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August 27, 2010

市民社会の強化による自治体再構築(木原勝彬さん)

コミュニティ・ガバナンスの記事で紹介したローカル・ガバナンス研究所の木原勝彬さんが、前記事で紹介したペッカネンさんの講演会でコメンテーターとして意見を述べている。先に紹介したPDFの内容を言葉で述べているので紹介しておく。

1.主権者・統治主体としての意識が希薄

日本の町内会、NPOなどの市民組織に政策提案能力がないのを実感している。この要因は、民法34条の規制的な枠組みの問題もあるが、公共を担うのは、国家・政府であり、行政であるという日本人の公共性概念が大きく影響していると考えている。自ら政府を作った経験がなく、主権者・統治主体としての意識が希薄である。政府をコントロールするという意識の弱さが政策提言団体が育たない原因ではないか。

2.対話と討議によって地域の総意を形成が弱い

自治会、町内会に加入することは、住民にとって、生活の安心を維持するが、対話と討議によって地域の総意を形成する側面が弱い。行政の下請けとしての批判を受けないためにも、体質改善が必要。

○日本の市民社会の強化には、制度的な規制緩和と同時に、自治体再構築に連動する市民社会の強化策という発想を持つべき。直接民主主義を重視する直接統治型の市民主権型自治体の構築を目標に据えるべき

 ・そのために、行政の事務事業を市民社会にアウトソーシングし、簡素効率的な政府の実現を図ること、権限・財源をNPOや自治会・町内会に委譲する市民分権という2つの方向での自治再構築が必要。

 1.NPOは、たこつぼ的で市民から信頼されていない。→NPO相互の連携・協働とともに、社会ビジョンの策定を通じたビジョンの共有化によるセクターの連帯強化が不可欠。

 2.NPO活動の成果を可視化するなど成果のアピールが必要。市民への説明責任。課題解決主体としての実力を見せる。

○NPOと行政の協働が進展しているが、NPOが行政の安価な下請け先に甘んじたり、政策決定・実施・評価という一連の政策形成に関与する主体としての位置づけが希薄。協働は、市民自治の強化、市民社会の強化を目的とすべき。そのためには、行政領域に抱え込んだ行政事務事業のすべてを洗い出し、協働領域、市民社会領域へと分類する市民社会化仕訳作業を本格的にやることがNPOの財源確保に結びつく。

○行政・議会システムという制度的公共空間と、非制度的な公共空間である市民社会とが日常的に応答する協働型政策形成が根付く必要がある。市民社会での日常的な対話・討議を熟成させ、市民活動の提案や声を絶えず議会や行政に発信することが大切である。

 ・奈良では、市民が策定したマニュフェストを立候補者へ逆提案する市民マニュフェスト運動を展開。

 ・「市民社会とガバナンス」研究会から、市民社会強化戦略を県に提案した。

奈良県では、木原さんのビジョンに近い動きを進めているらしい。小さな地域ごとに多様な個人・団体が集まって会議をしたり、県では市民活動に資金を提供できる枠組みをこしらえている。これをとっかかりに、市民が覚醒するのか、教育されるのかもしれないが、市民が自主的に動き出すという理想のビジョンとは逆で、行政によって整えられている感じがする。最初の一歩はしょうがないのかもしれないが。

○税の直接民主主義(公益信託基金)

NPOにとっての最大の課題は資金確保。寄付税制改革への努力も必要だが、寄付文化の弱さを考えると、市民が自分たちの自治力を強化するための予算枠として、たとえば、市民税の1%を市民社会の予算として確保し、それを公益信託基金に毎年拠出して、そこから助成効果のあがる形で評価・支援するという市民社会強化戦略の実行を考える段階に来ているのではないか。税の直接民主主義の実践だ。

○自治会・町内会などの伝統的な地縁組織と地域で活躍する子育て支援などのテーマ型コミュニティ組織、NPOなどとの連携がうまくいっていない、行政と対等にやりあう力量も不足。→コミュニティの現状をどのように再編成していくか、住民自治力の強化が課題。地域の総意形成・決定による地域の代表制が担保された新しいコミュニティ自治の仕組みづくりが求められており、その動きが広がってきている。

 ・新潟県上越市の地域自治システム:地域自治区制度を活用。市長の諮問機関である地域協議会の委員を選挙で選出し、市長の諮問への等身や地域課題の解決方策を行政に提案。全国初の公選法に準じた応募選出は評価されているが、地域自治区は行政区であって、地域協議会は決定機関ではない。

○理想的な形としては、行政の関与のない形で立ち上げられた地域の総意を形成・決定する住民自治組織と、行政、議会等で構成される地域の最高の協議・決定の場であるプラットフォーム(コミュニティ自治委員会)で地域の最終の意思が形成・決定されるということが望ましい。

 ・各地で現在進められているコミュニティ自治の取り組みは、行政が主導する形で拙速に仕組みづくりが進んでいる。日本の地域民主主義の将来を考えた場合、地域住民自らがじっくりと地域の意思形成をしていく住民自治の力を自らが鍛え上げていくことが求められているのではないか。

○公益信託市民社会投資基金、市民社会投資機構、地域再生プラットフォームで構成される市民社会強化戦略を紹介したい。

 ・市民税の1%分の資金を毎年行政が「基金」に拠出する。

 ・運営委員会の審査に合格したコミュニティ組織、NPOなどの市民活動団体や問題解決に取り組む「プラットフォーム」などに助成金が支給される。

 ・助成金の支給と並行して、情報提供、人材派遣などのバックアップが支援組織である「機構」から実施される。

上記プロジェクトの最大の眼目は、市民社会に大規模なファンド(市民社会の予算)を確保し、資金不足に悩む市民活動団体、NPO、「プラットフォーム」などへの技術的支援を伴った資金投資を行いながら、住民自治力、市民社会力を強化しようというもの。

○市民主権型自治体

市民が政治的意思決定、政策形成、公共サービスの供給等に直接的に関与する「市民による、市民のための、市民の自治体」である。この自治体の主要システムとしては、コミュニティ自治システムを中核に、マニュフェストの検証・評価を通じて、市民・有権者が自治体運営を統制するマニュフェストサイクルシステム、市民による税の使途決定・活用システム、市民が予算編成に関与する市民による予算編成システム、協働型政策形成システムなどが包括的に整備された市民社会に支えられた自治体。

お金のこと、市民活動支援組織のことに触れているのは、興味深い。前記事のアメリカのシアトルでは、行政が自治会活性化のために、助成金を用意してマッチングで提供している。また、イギリスのパリッシュは、自治体が税金徴収の折に、パリッシュが決めたパリッシュ向け税金も徴収してくれる。市川市、我孫子市。

先のPDFを見ると、市民主権型自治体は、小学校区くらいをイメージしているようだ。直接民主主義・討議型民主主義を育てることを目している。

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Comments

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