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September 07, 2007

クリエイティブ・シティ第4章

木村忠正氏による第四章:ボローニャ-市民社会としての情報ネットワーク社会という視点

・「eCitizenship for All」(すべて人に情報ネットワーク社会の市民権を):電子政府推進活動:欧州において電子政府を積極的に推進している100以上の都しが組織するテレシティーズ(改組されて現在は、EUROCITIES Knowledge Society Forum)とコンサル大手のデロイトが設立:2003、2004年に参加各都市の電子政府進展に関する比較基準づくりと評価を行うとともに、数都市に対してe市民権顕彰という表彰を行っている。

2004年:スウェーデン・ストックホルム市、イタリア・ボローニャ市、スペイン・バルセロナ市に与えられた。さまざまな指標では、イタリア、スペインの情報化は低いのに、何故アワードで選ばれたのかという木村氏の疑問→市民社会として情報ネットワーク社会を発展させようとする極めて強力な社会的意志。

・バルセロナ市民フォルダ:行政の情報に市民自らがアクセスし、必要によって公文書を発行できるワンストップサービス:2004年から:税金、罰金、国勢調査、戸籍、土地台帳、車両台帳、選挙人名簿などの6つのDBに市民がアクセスできる。・・自分に関するデータを自分がアクセスし、確認し、場合によっては訂正を求めることができる:情報コントロール権。一般には、それぞれ分野ごとに独立した情報システムで管理しているなど、難しい。→1999年からこうした利用を見越して、DBにおけるフォーマットの相互運用性確保など整合的なDB構築を行ってきた。・・技術の特性を理解するとともに、それによって何を実現しようとするかという社会的価値観、社会的意志に強く規程される。

・1995年:「シティ・オブ・ビット」ウイリアム・ミッチェル「われわれのなすべきもっとも根本的な仕事は、広帯域コミュニケーション網のためのデジタル回線や電子機器を用意することではない(いずれ手に入る)。ネットワークに乗せるコンテンツを作ることでもない。一番大切なのは、どんな人生を送りたいか、どんなコミュニティで暮らしたいか、それにふさわしいデジタル環境はどのようなものであるべきかを想像し、創造していくことなのである」(13ページ)

・ボローニャ市(人口40万人)イペルボーレ市民ネット:1995年市民に無料でネット接続を提供するサービスとしてスタート。ネット接続、電子メールアドレス、市政に関するニューズグループへのアクセス、市政に関する情報へのアクセスなど→1996年からインターネット上の全てのサイトへのアクセスが可能になった。2001年末登録利用者数1万8000人、2005年7月1万7200人(商用ISPサービスは別途)。1807団体が登録(3分の1はNPOやNGO)。・・商用ISPサービス以前から市民への無料インターネットサービスを開始したことと、現在でもこれが市民に生かされていること。

・エミリアロマーニャ州は、人口400万人、企業数41万社、10人に1企業がある計算。(日本では260万社法人数で50人に一社・・個人事業所を含めれば日本も500万社→24人に1社)。

・全国職人連合会エミリア・ロマーニャ州本部(CAN)は、州内14万社の中傷・職人企業のうち8万6000社を組織し、2000人のスタッフがさまざまなサービスを提供している。

・ボローニャ市は「地区住民評議会」発祥の地:反ファシズム闘争を支えてきた革新政党が市政を担ってきた。:小学校や保育所などの公共施設の運営、地区の公共事業の実施など、さまざまな公的事業、社会的サービスである市の行政に参画することになった。

1963年「市行政への市民の参加と分権に関する条例」が定められ、地区住民評議会が制度化され、その後、国レベルでも法律が定められ、人口10万人以上のコムーネは地区住民評議会を設置することが義務付けられている。ボローニャは現在9つの地区でそれぞれの評議会がある。議員は無報酬だが、住民の直接選挙で選出され、事務所と事務職員には市の予算がつく。都市計画、地域整備、交通、公衆衛生、青少年問題、学校、マイノリティ、独居老人等社会的弱者の問題など、地域に即した行政課題について審議、計画するとともに、教育やスポーツ、住宅などの公的(公営)施設の運営なども手がけている。歴史的市街地区におけるファサードなど外観を保存しながら建築物の内部を修繕・刷新する「保存的開発」などが行われてきたのも、こうした評議会の力が大きい。

