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March 31, 2009

このゆびとーまれ

地域福祉を住民自治のきっかけとして考えるにあたって、富山の地域共生について見ておこう。

その先駆的事例が前の前の記事で紹介したように、このゆびとーまれのようなので、HPより、ここの歴史をコピペする。

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「このゆびとーまれ」は富山赤十字病院を退職した3人の看護婦により、平成5年に開所しました。
その中の一人、惣万は「病院で看護婦として働いていることの限界を感じた。」と当時を振り返っています。病院でいくらお年寄りの命を助けても、最後の場面で「家に帰りたい」「畳の上で死にたい」とお年寄りが泣いている場面をたくさん見て、そういったお年寄りたちを助けるために「このゆびとーまれ」を設立することにしました。

また、惣万は以前訪れた老人ホームで、まるで生きる気力を無くしているかのようにお年寄りたちが全く話もせずに一日を過ごしている姿を見て、どこか違和感を感じました。
惣万は「子供といっしょに笑ったり、怒ったり、歌をうたったりすることはどんなリハビリよりもよい。子供がいればリハビリなんてする必要がない。」と言っています。

「このゆびとーまれ」のように、「赤ちゃんからお年寄りまで、障害があってもなくても一緒にケアする活動方式」と、「行政の柔軟な補助金の出し方」を併せて「富山型」と呼びます
この、本当の意味でのノーマライゼーションである「富山型」は福祉関係者の共感を呼び、富山はもちろん、滋賀、長野、愛知、徳島、熊本、佐賀へと全国へ広まりつつあります。

<12年のあゆみ>

平成5年7月2日
  民営デイケアハウス「このゆびとーまれ」開所(富山県内では初めての民間デイサービスの開所となる)
平成5年10月
  「'93とやまTOYP大賞」を受賞(魅力ある富山(まち)づくり部門)
平成6年
  第1回NHKふるさと富山大賞を受賞
平成8年7月
  「在宅障害者(児)デイケア事業」の委託を受ける
  (障害児をもつ親たちが「このゆびとーまれ」が指定業者になるようにと署名運動をし、1週間で100人の署名を集める)
平成9年4月
  富山民間デイサービス育成事業から補助金の交付を受ける(対称はお年よりだけで、5人程度の利用者なら年間180万円の補助金)
平成10年4月
  富山市民間デイサービス育成事業の対象が緩和され、補助金の交付を受ける(お年よりと障害者(児)を合せて10人程度の利用者であり、360万円の補助金)
  ※「このゆびとーまれ」の活動に合わせ、県(市)がお年よりと障害者(児)の壁を取り払った柔軟な補助金の出し方が、後に「富山方式」といわれる
平成10年7月
  文集「おかげさまで満5歳になりました」を出版
平成10年10月
  「富山県民間デイサービス連絡協議会」が発足(会長/惣万佳代子)
平成11年5月
  「特定非営利活動法人このゆびとーまれ」の認証を受ける(富山県第1号のNPO法人となる)
平成11年10月
  グロッカルゴールデン基金を受賞
平成12年4月
  介護保険の指定業者に指定される(通所介護・居宅介護支援事業者)
平成12年7月
  生きがい対応型デイサービス事業を富山市から委託される(「このゆびとーまれ」の隣の家で開始)
平成13年10月
  「タウンミーティングinとやま」で「共生型」を提案する
平成13年12月
  中日社会功労賞を受賞
平成14年7月
  内閣府国民生活局「未来生活懇談会」のプレゼンテーターとして「共生型」を提案する
平成14年11月
  「笑顔の大家族 このゆびとーまれ~「富山型」デイサービスの日々」(惣万佳代子著・水書坊発行)を出版
平成14年12月
  「日経ウーマン・オブ・ザ・イヤー2003」で総合2位を受賞
平成15年9月
  「第1回地域共生ホーム全国セミナーinとやま~富山型デイサービスの10年とこれから~」を開催
平成15年9月
  10周年記念写真集「ともに」を出版
平成15年10月
   ボランティア活動推進富山県民会議会長賞受賞
平成16年5月
   富山市茶屋町にデイサービスとショートステイとグループホームの3つの機能を持つ「このゆびとーまれ茶屋」をオープン
平成16年10月
   毎日新聞「毎日介護賞」を受賞
平成17年4月
  富山市富岡町にデイサービス「このゆびとーまれ向い」をオープン
平成17年9月
   「内閣府総理大臣賞」を受賞
平成19年8月
   宅老所・グループホーム全国ネットワーク代表・世話人(惣万)

