。新しいサービスの提供を巡って、需要側と供給側のうち供給側しかもたないことになる。これまでは、両方持つ米国によって形作られてきたのだが、片方になることで支配力を失うことにはならないだろうか。

クリエイティブコモンズの考え方では、創造的消費者が重要であると考えられている。Web2.0は、もっと大きな地殻変動をもたらすものになるかもしれない。

●創造都市の形成を巡る2つの仮説:

・2006年1月の一般教書演説で、ブッシュは、ナノ、スパコン、代替エネルギーなどの物理科学分野での重要な研究に対する連邦政府の拠出を倍増し、研究開発減税の恒久化、学校教育・生涯教育改革などを含む米国の競争力維持を図るための「米国競争力イニシアチブ(American Competitiveness Initiative)」を提唱した。

・2つの仮説:①政策のエミュレーション(模倣・対抗)仮説、②クリエイティブな人々による創発仮説。

①後発が先発に追いつこうと政策を真似するが、真似しきれずに思わぬ方向に進み、結果的に先発を凌駕する。シリコンバレーは、当初ルート128を真似しようとしたが、気付かぬうちに、手本を離れて新しいシステムを生み出した。産業の伝統がないので、制約もない、ユニークなコミュニティを築いた。(サクセニアン)

薬師寺泰蔵のテクノヘゲモニー論(模倣+α):中公新書1989年に通じる。国際政治における覇権国は、先行する覇権国の技術をエミュレートすることによって台頭する。エミュレーションは政策でも、技術でも起こる。

②政策がトップダウンとすると、ボトムアップ。ミクロレベルのローカルなコミュニケーションがマクロレベルの自律的なシステムなり秩序を作り出すという考え方(創発)。クルーグマンやスティーブ・ジョンソン:山崎浩生訳『創発-蟻・脳・都市・ソフトウェアの自己組織化ネットワーク』ソフトバンクパブリッシング2004年らの研究。ネットワーク理論の視点:マーク・ブキャナン『複雑な世界、単純な法則-ネットワーク科学の最前線』阪本芳久訳草思社2005年。

フロリダが指摘するクリエイティブな人々は、彼らがより多く集まるところに集まるという特性を持っており、グローバリゼーションによってモビリティが高まってきたことから、その動きが活発になっている。それぞれの都市の魅力にしたがって、創発的に人々が動きはじめている。

おそらく、この二つの仮説の両方が相互作用しながら創造都市の形成が進んできていると考えるのが妥当。

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September 05, 2007

クリエイティブ・シティ序章

最初に読み始めてから、だいぶ寝かしてしまったが、読み進めることにする。

原田氏の序章:NECの研究所だけあって、情報ネットワークを重視していることは横に置くとして。

創造都市ではなく、創造産業都市としている。コンテンツ産業だけでなく、工業分野におけるイノベーションを加える。

そして、国の政策よりもむしろ、地域性や伝統に裏打ちされた都市が担うべきではないかとし、その都市がネットワーク化することが望ましいとしている。

ハード環境の整備だけでなく、ソフト環境整備が必要である(集積する人々の社会的コミュニケーション、相互作用が革新、創造性を促進するようにすべきであり、情報ネットワークが必要である)としている。ここで情報ネットワークは、IT上とフェイス・トゥ・フェイスを刺している。いろいろな分野の人が都市に住み、都市で仕事をし、都市で交流する・・そのなかで、創造的な人々が集まり、ヒューマンネットワークが形成されることが必要としている。

・・・私も、文字で書くと、上記のようなことを書くと思うが、坂口さんが言っていたようなクリエーティブな人々の生活圏が一緒である地域(憧れの地域)を本当に意識しているだろうか。・・・終電を気にして帰る郊外人ではなく、そこで遊び・生活し・仕事をする(だからマンション・メーカー)であり、これはかつてのビットバレーに通じる。つまり、同じ東京都に住み、インタビューは出来たとしても、あるいは、乗り換えたり、買い物に渋谷に行くとしても、私とビットバレーの人々とは生活圏が重なっていない。

序章を読んで、現在研究中の原宿との関係で考えたことのメモ:

