清成先生の講演(イノベーションによる地域再生)
5月30日に開催された「地域活性化学会」のセミナーで清成先生が基調講演を行った。「イノベーション・新産業創出・地域再生-産学官連携の新段階」というタイトルだった。
1.先生は、産学官連携と言いながら、三鷹市では、民学官連携と言っているとか、非営利セクターなどの社会連携かもしれないというような注釈を付け加えていた。先生は、感度が良いから、単なる産学官ではだめで、社会連携かもしれないと思っているのかもしれないが、具体的なものは持ち合わせていないようだ。
2.しかし、基調は、石油文明による産業化が行き詰まり、イノベーションによって新産業を興すべきで、創業などにより地域再生を図るということだった。ポーターの論は大雑把過ぎると言いながら、21世紀型の手法として、産学官連携とクラスターを挙げている。
イノベーションの類型として、①既存産業技術活用型イノベーション、②科学技術駆動型イノベーション、③ニーズ先行型イノベーションの3つをあげている。
①については、日本各地の試み事例(長野「スーパーモジュール供給拠点」、諏訪「デスクトップファクトリー」、盛岡「アイカムス・ラボ(超小型歯車)、諏訪「工業メッセ」)を列記している。自動車などの要素技術や高度モジュール化など。
②については、ライフサイエンス(抗癌、再生医療など)をあげ、産学官連携拠点の形成として、ドイツやアメリカの例をあげ、また、日本のクラスター政策(経産省、文科省)を挙げている。
③については、福祉や環境分野でのビジネスモデル開発が必要としている。
そして、ドイツバイエルン州のクラスター政策を紹介し、「クラスター運営組織が強力」であるとしている。また、人財形成の重要性を述べ、①ヴィジョナリー・リーダー(構想力)、②多様なリーダーと専門家、③イノベーション人財、④連携組織運営人財(マネジメントとガバナンス)を挙げている。
ここもさすがに、感度が良いが、具体的には分かっていないようだ。
つまり、日本には、欧米とほぼ同じ仕組みは政策的には出来上がっているのだ。しかし、それが実効性を持ちえていないのは、何故か、ここを見極める必要がある。そして、何故、そうなのか、それを変革するには何が必要なのかを理解しなければ、いつまでたっても産学官連携は絵に描いた餅のままだ。
3.むすびとして、挙げているうち、良いと思ったのは、①多くの地域が挑戦する産業は画一的、②企業家の不足としている。
企業家も、地域ビジョンを描ける構想力を持つ人も、ビジョンを具体化する筋肉マンも、プロジェクトのガバナンスをしっかりやれる人やマネジメントを担う人も居ないのだ。
なお、岩手大学工学部を中心とした産学連携は上手く言っている事例としていろいろと紹介されている。先の盛岡のアイカムス・ラボもそうだ。素直に取りたいところだが、北海道の例を知っているだけに、眉をこすりながらみてしまう・・。
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