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上記赤字のところが、「富山型」のようです。

富山県のHPによると、平成15年11月に「富山型デイサービス推進特区」に認定され、介護保険指定のデイサービス事業所に障害者も通えるようになった。これが平成18年10月には、全国に展開されるようになった。平成18年には、小規模多機能型居宅介護事業が創設されたことにともない、7月には、「富山型福祉サービス推進特区」の認定を受け、障害者も、デイサービスに加え、宿泊サービスを利用できることになったとのこと。

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March 30, 2009

地域密着型サービス

個人的な話だが、母の介護をしていて、不自由だと思っていたことが、宅老所や06年から導入された地域密着型サービスでかなりの程度解決されるものだということを知った。

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母は、年齢相応の物忘れはするが、いわゆる認知症ではない。ただ、昔から足が不自由なので、転びやすい。椅子、手すり、ありとあらゆるものにつかまって何とか自宅内を歩いている。自分のことは自分でやりたいと思っており、顔も入れ歯も自分で洗うが、立っていられないので、片方の手で体を支えながら、顔を洗ったり、お湯を汲んだりしている。

いくつになっても、また自分が被介護者であるにも係わらず、娘である私が外出すると怪我や事故に会うのではないかと心配し、外出する日は、遅刻するのではないかと朝早く(というか夜中)から起き出して、送り出そうとする。また、私が母の世話やら家事で手一杯だと、自分も家事を手伝おうとする(お湯を沸かしたり、茶碗を用意するなど)。危なっかしいのだけれど、それが意識をはっきりさせ、身体にもリハビリになっているので、見守りながらやってもらっている。

おもらしではないのだが、便意をもよおしてからトイレに行くまでに足が動かないので間に合わず、私に下の世話をさせることになる。これをヘルパーさんなど他人にやってもらうのは恥ずかしいと嫌がる。脱腸の手術をしたので、便秘がちであり、薬を飲んでいるのだが、いつ便意をもよおすか分からない。

こんな状態なので、いわゆる認知症の高齢者、それも姑という関係に比べれば幸せな部類なのだろう。

しかし、外出した時に限って、転んで気を失い、その後しばらく意識が混濁していたり、お湯をわかそうとしてガスの火が着物に移り、やけどをしていることがしばしばある。このため、安心して出かけられない。

  • 私が外出中はガスを使わないように言い含め、またガスのセンサーも取り付け、ガスコンロも15分経つと火が消えるものに変えた。
  • 外出の折には、ヘルパーさんを依頼し、食事時間が含まれる場合には、温めるなど配膳を依頼した。
  • クルリモという遠隔地から携帯電話のテレビ電話で自宅の様子をチェックできる仕組みも導入した。

しかしながら、私が依頼している事業者では、ヘルパー要員が少ないらしく、定期的に外出が決まっている場合は、やりくりしてもらったものの、不定期だとそう簡単に依頼できない。夕方の時間帯には、訪問サービスをしていないので、夕食の時間帯については、別の事業者に依頼している。留守に来てもらうので2ヶ所に鍵を預けなければならないという問題もある。

また、母は、ヘルパーさんという他人が来るとなると、早めにベットから起き出してトイレを済ませ、良い顔をしてしまう。トイレ介助などヘルパーの本業なのだと言っても、恥ずかしいからと数時間前からきちんと一人でやろうとする。ベットから起きたり、寝たりというのも実はしばしば転んで危ない。まぁ転んでも、ヘルパーさんを頼んでおけば、そのうち訪ねてくるので早めの対応ができるから良いのだけれど。

このため母にしてみれば、ヘルパーさんが来ると却って疲れるので、来るのを嫌がる。結果として、私が外出するのが悪いということになってしまう。ヘルパーさんが来るのがよほど嫌らしく、寝ぼけては、今日は来る日かと毎日のように聞いてくる。