1.シリコンバレーの強さについて、ウィリアム・F・ミラーは「全体の環境、すなわち革新と起業家精神によって研ぎ澄まされた『生息地』から生まれている。この生息地は、次々に生まれる新しい企業や技術と共栄しながら、時間をかけて内生的に発展を遂げてきた」と述べている。

「情報通信から次のリーディング産業であるバイオやナノも含め、絶えず新しい分野をみつけ、革新的技術や商品を開発しつづけることができるメカニズムを持っている。そのメカニズムとは、新技術の開発力はもちろんのことであるが、その技術を商品化し、市場に出して実際の富みを生む力とそのスピードのメカニズムである。・・・現地では、「Social Innovation(社会的革新)に向けた継続的な努力」と表現されており、住む人たちが絶えずイノベーションを生む機能を持ったコミュニティを維持・強化すべく生活環境を整え、社会システム、人間関係を改善発展させ、クオリティオブライフの維持・発展させる努力を続けていることを表している。世界に冠たるハイテク企業を次々と生み出すシリコンバレー成功の本質は、市場原理をより良く機能させるこのような文化的風土にある。・・人種、性別、年齢、宗教などに係わらず、誰もが自由に競争市場に参画でき、実力次第で大きな成功のチャンスが得られるという市場原理を中心とした機会均等かつ個人尊重の文化、シリコンガレーは米国の良さが凝縮されている。・・失敗してもそこで何を学んだかが評価される。」・・・ある意味では、スノッブなエリアであり、そのクラブ化により風紀が乱れない、スラム化しない工夫をしているはず(地価が高いので低所得者層が入ってこないのに加え)、小学校でPCインターネットを早く教えていたなど。

風景や環境を借景として利用する→しかし、借景としずらいほどに土地利用が進んでいる今日では、借景したい景観をお金や汗を出して維持するエネルギーが必要になる。それには、単なる風流人では済まず、ランドスケープなどの土地開発利用についての大きなビジョンと政策が必要になる。

明治神宮のお陰で原宿がメリットを得ているとしたら、商店会は、欅の維持だけでなく、明治神宮の森を守ることにも力を尽くさなければならない。文教地区へのこだわりは、純粋な住民に加え、それによって利益を得ている商店会も応分の力を尽くさなければならない。

・もし、この地域をいつまでも広い意味のファッションのメッカにしておくなら、たとえば、①外国人アーティストに場やチャンスを与える、②外国人を含め、新人に場やチャンスを与える、③小中学生が自然にファッションタウンで遊んで目を肥やすだけでなく、彼らにプロが教育するチャンスを与える(原宿の小中学校では、世界一流のアーティストから直接教えてもらえる)。④内外から来る学生などにも、そういったチャンスを与える。・・チャレンジのためのファンドやファッションショーを開催するための費用を原宿から卒業した企業から集める工夫など。卒業生が青山・原宿を愛するようにする。←シリコンバレーでは成功した際には、VCとして後進に対して投資をして育てる。ベンチャーの循環システム。

・NPOJVSVの年次レポートでダグ・ヘントン「シリコンバレーの新局面」技術志向の経済から経験を伝えるテクノロジーを創造する高度にクリエーティブな人材が要求されるアイデア志向の経済に移行している。iPODやGoogleなど?

・Google:社内の知識労働者は、働いた時間ではなく、仕事の成果に対する報酬を期待する新しいタイプの労働者。知識労働者をのびのびと働かせる企業には、最高の人材が集まり、結果として長期にわたる競争的優位を維持できる。G社では、勤務時間の最大20%までの自分自身のプロジェクトについやすることができる。その結果、命令されなくとも、アイデアが自然と集まるカルチャーが生まれている。エリック・シュミット、ハル・バリアン「グーグル流経営者10のルール」Newsweek日本版2005年12月28、1月4日合併号p。63

これは、VANも、坂口さんが書いているマンションメーカーも、ビームスも似ている、ルール化されているかは違うかもしれない。創造性を重視し、上手く行っているときは、皆こんなかんじ。これが失敗しないで続けられるところがミソ。

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