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June 04, 2009

グローバル化による地域経済のリスクをヘッジする

グローバル資本主義の下で地域経済はどうしたらよいのだろうと考え、ネット検索をしたら、東北大学の赤松隆教授が2004年に土木計画学研究発表会で報告したパワーポイントを見つけた。

「グローバル化の進展とローカル経済リスク-空間経済におけるグローバルとローカル」というタイトルで、最初にグローバル化とグローバル市場経済システムについての説明がある。

・グローバル化:ヒト・モノ・カネ・情報の世界的な流動化現象⇒世界規模での地域間の相互結合/依存性が強化される

・グローバル市場経済システム:グローバルにリンクした市場が形成され、生産要素(特に、資本と労働)が市場原理に基づき、障壁なしに流動する経済システム

そして、グローバル資本主義の経済学的問題点を挙げている。

・不安定性:たとえば、通貨危機、産業構造の急変⇒雇用(失業者増加)問題、貨幣価値(信用)の崩壊リスク、社会・文化的価値体系の破壊リスク

・不平等性・極端性:富の偏在、過度の空間的集積と過疎(空間経済学における「Core-Periphery」理論)

こうした下で、個人や地域が負うリスクについて空間経済学的に整理している。

・国家:グローバル基軸通貨の貨幣価値崩壊リスク/ハイパーインフレリスク

・地域・都市:グローバル地域間競争に伴う地域の産業特化戦略と産業構造変化によるリスク

・都市・企業:グローバル市場の市況変動にともなう企業の適応行動(立地・撤退など)によるリスク

・不動産市場:グローバル金融市場の発展に伴い、過度に流動化した資本移動に起因するミニ・バブル(アメリカの不動産市場、通信市場など)

そして、「immobile」な個人は、国や地域や産業などが受けるブローバル経済リスク(個々人の自己責任だけではヘッジ不可能なリスク)を直接被弾するとしている。

地域の産業特化戦略について、最近の空間経済学理論の教えでは、小都市は、地域特化/産業特化戦略ととるべき(とらざるをえない)と述べている。

古典的な地域経済学の処方箋としては、複数の産業を誘致するなど、ポートフォリオによるリスク分散が言われたが、グローバル化した(生産要素の自由な移動がある)なかでは、特化せざるをえない。しかし、これはまた、グローバル経済のリスクにさらされることになる。

以上の様な認識のうえで、赤松先生は、「グローバル経済リスクから地域システムを守るための社会的スキーム(仕組み)を開発できないか」と考えた。先生は、上記のいろいろなリスクにそれぞれ対応して、いくつかのヘッジシステムを提案しているのだが、パワーポイントでは、項目だけ並べられているので、良く分からない。

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そこで、先生のHPを探し出し、2つの論文を見つけた。これは、上記のリスクのうち、グローバル企業の参入・撤退に伴う地域経済リスクについて取り扱っており、一つは、基礎的研究、二つは、地域経済リスクをマネジメントするために、金融オプションを活用したヘッジ戦略について分析している。

ゲーム理論や数式が使われており、詳しくは理解できないのだが、要は、グローバル企業を誘致することで地域経済が利益の増加を期待するものの、為替変動などにより、企業はさっさと適地を求めて撤退する可能性がある。そうしたリスクを最小限にするにはどうしたらよいかということらしい。

論文では地主となっているのを自治体に置き換えれば、自治体がとるべき最適とし政策のヒントになるという。

・企業に撤退オプションを与える場合:グローバルリスク要因の変動率が大きい場合:地方都市は、企業と参入契約を結ぶ場合に、地代(あるいは事業税)を上げておくことによってリスクをヘッジする必要がある。

・グローバル企業が立地する前に、地方都市は、なんらかの撤退規制(たとえば、立地開始時点に決められた一定の期間企業は撤退できない、あるいは撤退する場合には企業が違約金を払うといった契約)を実施すべきである。これにより、地方自治体は、撤退リスクをヘッジするために必要であった地代を下げることができ、地方都市のみならず、立地する企業側にもメリットが生じる。

・この論文では、地主が企業の撤退行動に伴うリスクをヘッジするために利用可能な戦略変数は、地代のみであったが、グローバルリスク要因と相関の高い証券を自由に取引できるなら、地主は、より効率的なリスクヘッジ戦略を構築でき、都市厚生を工場させることができる。⇒これについてはもう一つの論文。

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漠然と理解できるが、具体的にどんな金融商品を購入すればヘッジできるのか私には分からない。しかし、こうしたグローバル資本主義の下で、地域経済がどのようにリスクをヘッジすべきかを考えることが重要であることは賛成できる

また、企業の撤退によるリスクだけでなく、上記でいう不動産市場のように、「過度に流動化した資本移動に起因するミニ・バブル(ミニではないかも)によるリスクについての「immobile」な地域経済のリスクをどうヘッジするかも教えて欲しいところだ。

先生の講演資料の最後のページには、土木計画学・地域科学の課題?として次のようなことが書かれている。

・国土・地域計画の目標:貧困(物質の欠如)の解消からリスク(安心の欠如)の解消へ

・21世紀の土木計画学・地域科学の重要課題:空間的・時間的に偏在する様々なリスク(従来から土木分野で扱われてきた災害リスクに止まらず、地域経済リスク、文化・コミュニティ崩壊リスクなどを含む)を緩和・解消する社会的・地域的仕組み(物理的インフラでないソフトな広義のインフラ)を考案、分析、設計していくことではないか

これは、とても良い着眼点だ。

赤松先生は、土木計画学がご専門で、これを真正面から扱っておられないようなのが残念だ。また、数式やゲーム理論などで攻めているので、私にはちんぷんかんぷんだ。証明や政策づくりは、こうした先生にお任せするとして、上記の着眼点で地域イノベーションを考えていきたい。

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