良く寝入れば紙おむつをして朝まで寝ているのだが、夜中に目を覚まし、トイレに行くこともあり、時には転ぶこともある。このため、私が居る時には、2階に電波を飛ばして音や声が聞こえるようにしている(もっとも私も寝入っていれば分からないときもあるのだが)。このため、宿泊を伴う出張は、全くできなくなってしまった。

介護保険によるサービスでは、介護者がくたびれないよう、息抜きができるようにと、デイサービスやショートステイが用意されている。しかし、母のように自己中心的な人は、高齢者ばかり、見知らない人ばかり、チイチイぱっぱのお遊戯などはしたくないと思っており、こうしたサービス利用を嫌がる。まして、全く知らない場所への宿泊は受け付けない。

もっとも、私が、ずっと仕事についていて、どうしても外出や出張せざるをえない状態であれば、母を説得しようとするかもしれない。しかし、丁度仕事を失っており、どうしても仕事をしなければならない状態ではないこともあって(自分では、もうひと仕事したいとは思っているものの)、無理やりデイサービスやショートステイに行ってもらいにくいのだ。

母が入院し、退院するにあたって、当時は私がまだ仕事をしていたこともあり、介護老人保健施設を紹介してもらった。しかし、見学に行ったものの、パジャマを着て、無気力に過ごしている人たちを見て、やはり入所をためらってしまった。

実際、病院に入院中は意識も朦朧としており、食欲も全くなかったのだが、退院し自宅に戻ったら、めきめきと回復した。ちょうどやっていた仕事に行き詰まり、母を保健施設に入れてまでやり続ける仕事と思えなかったこともあって、仕事を辞めて、自宅で介護する生活に入ることになった。

しかしながら、母の様態が良くなってくれば、私にも欲が出てきて、少し働きたくなる。様子を見ながら少し復帰してみると、前述のように、火傷や転倒ということになるのだ。

そこで、介護サービスを受けることにしたのだが、母の状態や意向と受けられるサービス内容とにギャップがあり、結局、私の行動の自由は非常に限られたものになってしまっている。不自由はしかたがないのだと諦めていたのだが、世の中に宅老所があることやそれを受けて06年に地域密着型サービスが導入されたことを知り、なんだ、これがあるなら、ずいぶん助かるのにと思った次第だ。

宅老所のように、自宅のすぐ近くにあって、元気な頃から遊びに行きつけている仲間が居て、自分の日常の延長線上で見守られながら自分でもやれることがある場所で、たまたま今日はお泊りをするということが可能なら、お泊りへのバリアがずいぶんと低いはずだ。

また、夜間対応型訪問介護サービスがあるなら、自宅に居ても、私が出張などに出かけやすくなる。

私が住んでいる市では、大規模な老人福祉施設や地域密着でも認知症対応のグループホームはあるが、いわゆる宅老所のようなサービスや夜間対応型訪問サービスは提供されていないようだ。志のある人や介護に従事する人が居なければ、仮に市が音頭を取ったからといって始まるものでもないだろう。

また、東京都や西東京市は、富山県や佐賀県のような地域共生ケアに取り組むといった対策を打ち出しているようにもみえない。

もっとも、いくら宅老所があっても、現在の施設と同様、急に、そこには行きたがらないだろう。元気な頃から行きつけていたり、友達も行っているというなら別だけれども。

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つい数年前まで、私の家が宅老所のようだった、朝から晩まで、ひっきりなしに、近所の高齢者が遊びに来ており、母の足が悪いので、自分たちで勝手に茶碗を出したり、洗ってしまったりしていた。お菓子やおかずは、いろいろな人が持ってきてくれていた。

あのまま自宅を開放して、宅老所になっていたら良かったのかもしれない。

しかし、母が入院し、退院後も疲れやすくなり、一日の大半を寝ているようになったこともあり、チェーンのように次から次へとお客が来るのを断ってしまった。また、私も同時に足の手術をしたこともあり、身体が不自由になったため、近所の付き合いを最小限にしてしまった。

私自身、ご近所と付き合うのに慣れていなかったので、「くだらない世間話」に付き合うのが嫌だったのだろうと思う。母も私が自宅に居るようになってみれば、部外者が入ってくるのを嫌がるようになってしまった。

