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April 29, 2010

地域イノベーションと社会イノベーション

自分で「地域イノベーション」と言っておきながら、地域イノベーションって何だろうとずっと考えてきた。

1.今日の日本において、地域イノベーションの根本は、地域の住民が自分たちの望む暮らしを手に入れるために、自ら考え、自らそれを実現することだと思う。これまでは、国が決めて、与えらてくれる暮らしを甘んじて享受してきた(もちろん、選挙はしているが、有名無実化しており、私たちは、プロの政治家や官僚にまかせっきりにしてきた)。そうではなく、自分たちで暮らし方を選び取る、作り出す。これ自体が、これまでに比べれば新しい、つまりイノベーションである。この住民が主体的に暮らしを作り出す状況をとりあえず「自律」と呼んでおく。

2.地域のあるべき姿が「自律」であるとすると、自分たちで決め、作った地域というのは、住民にとっての自信(自分たちでやれる)につながり、誇りであり、自分たちのアイデンティティとなるはずである。わが町、オラが町である。

3.「自律」は、簡単ではない。住民の合意形成は、とても難しい。軋轢も生まれる。合意形成のやり方は、その地域地域で異なるだろうが、汗や血を流してルール化されなければならない。

4.合意を形成して全体として取り組むやり方と、もう一つ、誰かが何かを始め、それが成功を収めて、皆が納得し、それがデファクトになるというやり方もあるはずだ。後者は、比較的摩擦なく、かついろいろなアイデアが出されて、競争となり、良いものが受け入れられていく。

5.「自律」した地域を作ること自体が地域イノベーションであるが、実際には、個々の課題をどうするかという段階でも、それぞれの解決方法にイノベーションがあるはずだ。個々の課題というのは、子育て、環境、医療、福祉、雇用、教育、健康、交通等々である。

6.むしろ「自律」した地域を作るにあたって、レバレッジポイントとして、個々の課題解決があるのではないか。たとえば、子育てに関することでイノベーションが起こり、自分たちで解決することができるということを理解すると(成功体験)、それでは、環境についても、同じように自分たちで解決する方策を考え、実行しようということになる(イノベーションの他分野への波及・連鎖)。これが玉突きのように起こると、その地域全体が「自律」化する。

7.一つの分野での「自律」体験が、その地域の他分野での「自律」を誘発し、「自律」がその地域のDNAのようになる。

8.イノベーションが起こると、最初は、全体の社会からは変なやつと思われるが、次第にそちらの方が楽しそう、格好良いと思われるようになり、それが主流(デファクト)になっていく。「自律」することが楽しそう、格好良いと思われるようになり、自分たちが考え、決め、実行して成果を出すことが楽しくなる。あいつがやるなら、俺はもっとこうやるとか、やればできることが分かってくる。こうなると、「自律」が流行となり、それが続くと、その地域のDNAになる。

9.社会イノベーションの分野では、ある分野での課題解決方法がスケール・アウトする(他地域にも伝播する)ことで、社会変化のインパクトを大きくするとして評価される。一方、ある地域が「自律」的にある分野でイノベーションを起すと、それは、3つの方向で伝播する。

1つは、その分野で他地域に伝播する(これは社会イノベーションと同じ)。たとえば、子育てタクシーが全国に広がる。

2つ目は、イノベーションを起した人や組織がその分野で多方面のイノベーションを展開する。たとえば、サッカーで地域イノベーションを起したアルビレックスがバレーボールや野球などにも乗り出すなどだ。

3つ目は、ある地域である分野の「自律」が他分野の「自律」を促すようになる。この場合、第二のように同じ人が多面的な展開をするのではなく、A分野はAさんが、B分野はBさんがというように広がることが望ましい。この伝播が起こると、地域社会変革という社会インパクトが大きくなる。これは、社会イノベーションとは違う、地域イノベーションの特徴となる。

この事例は、まだ見つかっていない。たとえば、ビジネスでは、浜松がやらまいかで皆がオートバイを作ったようなことが「自律」でもみられると嬉しいのだけれど。栗山町がクリンなどの動きがあり、議会の民主化の動きがあるとか、三鷹や杉並、熊本の小国町、大分の湯布院などがそうだと面白いのだけれど。岩手県藤沢町は、どうだろうか。

これまでは、むしろ、一つの大きな成功体験が別の発展につながらないなど、イノベーションのジレンマ的なことが多いのかもしれない。たとえば、大山町農協は、宮崎県の先進農業(企業化農業)にはなれなかったなど(この事例は、違う分野への波及ではなく、同じ農業分野のイノベーションのことだが)。地域イノベーション分野で、イノベーションのジレンマの事例を見つけ、検証したい。

これとは別に、地域活性化を3年やって燃え尽きたとか、その折の挫折感が「自律」に向けた新しい動きのトラウマになっているという阻害例もあるかもしれない。

あるいは、夕張のように、折角破綻し、折角村上先生が新しい地域医療を始めたのに、行政や地域住民の意識が変らない「自律」できないという地域と、ある動きが地域を大きく玉突きのように変えていった地域とがあるかもしれない(成功事例は見つけてない)。

10.昔、浜野安弘さんが、渋谷のQフロントを手がけて(その前に手がけたものもそうだったはず)、一つのビルを変えると街が変ると嘯いていたことがある。これは、景観のレバレッジポイントということだろう。同じように、地域の「自律」において、ひとつの「自律」がレバレッジとなって、地域全体の「自律」化が進むと考えられる。

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