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September 06, 2007

クリエイティブ・シティ第1章

第1章 土屋大洋・上村圭介:米国におけるネットワーク創造都市戦略。

1979年:ジョーンズレポート、1985年:ヤングレポート、2004年:パルミサーノレポート(2004年の大統領選挙を意識して書かれた:民主党なら実行しただろう)→戦時中ということもあり、注目されなかった。

・サクセニアン:①地域の組織や文化、②産業構造、③企業の内部構造(地域産業システムを見る視点)→シリコンバレー:地域ネットワーク型システム、ボストン:独立企業型システム。前者の特徴;

1.地域ネットワークをベースにした産業システムが存在
2.さまざまな関連技術の専門企業同士が集団で学習したり柔軟に調整を進める
3.社会ネットワークが細かく張り巡らされているうえに、労働市場もオープンなので、実験的な試みや企業家活動が促進される
4.企業が激しく競争しながら、同時に非公式なコミュニケーションや協力を通じて市場や技術の変化について互いに学びあう
5.横のつながりを重視する緩やかな結びつきの組織になっているので、社内部門同士も、社外の供給業者や顧客とも横のコミュニケーションがスムーズ。

・スタンフォード大学教授:フレデリック・ターマン:大学の周りに技術者と研究者のコミュニティを築くことによって大学がもっと積極的にハイテク産業を支援する体制を整えようとした。→1950年代には、軍事費が流れ込むことによあって、バレーは急速に成長、→70年代には、半導体産業が活発に「シリコンバレー」と呼ばれるように。ターマンは、もともとMIT出身だが、ルート128の関係よりも、開放的で協力的なものにしようとした。

++(何故、パルミサーノレポートが注目されていないのかをシリコンバレーとDCでヒヤリングした)++

①未来研究所:アレックス・バン:シリコンバレーでは、たくさんのネットワークがオーバーラップしている(教育の、VBの、VCの・・)。カリフォルニアの農業(労働者のモビリティ、ハイテク農業、自立した経営)とハイテク発展との関係。シリコンバレーには、多文化主義とサブカルチャーがあり、多様な考え方を受容できる。失敗しても再チャンスがあり失敗を恐れない。外科医が互いの手術を見学しあうことが出来るようなもの→皆が学習し、地域全体の能力があがる。9.11の影響は少ないのではないか。

②未来研究所:アンソニー・タウンゼント:NYから来たのだが文化が違う。クリエイティブにはいろいろある。ソウルのデジタルメディアシティ、コペンハーゲンのITシティなど、こうした都市は触媒であり、実験をする場所、ラボ、イノベーションを刺激・促進するキャンパス。

③VC:加藤晴洋:9.11よりもITバブル崩壊の方が影響が大きい。9.11は、それを加速し、雇用がシリコンバレー、米国から逃げてしまった。インドに仕事が流れた。アウトソーシング、オフショアによる雇用喪失と企業の利益の問題が政治的議論となっている。仕事が出て行くと人も出て行く。ビザとH1(就労ビザ)の人がいて、H1は、スポンサーになっている会社が潰れると帰らざるをえない。不況で潰れる企業が増えるとこうした問題が広がる。住宅バブルよりも、長期的に見ると人が流出しているほうが問題。しかし、ライフサイエンスがこれから。シリコンバレーの強みは、ベンチャーを育てるインフラがあること。核となる人や企業がいないと、産業集積はできない(コンテンツ産業はない→やりたい人はハリウッドに行く)。シリコンバレーでは、金儲けが共通の理解になっている(日本ではネガティブにとらえられがちだが)。9.11以降の移民政策が長期的には影響を及ぼすかもしれないが、米国の役割はまだ失われていない。

④富士通:パルミサーノは良いレポートだ。発明ではなく革新に重点が移ったということ。移民の問題はある。ワシントンは、国際的都市であるが文化的摩擦がないわけではない、政府がこうした問題に気を配らなければ、クリエイティブな人々を引き止められない。米国の多様性と寛容性は、軍の基地の役割が大きい。米国の田舎出身の軍人が世界を旅する:そこでの経験が異文化理解に役立つ。国際結婚にもつながる。軍はマルチカルチュアル。若い人たちをふるさとから引き離すことができる。新しいアイデアにオープンな若い人だから意味がある。