私が地域に根を下ろすことを覚悟し、自宅を開放して、いろいろな人が出入りするようにすれば、私も少しは社会的な活動が出来るようになり、母も私が家にさえ居れば、許してくれるのかもしれない。

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この記事は、私の個人的なことと、宅老所のような地域密着型サービスのこととがまぜこぜになっていておかしいが、とりあえずメモっておく。

私が何故、宅老所にこだわるかというと、①個人的に自由を得るのにこういうサービスがあったら助かるのにということのほかに、②なんだ、私が母に対してやっていることは、宅老所が提供しているサービスと非常に似ているのに驚いたこと(つまり、娘が母親にやっているようなきめ細かいサービスが世の中で提供されているということ→公的サービスなので不自由さはしかたがないと思っていたが、そうではなかったこと→ニーズから発想してこういうサービスを始めた先駆者がいたということ!)、③住民自治などを考えていてその最小単位は、小学校区かさらに自治会・町内会くらいではないかと漠然と思っていたが、宅老所などをやっている人たちがリアルにそうした単位で活動してきたことなどによる。夕張希望の杜の村上先生が、医療・予防・健康という地域の安全保障を地域づくりに位置づけるべきと言っており、そうだなぁと思っていたが、宅老所(福祉)もまさにそうだと思えたことである。

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宅老所

前の前の記事で宅老所のことを紹介した。私にとっては、耳新しい言葉だったので、新しいサービスなのかと思ったら、そうではなく、むしろ、介護保険制度が出来る前から、大規模型の特養に疑問を感じたり、地域のニーズにともかく応える形で始まっていたサービスらしい。

多くは、民家などを活用し、家庭的な雰囲気のなかで、一人ひとりの生活リズムに合わせた柔軟なケアを行っている。

たとえば、自宅で暮らしているが、昼間は宅老所に遊びに来ていて、介護している家族が旅行などをする場合には、宿泊することも可能である。いつも行きつけの場所で、顔見知りのヘルパーがいる場所なので、急にショートステイすることになっても、利用者が不安を感じないですむ。必要であれば自宅への訪問サービスも行う。なかには、長期の入所を実施しているケースもある。また、介護される人がお客様ではなく、たとえば一緒に買物に出かけたり、食事づくりを手伝ったり、やれる人がやれることをする。

公的な制度ではなかったこともあって、地域の事情や一人ひとりの状況に合わせて必要なサービス(結果としてデイ、ショート、長期、訪問など多機能)を柔軟に提供してきた。

こうした実績があったことから、06年の介護保険制度改革の折に、宅老所がやってきたサービス内容が、地域密着型サービスとして制度に導入されるようになったようだ。また、大規模な特養でも、ユニットケアとして、少人数を担当のヘルパーが担当する方式が取り入れられることとなった。

現在では、宅老所の多くは、介護保険制度を活用して、デイサービスについては、保険適用を受け、一方、長期入所については自主事業として実施するところも多い。06年の介護保険制度改革によって設けられた29人以下の小規模多機能型居宅介護については、制度に乗ったところと、乗っていないところがある(乗らない理由としては、他市町村の利用者がいる、制度に縛られ柔軟なサービス提供がしにくいなど)。

宅老所・グループホーム全国ネットワークもできていて、情報交換や提言などを行っている。

上記ネットワーク代表世話人の川原秀夫氏が厚生労働省の委員会に提出した資料によると、先駆的な事例が挙げられている。

・1987年:出雲ことぶき園:梶谷和夫氏

地域密着・小規模・多機能型老人ホームとして開設。公的制度が全くないなかで、民間の非営利団体として、呆け老人をかかえる家族の会島根県支部等の後援を受けて開設したとある。

園長の槻谷和夫さんは、以前は100人規模の老人ホームに勤めていたが、お年寄り1人1人の名前も覚えられない大きな施設では、人間らしいお世話はできないと感じ、ことぶき園を開設したとのこと。

・1991年:福岡宅老所よりあい:下村恵美子氏

・1993年:栃木のぞみホーム:奥山久美子氏

また、前の前の記事で佐賀県が地域共生ステーション(宅老所・ぬくもいホーム)推進事業をやっていると紹介した。

この事業について説明したHPによれば、「子どもから高齢者まで年齢を問わず、また、障害の有無に関わらず、誰もが自然に集い、住み慣れた地域の中で安心して生活していくことができるよう、様々な福祉サービスを、地域住民やCSO(市民社会組織)、ボランティア等が協働し、支援していく地域の拠点である地域共生ステーションの整備を支援します。 」とある。

