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September 06, 2007

クリエイティブ・シティ7章

第7章は、知的・産業クラスターと創造都市-産業集積とイノベーションをめぐる日本の政策(山内さん)。

日本の産業集積と立地政策(1950年の国土総合開発法、1962年-98年全国総合開発計画(全総)+各省の施策)

1次全総(1962年):国土の均衡ある発展を目指して、新産業都市(15ケ所)、工業整備特別地区(6ケ所)。→高度成長のなかで、大都市への集中が進み、過疎・過密が一層進んだ。

2次全総(1969年):ジェット航空機、新幹線、高速道路、高速コンテナ船などの交通網と電話・データ回線などの通信網により、工業集積間を連結し、中枢管理機能の集積と物流の機構を広域的に体系化。札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、広島、福岡の7大集積地を交通・通信網で結んで国土の主軸を形成。国際化。

3次全総(1977年):73年のオイルショック、経済成長率10%から4%へ。大都市圏への人口集中が一段落、地方定住が進展→創意工夫を生かして地域づくりをしよう。定住構想方式。

4次全総(1987年):80年代後半、地方圏では、産業構造の転換による素材型産業や輸出依存型産業の不振。東京圏の世界都市機能の集中・国際化への対応、地方圏の産業構造転換→産業振興施策。

多極分散型国土の具体化としてテクノポリス構想(技術集積都市):産・学・住を有機的に結びつける:半導体、コンピュータ、精密機械などの新産業を誘致・地域開発。1983年テクノポリス法(26地域)。国土庁、農林水産省、通産省、建設省の承認を受ける。企業誘致のための工業団地造成、大学との共同研究センターやリサーチパークなどの研究施設を設置。総合文化施設や歴史的な観光資源、地域の景観などを利用した生活環境を整備。

1988年:情報処理産業サービス関連機能の立地促進を目的とした頭脳立地法(26ケ所)、1989年:オフィス機能の地方展開を目的とした地方拠点法。

1998年:新事業創出促進法(産業再生計画に沿って):テクノポリス法と頭脳立地法はこれに発展的に移行。完全失業率が過去最高、製造業は過剰設備と過剰雇用→業態のスリム化、競争力回復に懸命。開業率が廃業率を下回る。テクノポリス財団、中小企業振興公社などは統合・ネットワーク化し地域プラットフォーム事業などの総合的支援体制へ。→国のイノベーションシステムのあり方の変革へ。

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・クリストファー・フリーマン『技術政策と経済パフォーマンス』1987年:技術変化やイノベーションには、増分的(インクリメンタル)な変化と根本的(ラディカル)な変化がある。彼によれば、日本の1980年代後半は、グローバルな50年周期のコンドラチェフの第Ⅴ波の上昇局面に当っていた。

・公文は、60年周期説、1980年代後半を第Ⅲ期の下降局面として解釈した。2005年に底を打ち、2035年にかけて上昇局面に転ずる。80年から90年代からはじめる世界的なイノベーションの波は、フリーマンの言うメカトロニクス化ではなくインターネットの普及。

・西澤昭夫・福嶋路『大学発ベンチャー企業とクラスター戦略:日本はオースティンを作れるか』学文社2005年

・Kline, Stephen, and Nathan Rosenberg :"An Overview of Innovation "in Ralph Landau and Nathan Rosenberg, eds., 'The Positive Sum Strategy' National Academy Press 1986 pp.275-305  

:大企業による中央研究所による米国型のイノベーションシステムが行き詰まりを見せている。中央研究所によるリニアモデルからチェーンリンクとモデルへ(イノベーションの契機は、市場ニーズや生産現場にある。イノベーションとはユーザの動向や生産ラインの障害などの具体的な事象に対応する際の技術的(テクノロジカル)なものであって、サイエンティフィック(科学的)である必要はない。米国大企業は、基礎研究部門を縮小して応用研究へ。

→他方で国際的な競争力の観点からサイエンス型産業の重要性はましており、このような変化に対応するには、①企業と産業界・大学・政府の書記官の協力関係の推進、特に産業界と大学を結びつける努力、②技術移転の促進や技術開発に対する補助金、③大学や政府と共同作業する産業界のコンソーシアムが産業技術の変化の方向性を示すロードマップを作成する必要がある。

