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May 29, 2008

地域再生システム論

御園慎一郎・大前孝太郎・服部敦編著『地域再生システム論-「現場からの政策決定」時代へ』2007年東京大学出版会という本が出版されており、本と同名の講座が全国の大学で実施されている。

この本は、昨年度、唯一私の授業を受けてくれた内閣官房の木村さんから紹介されたので、彼も文章を書いているのかと思ったら、著者名には名前がない。しかし、全国の大学で実施している「地域再生システム論」というタイトルの授業の仕掛け人は、木村さんらしい。

この授業は、地域再生には、大学(特に地方)が地域の拠点となれるのではないかとの考えから、最初に北陸先端科学技術大学で実施され、10くらいの大学に広がり、これをもっと広げていきたいと考えているらしい。法政大学でも昨年から講座を持っている。

講座の内容は、地域ごとに(大学ごとに)異なっているようだが、学生だけでなく、地元の有志も無料で講義を受けられる。ただ、先日の発表会の様子では、10数回の講義のうち、半分くらいは、中央官庁の役人が、それぞれの持っている施策について説明するといった内容になっている。残り、地域の課題を挙げてそれを絞り、ワークショップなどを開催しているようだ。早くからやっている北陸先端大学では、ようやく一歩進んで、具体的な地域の課題に大学が知恵を貸す(確か、能登の漆産地の問題だったように思う)とのことだが、聴いている限りは、やらないよりは良いが、なんだこりゃという程度のものであった。

中央官庁の役人が地方の多様性について勉強する、あるいは大学の先生が地元のことについて勉強する最初のきっかけ程度にしかみえない。地域貢献をしなければならないが、どうしてよいか分からない大学にとって、メニューを与えられるので飛びついているのかもしれないが。

一方、この本の方は、第一章の構造改革特区制度で、縦割りの法制度を内閣官房が盾になって特区として認められるよう骨を折ってきたかということが書かれており、ここは面白い。

→特区は、危機的な財政状況の中、財政出動による経済活性化ではなく、規制改革による経済活性化を命題としているというのは、整理されてみると納得である。

→特区で希望している法制度改革がなかなか進まないという苛立ちがある一方で、特区は、本来、特区を起爆剤にして、全国にも法制度を改善することを目指していたはずなのだが、そうなると、特区としての優位性が無くなってしまうので、先に特区で始めた地域から反発が起こるなどの問題が出てきている。

→提案数が減少しているのだが、これは、地元の声を聴いて、どのような法制度を改革したら可能なのかについて、交通整理をして、所管官庁に説得的な提案をする必要があるのだが、これが不十分という認識が示されている。

特区にはじまった「現場からの政策決定」という流れは、最近の内閣官房地域活性化統合本部の政策にもつながっている。地元がやりたいことを具体化するにあたって、多様な法制度の読み込みなどの手助けをするために、ブロックごとに担当官を決めたのも、こうした流れなのだろうと思われる。

この本は、地域再生に関する制度についてどのような経緯で、どのような法制度が作られてきたかが書かれており、うち、2部の地域再生制度とファイナンス・人材のファイナンスが気になる。

税制措置として、「地域再生に資する民間プロジェクトに対する課税の特例」H17年~、「再チャレンジ支援寄付金税制」H19年~が乗っている。

また、第6章 官民連携と地域密着型金融では、いくつかの地域密着型金融の事例が掲載されているものの、アメリカで実施されているようなコミュニティ再投資法のような政策提言は書かれていない。

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