なお、CSOとは:Civil Society Organizations(市民社会組織)の略で、NPO法人、市民活動・ボランティア団体(以上志縁組織)に限らず、自治会・町内会、婦人会、老人会、PTAといった組織・団体(以上地縁組織)も含めて「CSO」と呼称しているとのこと。

こうした考え方を取り入れている宅老所も多いらしい。この先駆的試みは、富山県とのこと。このゆびとーまれが有名らしい。

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March 29, 2009

分かりにくい老人福祉施設

前記事で、介護施設についてウロ覚えで書いたので、この際、きちんと調べておこうと思ったが、これがことのほかやっかいだった。

まず、「介護保険法」による施設サービスを行う施設に3種類あって、①介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)、②介護老人保険施設(リハビリをして自宅等に戻れるようにする)、③介護療養型医療施設(療養型病床群など)がある。

介護保険は、加齢に伴って体の機能の衰え、日常生活に支障が生じた人に、その能力に応じて自立した生活が送れるように、介護サービスを支給する新たな社会保険制度(平成12年4月より実施)なので、提供されるサービスという観点で整理されている。基本は、居宅サービスで、それが適わない場合、施設サービスが支給されるという考え方のようだ。

居宅サービスというのは、在宅介護を支援するもので、ヘルパー等が自宅等に訪問する訪問サービス、自宅等から老人福祉施設に通って受けるサービス(通所リハビリ、デイサービス) 、短期的に施設に入所するサービス(ショートステイなど)がある。「居宅」には、自宅で暮らしている人だけでなく、軽費老人ホームや有料老人ホームで暮らしている人も含まれる。

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当面の関心は、広義の「老人ホーム」である。自宅で暮らせなくなった場合、どのような施設に入ることができるかだ。

「老人福祉法」に基づいて設置される高齢者の福祉を図る施設として老人福祉施設と総称されるのがあって、これには、①老人デイサービスセンター、②老人短期入所施設、③養護老人ホーム、④特別養護老人ホーム、⑤軽費老人ホーム及び⑥老人福祉センターの6種がある。

このうち、①と②は、介護保険の居宅サービスを提供する施設であり、⑥は、相談や健康の増進、教養の向上及びレクリエーションのための便宜を総合的に供与することを目的とするとのことで「老人ホーム」ではないので外す。

「老人ホーム」としては、上記の③養護、④特養、⑤軽費の3つであり、③の養護老人ホームというのは、経済的な問題などから一人で暮らせない人を入所させる措置制度であって、介護保険の対象とはならないとのことである。⑤の軽費老人ホームには、A型(給食サービス付き)、B型(自炊)、ケアハウスの3タイプがあり、上述のように介護保険制度では「居宅」として扱われる。

施設に入居して介護サービスを受けるという意味では、④の特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)となる。

このほかに、「老人福祉法」に基づかない有料老人ホームがあり、上述のように、「居宅」サービスとして介護保険が適用される。

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ところで、前記事に「宅老所」について触れたが(これについては別途もう少し詳しく述べる)、宅老所の先進事例から、住み慣れた地域で自立して暮らしていけるよう地域に密着したサービスが必要であるとして2006年の介護保険制度改正により、「地域密着型サービス」が追加された。

それまでの介護保険制度によるサービスを都道府県が指定・監督を行うサービスとし、あらたに市町村が指定・監督を行うサービスとして「地域密着型サービス」が追加された。

前述のように、介護保険制度は、支給されるサービスで整理されており、「地域密着型サービス」もサービス内容で整理されている。すなわち、①小規模多機能居宅介護、②夜間対応型訪問介護、③認知症対応型通所介護、④認知症対応型共同生活介護、⑤地域密着型特定施設入居者生活介護、⑥地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護である。

