« 小企業の地域貢献活動 | Main | 地域イノベーションと地域づくり(藤沢町の事例を参考に) »

May 20, 2010

地域づくり活動総合マトリックス

法政大学地域研究センターの雑誌『地域イノベーション』vol1(2008)に、まちづくり新聞のアンケート調査(全国の自治体へのアンケート)を分析した研究ノートが掲載されている。良い指摘を抜書き紹介しておく。

1.地域活性化の概念とは何か(佐藤充)

Q1-1で(a)活気がある、(b)少し活気があると回答した自治体は、Q1-2で活性化の具体的事例を示している。これを整理すると、次のようになる。

(1)定住人口の増加:社会人口増と自然人口増、生産年齢人口比率の上昇

(2)交流人口の増加:観光資源や地域資源による観光客数の増加

(3)民間による大規模(再)開発:宅地開発、マンション建設、商業施設建設

(4)行政主導の再開発事業:駅前再開発、区画整理事業、公共施設建設

(5)各産業の成長:農産物の地域ブランド化、製造品出荷額や小売販売額の増加、企業立地件数の増加、観光事業の成功

(6)活発なコミュニティ:まちづくり団体やボランティア団体の活動、地域イベントの開催、住民自治の推進

これをさらに整理すると次の2つになり、回答をクロスしてみると、(ア)と(イ)が両方上手くいっていると地域活性化しているところが多い((ア)が(イ)を(イ)が(ア)を)。

(ア)地域外からヒトとカネを呼び込むことができている(交通条件の改善、産業の好況、豊富な観光資源など)

(イ)地域内でのヒトのつながりが強くなっている(これまで蓄積されてきた社会関係性)

2.地域づくり活動総合マトリックス(田中延弘)

〔1〕地域づくりの目標と手段との混同

○自治体には、地域づくりの目標と手段を混同しているところがみられる。

・たとえば、新潟県は、地域づくりを4類型し、①地域産業振興型、②社会生活環境整備型、③イベント型、④地域間交流型としている。しかし、①と②は、目標であるが、③や④は、それらを通じて何か(イベントによる観光客誘致、地域商店街活性化など)を達成するための手段であるはず。

・高崎市のHPでは、地域づくり推進課の補助事業として、6つが挙げられている。①地域の伝統文化、自然環境、歴史等地域の特色を生かした事業、②地域の課題に地域全体で取り組む事業、③地域における人的交流の促進等地域の一体感の醸成に資する事業、④コミュニティの形成等地域の連帯感に基づく自治意識の高揚を図る事業、⑤地域に関する学習、研究等の事業、⑥安心して活き活きと暮らせる住環境の創出、地場産業の振興、地域のPR事業等の地域密着型の事業。

このうち、①②⑤および⑥のPR事業は、地域づくりのさまざまな目標を達成するためにどのような方法をとるかを述べたものであって、目標ではない。(もっとも、これは、助成するための分類なので手段も入っているのだろうが)

このように、目標と手段が混同されているため、総花的で忙しく、一時の高揚感だけ得られるが、成果がもたらされない。目標を明確にし、手段と混同しない、そのうえで、目標の達成度を把握し、改善方法を策定する必要がある。

地域づくりの本来的目標とは「地域のコミュニティ、基盤施設・環境、しごとを創出ないし強化することによって、地域を住みやすく活気あるものとすること」と規定する。

〔2〕地域づくりの手段

○地域づくりの手段として、次の4つに分類している。

①行政サービスの強化・見直し

②市民力の活用

③民間の経営力や企画力の活用(集客事業、農林水産品事業等)

④産官学連携

○筆者は、以上の地域づくりの目標と地域づくりの手段でマトリックスを作成している。

〔3〕目標の達成度:なんらかの指数化が必要

○達成度指数開発の試みとして、次の3構造を考えた。計測方法や指数化の方法は今後の課題である。

(1)地域づくりが目標別にどの程度の達成状況にあるかを示す3つの目標別指数(①コミュニティ指数、②基盤指数、③しごと指数)

(2)それら目標別指数の総合として、当該地域の地域づくり達成度を総合的に表す1つの総合指数

(3)(1)の目標別指数のより詳細な構成要素となる個別指数

①コミュニティづくり:グランドデザイン指数、行政横割り指数、政策策定・協働指数、事業推進・協働指数、地域活動団体指数、ネットワーク形成指数、コミュニティビジネス指数

②基盤施設・環境づくり:自然環境指数、災害対策指数、公共交通指数、バリアフリー指数、医療・教育・福祉指数、街並み・景観指数

③しごとづくり:地域資源活用指数、産品開発指数、地域ブランド指数、6次産業化指数、観光・イベント・交流指数

〔3〕人材づくり

多くの自治体では、地域づくり活動は、地域住民が自主的に行うことが原点だとし、住民組織等による主体的な取り組みを強く期待しており、これについては、「地域の実情を無視した’地域信仰’’地域への負担のおしつけ’と呼びたいほどに過熱している」との批判があるほどだ(加藤哲夫2007「民間の支援システム構築に向けて」、山田晴義編著『地域コミュニティの支援戦略』ぎょうせい)。

これまでの行政依存体質、過疎化による担い手の減少、地域帰属意識の希薄化を抱えたまま、自立のための準備なく地域づくりの行動主体となることは、住民にとって困難であり、主体にふさわしい意識、知恵、力を涵養する施策、すなわち地域づくりを担う人材づくりが必要であろう。

地域づくりの人材は、どのような手段を用いるかによって必要な人材は異なる。手段ごとに必要な人材を整理すると、次のようになる。

①行政サービスの見直し:行政人材、コミュニティ支援人材

②市民力活用:地域リーダー人材、中間支援(インターミディアリー)人材

③民間の経営・企画力活用:起業人材、経営人材

④産学官連携:コーディネーター人材

これにも、人材づくり達成度指数を開発することが考えられる。

〔4〕まとめ

上記から作成したマトリックスに、先進事例を整理してみると、「コミュニティづくり」と「基盤施設・環境づくり」では市民力活用が中心になっている一方、「しごとづくり」では、全ての事例が民間活力による取り組みであることが分かる。

先進事例は、目標と手段の組み合わせが網羅されていないで、偏っている。この空白部分を埋める取り組みによって、地域づくり活動のエネルギーが強化されるのではないか。

たとえば、しごとづくりにもっと市民力をつかえないか、コミュニティづくりに民間を活用できないか、産官学連携をいかにコミュニティ育成の手段とするかなどをチェックできる。

+++++++++++

私は、地域イノベーションの事例を評価する必要があると思い、アメリカの社会イノベーションを評価する方法を転用していたのだが、やはり、社会イノベーションとは軸が異なるはずで、この田中氏のマトリックスはとても良いと思う。また、社会イノベーションを評価するにあたっては、成果の達成度を示す指標を持っていることが重視されるのに、地域イノベーションでは、そうしたことがなされていないことも指摘していたが、田中氏はそれの案を提示しているのでこれも良い。

|

« 小企業の地域貢献活動 | Main | 地域イノベーションと地域づくり(藤沢町の事例を参考に) »

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)




« 小企業の地域貢献活動 | Main | 地域イノベーションと地域づくり(藤沢町の事例を参考に) »