・イペルボーネ市民ネットは、ボローニャという都市が文化的歴史的に積み重ねてきた「公共空間」を形成していこうという社会的意志の表現と思えてくる。

・レピーダというプロジェクト:エ・ロ州を構成している340余りのコムーネ(市町村)すべての行政機関、医療、教育など社会的サービス機関に光ファイバーを中心とした高速ネットワークへのアクセス環境を整備しようとするもの。2006年末に完成予定で、93%の人口をカバー、残りの山岳部などは、衛星やHDSL。

・日本では、再封建化が懸念されており、「市民社会として」という観点が重要。

・近代社会は、市民一人ひとりが民主的に制度をつくりあげ、「公」という秩序を形成する理念に基づいている。近代社会の形成過程においては、市民が負担を共有して社会的インフラ、公的空間(道路、通信・・公園、教育・・)を創出し、便益を共有してきた。

しかし、近代社会が成熟するにしたがって、公的空間は、既得権益、非効率と批判の目でみられ、民営化、市場化テストの圧力に晒されている。駅、公園のように公的空間だからこそ危険な空間と認識され、私有化され、所有者を明確にし、監視の対象とすることで秩序形成が行われると考えられるようになってきた。≒社会的空間を私有化すること=再封建化

・第三イタリアの取り組み:単に行政が住民にサービスを提供するという形ではなく、公的空間を形成していく意図を官・民を問わず、市民として共有していくことの重要性、そうした意図に促されて発展する情報社会における市民権こそ社会的サービスのプラットフォームとして機能するのではないか。

木村さんの着眼は良いと思う。しかし、読んでいて、再封建化=公的空間の私有化というのに、違和感を感じてしまった(言葉的に正しいとして)。というのは、私のなかのイメージとして、「再封建化」という言葉を聞いた時に、お上が個人を支配するというように読み取れたからだ。市役所などは、本来市民のサーバントなのだが、人々の深層心理には、江戸時代のお上のようなイメージがあり、市長はお殿様、市役所職員は武士というアナロジーがぬぐえない。現在、電子政府に反対している意見の多くも、個人情報が漏洩するという言い方をしているが、戦争時代のように、個人が管理されるというような認識があるように思えるからだ。

明治時代には、まだ混沌としていたこや江戸時代の気風の名残があって、それぞれの町の有志や成功者が町のインフラを整備してきた。ベンチャー気風もあった。ところが成熟化するにつれて、お上(行政)に委ねてしまい、自分達が公共空間をつくりあげるという意識がなくなった。これは面倒ではないので良いのだが。我々もただ不満をブーブー言うだけで、自ら汗をかいて改善しようとは思わない。行政はブーブー言われるのは嫌なので見せないようにする。一方で、我々は監視もしないので、行政はやりたい放題のようなところがあり社保庁のようなことにもなる。江戸時代には、実際もっと潔癖だったと思うのだが、水戸黄門の世界のような政治と金と行政になってしまっている。

これは一つには、サラリーマンになってしまい、地域は女子供だけになったことにもよっている。サービスを受けるだけの人。自分達で町を考える第一次産業や地元中小企業群がいなくなってしまい、商店街もなくなり、坊主も葬式だけの役割になりというように、地域の共同体を支える人々が居なくなってしまったのでしかたがないとも言える。

「公的空間の私有化」なのではなく、公的サービスをただ受けるだけと認識していることが問題。公的空間を自分達がデザインする(汗もかくが)という認識が失せている。誰もやらないので市役所がやってしまう、さらには、中央官庁が決めてしまう(お上が住むところのデザインも決める)。本来主人公であるはずの市民に虚無感がある。もちろん汗をかくのが面倒ということもあるが、その手立てがないと思っている。(選挙か、コネで政治家に頼むかぐらい・・これは特殊な人々、逆にただ反対するだけの野党)政治とまでいかなくても、自分達の公的空間をどうするかという一番身近な問題について、多くの市民は足がかり、手がかりをもっていない。

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