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May 07, 2010

小企業の地域貢献活動

日本政策金融公庫「調査月報」09年6月は、小企業の地域貢献活動が特集されている。

実際私も、地域のことを考え始めてみると、その主要な担い手は、地元の小企業であることに気付き、それらが衰退していく現状に愕然としたことがある。大企業の支店も、祭りなどに協賛金を出したり、参加しているが、主役足り得ない。地元に愛着を持つ地元企業が核に居てこその協賛であろう。

そう思っていたところに、こうした調査が実施されたので紹介しておく。

この調査をした問題意識として次の2点があったという。

(1)小企業の地域貢献活動の実態を明らかにし、小企業を経済外的役割という面から存在意義を再評価できるのではないか。

(2)活動が地域社会のニーズを満たすものであるなら、地域社会と密着した小企業の経営にも好影響を及ぼすのではないか。

1.地域貢献活動の定義

まず、何を地域貢献活動と呼ぶのかとして、次のような定義を行っている。

1.経済の振興に関する活動(地場産業の活性化、商店街の活性化、特産品や農水産物など地域資源の活用、創業支援や他企業の経営支援、その他)

2.文化・環境に関する活動(祭りや伝統行事の開催や維持、地域における文化やスポーツの振興、地域の美化や緑化、地域の環境保全、その他)

3.教育に関する活動(経済・金融・消費者教育、起業家教育、職場体験・インターンシップの受け入れ、その他)

4.雇用に関する活動(高齢者の雇用・就業支援、障害者の雇用・就業支援、ニーと・フリーターの雇用・就業支援、ホームレスの雇用・就業支援、元受刑者の雇用・就業支援、外国人労働者の雇用・就業支援、その他)

5.治安・安全・防災に関する活動(防犯活動、交通安全活動、消防・防災活動、その他)

6.保健・医療・福祉に関する活動(高齢者の生活支援、障害者の生活支援、生活困窮者やホームレスの支援、食の安全確保、育児支援、その他)

この定義を定めたこと自体、ひとつの理解の前進といえる。つまり、当人は、何気なくやっている活動も多いが、それを第三者的にみれば、地域社会を維持していくうえで、大変貴重な活動であり、仮にその担い手が居なくなった場合、地域社会にとって痛手であるに違いない。私は現在、定義せずに地域イノベーションと言っているが、上記の活動分野が形骸化していたり、空白であったり、廃れてしまっているのを住民自らが再生・再システム化する試みと考えることもできる

2.アンケート結果→経済外的役割を果たしている

同公庫の取引先にアンケートした結果(3000ほど)によれば、地域貢献活動に取り組んでいるのは45%、うち、3つ以上取り組んでいる企業が約半数を占める。

傾向としては、規模の大きい(といっても20人以上)ほど取り組んでいる企業の比率が高い。相対的には、人口が少ない地域ほど取り組んでいる比率が高い。業暦が長い企業ほど取り組んでいる。経営者の年齢では、54歳までは年齢層が高いほど取り組んでいるがそれ以降は減少する。

加入団体でみると、NPO法人に加入している企業に貢献活動をしている企業が多く、そのほか、商店街振興組合や中小企業家同友会が続く。

活動分野では(複数回答)、上記分類の2の文化・環境が8割近く最も多い(祭りや伝統行事が最も多く、次いで文化・スポーツ)。次いで、5の治安・安全・防災、1の経済振興に続く。これら上位の活動分野は、比較的ノウハウが蓄積されているが、そのほかの活動分野では、最近になってニーズが高まっているものの、ノウハウが確立していないとみられる。

取り組む理由では、「地域の企業として当然のことだから」という回答が最も多く、「企業の業績向上に直結する」といった回答は少ない。しかし、長い目でみれば企業の利益になる、従業員確保につながる、企業の評判が高まるなど、何らかのかたちで企業の利益になることを期待しているのも確かである。

小企業は、必ずしも収益が良いから地域貢献活動をしているわけではなく、収益が悪化している折にも活動を続けている。そして、必ずしも直接利益にならなくても、活動に取り組んでいる。このレポートでは、小企業は、経済的な役割に加えて、地域貢献活動を通じて、地域社会を多面的に支えるという経済外的な役割を果たしていることを示している。近年、社会企業やコミュニティビジネスが注目されるが、そうした新勢力だけでなく、既存の小企業の役割にも着目し、政策的サポートの必要性を訴えている。