①小規模多機能型居宅介護の「多機能」と言う意味は、基本は居宅支援であるが、利用者の状態に応じて、通所・宿泊・訪問サービスを柔軟に提供するという意味である。④は、グループ・ホームと呼ばれる共同生活を支援する。⑤の「地域密着型特定施設」とは、有料老人ホームのうち定員29人以下を、⑥の「地域密着型介護老人福祉施設」とは、特養のうち定員29人以下を指している(30人以上は、都道府県が指定・監督する)。

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つまり、仮に私が高齢になり、介護が必要になって施設に入りたいと思った場合の選択肢としては、

①有料老人ホーム(定員30人以上、29人以下)に入って「居宅サービス」を受けるか→入居が高額の場合が多い

②軽費老人ホームに入って「居宅サービス」を受けるか→資産の多寡で入居が決まる

③特別養護老人ホーム(定員30人以上、29人以下)に入って「施設サービス」を受けるか→待機がすごい

④リハビリをして自宅で暮らせるように介護老人保険施設に入るか→実際には、特養待ち、たらい回し

⑤介護療養型医療施設で療養するか→寝たきり化→2012年に廃止の方向

⑥グループホームに入所して共同生活をするか→介護度が高まると難しい

ということになる。

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March 23, 2009

介護施設の炎上

群馬県の介護施設が炎上し、いろいろなことが明らかになってきた。

1.届け出ていない有料老人ホームだった。

2.身寄りのない生活保護受給者が対象だった。

3.墨田区に住民票がある人がかなりの程度入居していた(墨田区の生活保護を受けていたのだからたぶん)。

実際、介護保険で入居できる特別養護老人ホーム等は少なく、長く待たなければならないし、身寄りのない人が多いらしいので、墨田区としては、どうしてもどこかに入居させざるをえなかったのだろう。

この事業者が本当に身寄りのない高齢者を面倒みたいと思っていた志のある事業者なのか、生活保護費などを狙った悪徳事業者なのか分からないが、ニーズがあるのに優良なサービスが提供されていない分野で、ある意味、「有難い事業」だったに違いない。

厚生労働省もこういう施設があり、東京など他県からの入居者を受け入れていることは把握していたらしいので(テレビ朝日)、見てみぬ振りをせざるをえなかったのだろう。

現在、老人保健施設(リハビリのため3ヶ月入居できる)でも、実態は在宅と行ったり来たり、あるいは転居しながら長く入居している人は多い(厚生労働省の調査で230日)。要は、特養が空くのを待っているのだ。

2012年には、医療保険制度の改革で、療養病床の再編が行われる。これは、医療必要度の低い人が入院を続ける「社会的入院」の解消のため、38万床ある療養病床について、2012年度までに介護保険適用の13万床を全廃、医療保険適用の25万床を15万床に削減するというもの。削減対象の療養病床は、老人保健施設や有料老人ホームなどに転換するとされている。

実際の姥捨て山状態の人は何人くらいいるのだろうか。

社会的入院を解消させる、福祉を施設型から在宅型に変える・・この方向は間違っていないと思うが、現状では、在宅を支援するサービスが不十分である(人手不足)。そうかといって、現在の1割負担でも、サービスを多く利用すれば家計的にやりきれない。

消費税を上げるでもよいし、公共投資から福祉へ財政支出をもっと移すでもよいし、完全雇用を実現して家計余力を増やすでもよいし、あるいは、地域の扶助を高めるでも良いけれど、経営資源の再編集(イノベーション)が不可欠である。

佐賀県は、県立の老人福祉施設を民営化したり、宅老所・ぬくもいホーム事業を推進したりしている。この動きは興味深いが、火災などの問題については要検討かもしれない。

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March 21, 2009

イノベーションの意味

このブログには、「イノベーション」というタイトルをつけている。

頭では、イノベーション=新しい枠組みの提示と整理したのだが、今ひとつ自分で納得がいっていない。

日本では、さまざまなまちおこし、地域活性化、地域再生などといわれる事業が行われている。どれも、すごいなぁと思う。これらと、地域イノベーションは、同じなのか、違うのか、どこがどう違うのか。どれも頑張っているんだからそれで良いじゃないかとも思えてくる。何もしないでウダウダしている私に比べたら、どの事例も、どの担い手も動き、汗をかいている分、はるかに立派である。

