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August 29, 2010

地域再生マニュアル(山浦晴男さん)

山浦晴男『住民・行政・NPO協働で進める最新地域再生マニュアル』朝日新聞出版2010は、ファシリテーターが入って地域で寄合ワークショップをやることで、当初は、諦め感と行政への文句(陳情)だけであった住民たちが次第に本当は諦めていない自分に気づき、こうなってくれたらという思いを話だし、その後自分たちで何かしようと内発的に動き出す(お金を出す、汗をかく)経緯が紹介されている。

この本では、ファシリテーターの役割や諦めきった地域をどのように燃え上がらせるかのノウハウが記されている。この手法は有益そうで、今すぐにでも私も勉強して地域再生の現場に立ち会いたいものだ。

事例として、和歌山県田辺市龍神村(地元産品を活かす)、山梨県南アルプス市藤田区(防災)、和歌山県那智勝浦町色川地区(Iターンによる草の根まちづくり)、山梨県北杜市清里地区(住民参加の駅周辺開発計画)、埼玉県江川流域づくり、和歌山県紀の川市靹渕地区(伝統作物の地域ブランド化)、和歌山県北山村(筏と特産みかん)、和歌山県広川町中村地区(耕作放棄地を菜の花等へ)・・などなど。

第四章には、まとめのが書いてある。抜書きしておく。

1.縦割りの効用が負に転じてしまった地域社会

①横断的組織の後退(町内会、青年団、婦人会など)。これを補うためにNPOが必然的に出てきたのでは。

②地域を束ねる人の力の後退(名士や篤志家、実力者、知恵者、古老、村長などの影が薄くなった。地域エゴというが、自分たちの地域を守ってきたのではないか、こういうリーダーを地域が守ってきたのではないか)

③平成の合併に伴う地域に密着した行政力の後退

④地域の主体性で縦割り支援を活かす。

2.地域再生に向けた新たな協働の仕組みが必要

①地域における「伝統と創造」の仕組み

滋賀県甲良郡北落集落では、伝統的な集落内集団に加えて、1990年にむらづくり委員会が発足、伝統的なものには年齢制限などがあるが、制限がなく伝統的な集団と兼任しているので伝統的な集団と委員会とが連携しやすい。委員会は、村落振興、生活文化、環境、健康推進、地域用水の部会があり、伝統的集落内だけでは解決できない課題を解決してきている。伝統的な集団が守りの自治であるところ、委員会が攻めの自治を担っている。

②外部へ支援組織を拡大する

地域出身者(地縁者)、孫などの血縁者、テーマ縁(田代島だと猫の島縁)、ニーズ縁(特産品を購入という形で支援してくれる人たちなど)

③NPOと住民、行政と住民の協働に欠かせないこと

地域社会は「生き物」であり、一人ひとりと同じように人格を持つ存在である。育った地域は自分そのものである(育った地域と自我が不可分になっている)。山川田畑集落は、客体としての存在だけでなく、自らの存在と切り離せない存在である。自分たちの土地に何の挨拶もなく入り込んでくる部外者(耕作放棄地を耕してくれるにせよ)への複雑な気持ち。

④やる気の継続要件

協働の仕組みを作りこんだのち、関係者のやる気を継続していくかがポイント。地域再生には10年、100年の息の長い取り組み。困難に取り組みながらも、取り組んでいる仕事が無条件に楽しいこと。取り組んでいる対象に興味、関心を抱いて面白いと感じること。成し遂げた成果が第三者に喜ばれること。取り組んだ人々が儲かるという果実を得られること(お金だけでなく、充実感や第三者からの評価でもよい)。

いろどりの成功は、これが揃っているから。

取り組みの成果が小さくても良いから見える形にし、成果を積み重ねていくことでやる気の再生産につながる。小さな成果を積み重ねながら大きな成果につなげていくことで、遠巻きに見ていた住民を巻き込むことも可能となる。

3.どの地域もが取り組める方法が必要

①ビッグな成功事例に学ぶ

黒川温泉の成功事例(当事者は運がよかったというが)は、成功すべきポイントを踏まえている。「若者、よそ者、馬鹿者」と形容される異質後継者集団(Uターン、Iターン婿養子)が地域資源の宝を見定め(露天風呂、田舎の商品化)、地域経営を行った。成功には10数年かかっている。

②立ち上がり始めた事例に学ぶ

小さく生んで大きく育てる。地域資源に着目。一点突破全面攻略。マイナス点に着目し、そこから立ち上げる。・・地域再生の起点。

③運が良かったから運を導く方法へ

成功事例を仮説として援用し、二匹目のドジョウ獲得を展開、寄合ワークショップを加味することで加速化。

④誰もが取り組める方法の基礎づくり

ファシリテーターの方法、KJ法など

4.旗揚げすれば、周りが応援する時代の到来

①旗揚げしない地域は「悪循環」の疲弊サイクルへ

地域がその気になって旗揚げして取り組めば、関係者やそれ以外の人たちまでもが応援する動きが出てくる。NPOはご縁のできた地域で活動に取り組む方がやりやすい。元気な取り組みはマスコミも取り上げる。マスコミが取り上げれば、応援する人も出てくる。