・1980年のバイドール法:大学から民間企業への技術移転の促進を目的。大学が政府の資金を使って開発した成果物の特許を大学が所有するようにする。大学からのスピンオフやベンチャー企業設立を推進する契機になった。

・1984年の国家共同研究法(NCRA:National Cooperation Research Act):技術研究組合など企業間の競争以前の段階での協力を促進するために、反トラスト法の適用緩和を明確にした。さらに、開発研究成果の商品化のための企業連携にも対象を拡大。→1993年にNational Cooperation Research and Production Actへ。

・1988年の包括通商競争力法の一環として、先端技術計画(ATP:Advanced Technology Program)が作られた:開発リスクが高く、企業だけではコスト負担ができない場合には、連邦政府が一定割合の助成金(最大で研究開発費の50%)を出す。現在のATPでは、大学を含むコンソーシアムを支援対象とする場合、500万から1000万ドルのマッチングファンドの支援を行うことになっている。ATPはNIST(National Institute of Standards and Technology)が運営している。

・米国は、このほか、外部研究開発予算が1億ドルを上回る省庁に対して、予算の一定比率(2.5%程度)を中小企業(従業員500人以下)に振り向けることを義務付けるSBIR(Small Business Innovation Reserach)やSTTR(Small Business Technology Transfer)などの施策を実施している。

・オースチンは政府のMCC(マイクロエレクトロニクス・アンド・コンピュータ・テクノロジー・コーポレーション)1982年からと1097年からのSEMATEC(セミコンダクター・マニュファクチャリング・テクノロジー)の立地を獲得し、これが世界のハイテクセンターとなった要因。

・S.J.クライン『イノベーション・スタイル:日米の社会技術システム変革の相違』嶋原文七訳(1992)p。20

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・ロベルト・カマンニイ:1991:創造的な立地環境(イノベーティブ・ミリュー) のなかに存在するネットワークが情報収集や分析のフィルタリングの役割を果たしており、イノベーションや全般的な企業の活動にともなう不確実性のもとで、企業活動に競争優位性を与える源泉になっている。創造的な立地環境とは、企業にとって、次のような機能を司る、演算子(オペレーター)のようなものである:①探索(サーチ)、②篩い分け(スクリーニング)、③報知(シグナリング)、④読解(トランスコーディング)、⑤選択(セレクション)、⑥制御(コントロール)。中小企業にとって、技術革新と企業経営を成功裏に進めるためには、地域的主体間の相互依存関係としての立地環境を利用して、静的、動的な不確実性の程度を下げる仕組みが有効である。

・ナウバハル・シャリフ:2006年:NISは、官僚とアカデミックからなる認識共同体(epistemic community)が国際的な協議のネットワークを利用して作り出したある種の政治・学術的な概念である。その主要な目的の一つは、当時の市場経済重視のネオリベラリズム的政治思潮とオーソドックスな新古典派経済学に対抗して、進化論・制度論的で、「ナショナル」な政策を立案することにあった。→フィンランドやスウェーデンがNISの概念をいち早く政策的に受容した。

・1997年:ヘンリー・エツコビッツとルート・ライデスドルフ:大学-産業-政府の連携を内容とするTriple Helix理論を提唱。NIS理論及び知識生産の「モード2」の理論。

・マイケル・ギボンズ:1994年:モード2:高等教育の普及と知識社会の進展、NPO・NGOや企業の調査研究活動の普及拡大に伴って、高等教育機関としての大学が担当していたアカデミックな知識生産(モード1)の重要性は低下している。

・これに対し、Triple Helix理論は、①情報通信やバイオなどのサイエンス型産業で大学の果たす重要性は今後増大する、②NISは企業の生産プロセスでの技術革新を重視しており、大学の根本的な位置づけが不明確、③チェーンリンクト型、およびオープンイノベーションによる研究開発マネジメントを前提とすれば、大学-産業-政府の無限連携によるハイパーサイクルを超えた自己組織的、動態的な活動の制度化が不可欠などの理由から、イノベーションにおける大学の社会的重要性を強調した。→大学に対し、教育、研究に加え、産業との連携という第三のミッションを付与。