3.地域貢献活動は企業経営に好影響を与える

1.地域貢献活動の成果に対する評価で、①「予想以上」、②「予想通り」、③「成果あるも予想を下回る」、④「成果は上がっていない」の4段階を聞き、それと売上高の傾向を見ると、売上高が増加傾向にあると答えた企業では成果評価に差が見られないが、売上高が減少傾向にある企業では、①②では相対的に減少と答えた企業の割合が低いのに、③④と答えた企業では、売上が減少傾向にある企業の割合が高い。

事例(1)㈱美交工業(大阪市、ビルメン、公園管理)

03年から知的障害者の雇用、06年からホームレスの雇用に取り組んできた。大阪府が府の清掃業務の一般競争入札にあたって、総合評価制度を導入し、障害者雇用に貢献している企業や母子家庭の母親を雇用している企業に加点するようになったことが幸いし、落札できるようになって業績が伸びた。

事例(2)大里綜合管理㈱(千葉県大網白里町、不動産・建設業)

育児支援、清掃活動、コミュニティ・レストランなど90種類もの地域貢献活動を実施している。不動産・建設市況が厳しい折、売上を伸ばしている。同社では、地域貢献活動は、毎年の経営計画に組み込まれている。企業は地域の役に立たなければならないという経営理念があること、地域貢献活動は住民に喜ばれて知名度や信頼度が上がる広報活動であると位置づけている。知名度が上がり、営業面でプラスに働いている。

同社が地域貢献活動を始めたきっかけは、1994年に社員の福利厚生として始めた育児支援を地域の人たちに開放したこと。当時学童保育で世話をしていた子供が大人になって2人同社で働いている、地域貢献活動に参加したくて同社に就職した人が多いなど人材確保にも役立っている。

同社の地域貢献活動のアイデアは社員からも出される。その場合の判断基準は、①地域に役に立つこと、②会社の利益になること、③従業員が喜ぶことの3つで、このうちどれか一つ欠けてもやらない(やっても長続きしない)。

事例(3)マツザワ瓦店(名古屋市、瓦工事)

瓦工事は現場で瓦を切るため、大量の廃棄物が出るし、粉塵が出るので近隣に迷惑がかかる。このため、同社は、瓦を工場で前もってカットするプレカット方式を導入した。プレカットは、当初職人からは、技能を発揮する機会が失われると反対されたが、現場の廃棄物が減りハウスメーカーに歓迎され、一日に仕上げられる施工面積が増えて職人の賃金も上がった。ごみを出さない瓦工事業者と評判になり、受注が5倍に増えた。

プレカットで出た切りくずは、培養土などにリサイクルし、これを使って(従業員の発案)小学校や幼稚園で環境教育を行っている。プレカット方式が賃金の上昇や会社の成長に貢献しているということから従業員にもやりがいをもたらし、環境意識を高めた。

2.以上の事例のように、地域貢献活動をすることで、業績にもプラスの成果を上げることができる可能性がある。

予想以上、予想通りの効果を挙げているのは、その活動の状況が上手くいっている場合である。「活動の目的が企業(団体)内に浸透している」「活動の手法が確立されている」「適格なリーダーがいる」「適格なマネージャーがいる」「人手は足りている」「資金は足りている」活動は、いずれも成果を上げる確率が高い。

では、どうしたらこの6項目を充足させることができるか。

1.本業と関連した活動

大里綜合管理に見られるように、地域に良し・会社に良し・従業員に良しでないと長続きしない。従業員が意義を実感できるようになるには時間がかかるので、経営者が折に触れて必要性を説明することや、最初は成果の出やすい簡単なことから始めるのも手である。

2.ノウハウ不足は他機関との連携でカバー

美交工業では知的障害者を雇用するにあたって、エル・チャレンジ(知的障害者の就労を支援するために結成された事業協同組合)の協力を得ている。ホームレスの雇用では、株式会社ナイス(ホームレスの社会復帰を支援する)と連携している。大里綜合管理では、コミュニティ・レストラン開設にあたって、コラボ屋で学んだ。

3.マネジメント人材育成

地域貢献活動が活発になると、経営者一人では手が足りなくなる。経営者を補佐し、活動をマネジメントしてくれる人材を育てる必要がある。

美交では、知的障害者を受け入れる中で、健常者の社員から障害者職業生活相談員8人を育成した。大里では、発案した従業員が自分で責任を持って実行する。社員は負担が増えるがやりがいを感じるようになる。地域貢献活動をやっていると、良い人材が集まってくることもある。

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