⑤NEDO:ヤングレポートもパルミサーノも時の政権が意識を持っていないところを突いている。フラストレーションが技術者に溜まっている。うっかりすると追いつかれるという意識。BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)。政策・法令は誰が提言するかが問題、大統領主導、議員の地元利益誘導、産業界の持ち込みかなど。都市を見るとき、米国では、州や地方政府主導で投資していることを無視できない。(ブッシュ政権はナノに連邦政府予算のうち1000億円を投じた。民間はその2倍投資している。地方政府は連邦の3分の1くらい投じている)。

米国の悩みはブッシュ政権が産業政策・技術政策にやる気がないこと。国をあげて一丸となって政策を進めることができていない。一方、日本は、スムーズな意思決定ができていない、誰がリーダーシップを取るかがはっきりしないという政治体制の問題がある。レポートを出しているだけでは不十分で実効に移す必要がある。その点、米国は、勝手にやれてしまうのが強み。日本は縦割りであり、大きな将来像が描けない。米国は大きな将来像から次の動きを引き出す。   官邸主導というのがそうだったはずだが・・。

⑥ジョージワシントン大学:西海岸に憧れたが政策関連の仕事がしたいのでこちらに移った。インターネット時代に、国家はパワフルではなくなっているがブッシュ政権はそのことを理解していない。エンジニアリングでも外交政策でも留学生が必要。トーマス・フリードマン「The World Flat」が指摘するように、米国はたしかに競争力を失いはじめている。カリフォルニアの人たちはクリエーティブなので政治を気にしていない。実験的。DCはクリエイティブだが、アイデアで戦わなくてはいけない。官民パートナーシップを実現できるかが問題、政府の科学予算は減ってきている。

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●創造都市を巡る3つの仮説:

・(アニメ・ゲーム):東京は、世界の若者が憧れる・夢を実現したいと思う舞台になっている。→創造都市がその外にいる人たちが想い描く理想像のモデルになること、あるいはそれに基づいて考えを進めるべき一種の新しい規範として受け止められるものであるということ

・規範とは、規範に近いものと規範から遠いものとの間の区別を、あるいはその両者の間に力の差をもたらすものである。規範に近いものは規範に遠いものに対してより強い立場に立つ。(たとえば、日本で日本人が日本語を話すのに対し、外国人が日本語を話す場合、日本人は外国人に対して優位に立つ:日本人は規範からの逸脱が少ないから→日本人は、規範からの逸脱が自由である。語彙や文法などの規範を十分に習得しているため、そこから意図的な逸脱が認められる:冗談、皮肉、造語などのメタ言語的なコミュニケーションを構成する。外国人は、ただの間違いとして片付けられてしまう。規範からの逸脱が意図的でメタコミュニケーションのためのものなのか、単に間違えただけなのか区別がつかないから)

・米国の創造都市は、他に対する強い規範となっている→イノベーションとして何を取り上げ、何を捨てるかと言う選択を自由に行うことができる。Web2.0や次世代インターネットについての議論。人がぼんやりとイメージしてきたアイデアにWeb2.0という表現を与えたことが画期的ではあった。それに加えて、その表現を規範として聞き手に受け入れさせる説得力を持つことが重要。

・聞き手を持たない言葉を発することは誰でもできる。しかし、聞き手を持ち、その聞き手に受け止められる言葉を発するためには、話し手と聞き手の間に一定の関係がなければならない。一定の関係とは、信頼関係、主従関係・・などなど、聞くべき相手であると考えていなければならない。シリコンバレーは世界中に聞き手を有し、インターネットの文法と語彙を支配している。