②旗揚げした地域は、「善循環」の再生サイクルへ

③旗揚げできるかはリーダーの力による

住民が地域に目を向ける機会を望むリーダーがいるかどうか。あるいは、そのようなリーダーを地域のなかに見つけ出し、働きかけを行うことがワークショップを行う上で大切。

地域自治経営と企業経営が大きく異なることは、後者は、トップの独断でも事業を経営できるが、前者の場合、リーダーが独断で物事を判断し決めても、住民はそれについてこない。ついてきたとしても表面上だけで、本心は後ろ向きである。

伝統的な行事なら、リーダーの伝統的なやり方に従っていればことはすむが、時代の状況変化に対応して地域再生をはかろうとするなら、住民の参加を促し、住民を巻き込みながら判断、決断を導いていく、そういうリーダーが必要になる

④後ろからバッサリ切られない仕組み

寄合ワークショップで取り組むことで、リーダーは安心して旗をあげることができる。住民の意見集約と合意形成に基づく結論を錦の御旗にできるからだ。これにより、実施の途中で、住民にそれは違うと後ろから切られることはない。

5.10年先、100年先の夢を描く

①江戸末期以来の大転換期に立つ地域再生

地域再生の基盤整備は、住民の「内発力」の醸成にあるのではないか。

・離島振興法が2002年に改正され、それまでの「後進性の除去」から「価値ある地域差」へとコンセプトが180度切り替わった。価値ある地域差は、各離島が固有に有する「地域遺伝子」の発現の作業であり、それは内発力をおいてありえない。

②伝統文化・技術レッドデータブック

基盤整備=ソフトの整備の本質は日本文化の再生である。NPOかみえちご山里ファン倶楽部は、上越市西部山間地の桑取谷を中心に里山里海の地域振興、環境保全、文化・芸術の伝承・育成に取り組んでいる。野生生物のレッドデータブックの発想を援用して、地域で営まれている生活技術や文化などを調査し、誰がそれを持っていて、年齢はいくつか、を合わせて記載するという取り組みをした。絶滅のおそれがある知恵や技をスタッフが体験し、受け継いでいく取り組みをしている。

地域の礼儀(お酒、お茶の注ぎ方、神事での榊のあげ方)、食(みそ造り、そばの打ち方、マムシの食べ方)、農(田んぼの作業、芝刈り機の使い方)、森(炭焼き、自然薯の掘方)、川・海(投網の方法、鮭のさばき方)などなど。

和歌山県色川地区では、2008年から全国から若者を集めて「百姓養成塾」を開始、2009年からは「むらの教科書づくり」も始めている。ほかにも

立教大学大学院教授の内山節氏は、東京と群馬県の上野村とを往復しながら、村の暮らしの哲学を紡ぎだす仕事をしている(インタビュー)。2001年から村の仲間と「山里文化祭」を始めた。『「里」という思想』新潮選書、2005年。村人のまなざし「春になった畑が自分に耕作を促し、伸び始めた芽が村人に間引きを促す」。上野村総研

③連帯感の再生と集団の「生き物化」

ワークショップを経ると、住民の連帯感が生まれる(連帯感が醸成されている)。ワークショップは「具体的な他者とのかかわりのなかで、他者のまなざしを自分のものにしながら、主体性を発揮する」場である(先の内山氏の著作を援用)。

これ「 」は、討議型民主主義の説明でも聞いたような気がする

この連帯感の再生が地域再生の出発点となる。参加者に書いてもらった感想(次第に連帯感が生まれているなど)を、ワークショップの主催者の参考とするだけでなく、参加者にもフィードバックし皆で共有化する。これにより、参加者の集団を「生き物」化できる、自ずと内発的な取り組みが起動する(参加者集団の自己組織化)。

ここは、大事なところで、そうなんだろうなぁとは思うが、まだ本当には分かっていない

④100年先を論じあい、夢見るとき

「10年先、100年先の自分たちの地域の礎づくりをめざしましょう」と、取り組みで配布する資料の最後のページにこのメッセージを記している。

これは、とても重要なことだ。札幌でもIT社長たちに呼びかけたが、乗ってきてくれなかった(明日の自分の会社のことで手一杯、ライバルと一緒に商売の話をしたくない・・)。これはセオリー・オブ・チェンジでバックワード・マッピングをするのと通じることだ。今から発想するのではなく、未来から発想する。・・・・というか、自分の将来を描いて、今何をしなければならないかは、まさに、今の私の課題なのだが。

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