・エツコビッツ:産学連携に対する米国大学人の批判に応えながら、大学は今後、企業家的パラダイムを指向すべきであるとした。

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・1990年代後半:日本のイノベーションの国家的なシステムの構造改革が始まった。1995年:科学技術基本法を策定(1960年代半ばから科学技術会議や日本学術会議の提言があったが30年間に渡って制度化されてこなかったもの):科学技術振興に関する、国および地方公共団体の責務を決めたもの。→2001年:総合科学技術会議:第二期科学技術基本計画を策定:

ポイント1:日本の研究開発の重点領域の特定と組み替え。①ライフサイエンスとバイオ技術、②情報通信、③環境、④ナノ・材料。

ポイント2:産学官連携推進。2003年:国立大学法人法:産官学連携を国立大学の法人の重要な業務の一つと位置づけ。

・1999年:産業活力再生特別措置法30条(日本版バイドール条項):委託研究に係わる特許権については、受託者の保有が可能になった。国立大学で専任教官や客員教官を配置し、地場産業など地域の産業界との連携、受託研究、技術研修、相談、フォーラム、研究情報提供などを行う共同研究センターや先端的な研究の推進と高度な専門的職業能力を持つ創造的な人材育成を目的としたベンチャービジネスラボラトリーの整備も進んだ。

・2002年:知的財産基本法、2003年:知的財産の創出、保護及び活用に関する推進計画を策定。2002年:地方財政再建促進特別措置法施行令を改正し、地方公共団体から国立大学法人への寄付ができるようになった。→県から国立大学法人への寄付講座の設置や土地の無償貸与などが始まっている。

ポイント3:地域科学技術の振興と知的クラスター形成:2002年度から知的クラスター創成事業と都市エリア産学官連携促進事業開始、2001年度から産業クラスター計画開始。

・大学発ベンチャー2004年度末に1112社で目標の1000社を上回った。2005年末に1503社。売上高1984億円、経済波及効果3642億円、雇用者数1万6383人、同波及効果2万5858人と推計。248大学を母体とする。累積ベースで上位大学は、東大、早稲田、大阪、京都、筑波、慶応、東北、九州、九州工科大学、東京工業大学。

・①素材産業や重化学工業の立地、②交通・通信網の全国的整備や住環境の構築、③国際化とアセンブリ産業やエレクトロ産業の全国展開、④地域プラットフォームなど自治体ベースの自立的な試み?、⑤NISの改革、およびローカルなイノベーションシステムの集積への内包化という一連の政策課題。漸進的・経路依存的であり、何回かの非連続な変化を含む、累積的で非可逆的。

1990年代を通して、日米欧:それぞれのイノベーションシステムを再点検し、そのあり方をより意図的にデザインすることになった。→突破段階・試行錯誤の段階は終わりつつある。

地域クラスターを切り口とする社会科学の研究は、引き続き各国で進展中。①NISとの関係。②クラスター間リンケージ。③イノベーションの急速なコモディティ化、④産学連携が今後日本の大学のミッションとしてどう位置づけられるのか。大学は現在、多様化する高等教育市場に対応するために機構改革中。新しい役割に対する大学自体の具体的検討は緒についたばかり。

地域イノベーションがNISとどう違い、どういう難しさとメリットを持つのかなどの研究は未だだと思う。OECDは地域イノベーションはNISの縮減した形であるとしているらしい。’reduced-NIS’OECD:Innovative Clusters: Drivers of NIS 2001 しかし、プレーヤーの違いや限界などから、そう簡単ではない。

山内さんは、地域クラスター間のリンケージというが、それよりも、地域クラスター間競争の方が重要に思う。どう差別化するか。

また、地域クラスターのマネジメントを請け負う企業も出てくるなど、多様なプレーヤーをガバナンスするマネジメントの研究も重要に思う。

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Comments

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