聞き手を持たないというのは、実際良く分かる。長銀というブランド(資金供給という力とこれまで政策に影響を与えてきたことや新しいトレンドを発するという文化的歴史に裏付けられたブランド:それは、部外者からみれば、憧れであったはず)の中に居た時には、我々が話すことを皆が聞くべき相手と思ってくれていたので、発信するとそれが業界標準になったものだ。今は、無名の私が発信しても、それは業界標準とはならない。また、磨かれもしない。審議会委員になっている大学教授やマスコミに現れる大学教授などが現在は、聞かれるようになっている。

・創造的都市であるということは、このような語彙と文法をコントロールする力をその都市が持つということである。米国は、シリコンバレーは、国外から多くの人材を吸収することでこのような力を維持してきたのではないか。

これは、都と田舎(雅と鄙)に通じる。(原宿にマンションメーカーが立地し、ギャラリーが出来るには)憧れが重要である。都になる要素:仕掛けとして文化総覧(カタカナ職業人の生活圏;と格付け。

・梅田:シリコンバレーや米国のIT企業には「力の芽」が備わっていると表現する。次の世代の技術とそれに基づいてビジネスのあり方を決定づけるような影響力の大きい変化が常に生み出されてくるのがシリコンバレーの魅力である。「力の芽」は、技術力や資金力だけがあったとしてももたらされるものではない。おそらく、この力の芽を芽吹かせ、育んでいくことができるということは、都市の持つ力であり、そのような力を持つ都市こそが創造的としの一つの現れであるに違いない。

・2つの疑問:①そのような力はいつまで続くのだろうか、②そのような力を都市に与えるために何ができるのか。

①Web2.0時代のインターネットは、利用者の数から言えば、アジアが牽引する。新しいサービスの提供を巡って、需要側と供給側のうち供給側しかもたないことになる。これまでは、両方持つ米国によって形作られてきたのだが、片方になることで支配力を失うことにはならないだろうか。

クリエイティブコモンズの考え方では、創造的消費者が重要であると考えられている。Web2.0は、もっと大きな地殻変動をもたらすものになるかもしれない。

●創造都市の形成を巡る2つの仮説:

・2006年1月の一般教書演説で、ブッシュは、ナノ、スパコン、代替エネルギーなどの物理科学分野での重要な研究に対する連邦政府の拠出を倍増し、研究開発減税の恒久化、学校教育・生涯教育改革などを含む米国の競争力維持を図るための「米国競争力イニシアチブ(American Competitiveness Initiative)」を提唱した。

・2つの仮説:①政策のエミュレーション(模倣・対抗)仮説、②クリエイティブな人々による創発仮説。

①後発が先発に追いつこうと政策を真似するが、真似しきれずに思わぬ方向に進み、結果的に先発を凌駕する。シリコンバレーは、当初ルート128を真似しようとしたが、気付かぬうちに、手本を離れて新しいシステムを生み出した。産業の伝統がないので、制約もない、ユニークなコミュニティを築いた。(サクセニアン)

薬師寺泰蔵のテクノヘゲモニー論(模倣+α):中公新書1989年に通じる。国際政治における覇権国は、先行する覇権国の技術をエミュレートすることによって台頭する。エミュレーションは政策でも、技術でも起こる。

②政策がトップダウンとすると、ボトムアップ。ミクロレベルのローカルなコミュニケーションがマクロレベルの自律的なシステムなり秩序を作り出すという考え方(創発)。クルーグマンやスティーブ・ジョンソン:山崎浩生訳『創発-蟻・脳・都市・ソフトウェアの自己組織化ネットワーク』ソフトバンクパブリッシング2004年らの研究。ネットワーク理論の視点:マーク・ブキャナン『複雑な世界、単純な法則-ネットワーク科学の最前線』阪本芳久訳草思社2005年。

フロリダが指摘するクリエイティブな人々は、彼らがより多く集まるところに集まるという特性を持っており、グローバリゼーションによってモビリティが高まってきたことから、その動きが活発になっている。それぞれの都市の魅力にしたがって、創発的に人々が動きはじめている。

おそらく、この二つの仮説の両方が相互作用しながら創造都市の形成が進んできていると考えるのが妥当。

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