先日思いついたのは、お金がない、人がいない、制度に阻まれるなど、これまでの方法で考えていたのでは、ニッチもサッチもいかない、しかし、やらなければならない現実がある(強いニーズ)。こうした場合、新しい方法を考えざるをえない。これがイノベーションなのではないかと思えてきた。

実際に活動をしている人にとっては、自分たちの活動がまちおこしであろうが地域イノベーションであろうが関係ないとは思う。

しかし、閉塞感やあちこちニッチもサッチもいかないなかで、やはり、起爆となるようなイノベーションが欲しい。そこで、やっぱ、「イノベーション」といえるものを探し続けてみようと思う。

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スウェーデン方式の適用

テレビ朝日が日本の手本の一つとしてスウェーデンを特集していた。要点をメモっておくと;

1.人口900万人と少ないので、完全雇用(女性もできるだけフルで働く)にして経済発展しようと考えている。

2.そのために、子供にかかる費用(大学まで教育費が無料、医療費もかからないか安い)を国が負担し、育児休業が確か15ヶ月で給料の8割支給(13ヶ月まで、その後は75%)がなされる、父親も年間65日休みが取れるなど子供を生み育てるための環境を整えている。

3.医療は、年間?月間?上限があり、1万5000円(ウラ覚え)以上。町の駅などに隣接して病院がある。病気のため休職しても、給与の7割(ウラ覚え)が支給される。治ってきたら、見習い?として体を慣らし、よかったら就職するとのこと。何時間も待って、3分診療などをしたら、訴えられてしまうとのこと。

4.年金は、支払い不足やまったく支払っていなくても、最低の給付が受けられる。

5.要介護の高齢者はそうした人用の住宅に住んでおり、一日に5-6回ヘルパーが来て、食事などの面倒を見てくれる。子供たちに迷惑をかけたくないので、この生活に満足しているとこのこと。

インタビューでは、将来への不安がないので(何かあった折には、国が支援してくれるという安心感があるので)、貯金などはあまりしないという。その代わり、税率が高い(が、食料品はそれほど高くないとのこと)。

6.こうしたことが可能なのは、政府への信頼があるから。議員の給料は、800万円程度(日本2200万円)、運転手つきの自動車もないし、スタッフも限られており、議員宿舎もビジネスホテル程度がわずかに用意されている程度。情報公開がなされている。

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きちんと調べていないが、テレビの報告は以上のようなものであった。

実際、人手不足が言われているが、日本は、女性や高齢者などを活用せず、もったいない使い方をしている。女性の自負心をくすぐりながら働かせているのは、創価学会くらいだ。昔は、農村などだったから、女性の地位が低いなどの問題はあったろうが、皆働く場所(役割)があった。商家でもそうである。「奥様」は、武士の家くらいだろう。

女性や高齢者を本気で活用するなら、出産・子育て、介護に対する人手を大幅に増やさなければならない。逆に言えば、この分野の産業をもっと活性化する必要がある。単に保育や介護する人を増やすということではなく、多様なサービス(安全センターがやっているようなサービスや駒崎さんのサービスなど)や機器開発も含まれる。

介護保険制度をつくったからと事たらせるのではなく、多様なサービスの開発・提供が起こるようにしなければならない。本来、制度や法律はあとからつくてくるものである。必要なニーズにプリミティブに応えていくなかから新しいサービスが生まれる。介護保険制度が出来、個人負担が少ないため新しい産業が生まれたが、逆に言うと、たかり風(革新がなくなる)になってしまっているきらいがある。

現在、ワークシェアリング議論が盛んだが、フルタイムの雇用を分け合うという貧乏たらしいのではなく、眠っている能力を活かす、プラス志向での仕事づくりが必要である。

たとえば、一次産業のマーケティング、大学院の教授(地域政策などの新しい境界分野では、むしろ働いて得られたものの見方などを教授できる人材が求められている。これは子供の教育にも言えるのではないか)、女医の再復帰などなど、眠れる能力を活かして、かつ時間的空間的な多様な働き方ができる環境づくり。

団塊の世代前後は、現在親の介護で時間を取られ、さらに仕事もできない状態である。これは、介護施設はない、介護サービスは限定的なことからきている。一日に6回程度訪問介護してもらえるなどのサービスが充実すれば、もっと現役で働ける人材は多いはずだ。

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