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August 26, 2010

日本における市民社会の二重構造(ベッカネンさん)

ロバート・ベッカネンというアメリカの教授で日本語もできる人がタイトルのを出しているらしい。まだ読んでいないが、東京アメリカンセンターのセミナーの記事をネットで読める。

この本は、自治会などを含め、幅広く日本社会を研究。さまざまな団体15万件にアンケートを配り、4万件の回答を得、全自治体へのアンケートを分析したとのこと。

このセミナーでは、①日米の市民社会の分析比較、②日米の違い、③影響、④日本の将来について語ったようだが、詳しい内容は分からない。議事録は、主に、フロアとの質疑になっている。

この質疑から読み取れるのは、彼は、「町内会は、市民社会の一部である」と考えているらしいことである。

町内会に入るのは、社会的圧力があるわけではなく、任意である。にも拘わらず入るのは、隣人によく思って欲しい、他人に悪くいわれたくないということからだろう。規範とネットワークのために入るのだとしたら、これは社会関係資本が絡んでいるからだ。

NPOと町内会は、似た部分もあるが違う部分もあるが、社会学者が言うほど大きな違いはないのではないか。市民社会には、良いものも悪いものもある。アルカイダが国を支配したら市民社会には含まれないが、宗教団体は入る。KKK(白人至上主義を唱える結社)も私なら入れる。

日本の市民社会は、ある意味、他の国と変わらない。特徴は、非常に小さな地域レベルの市民団体はあるが、大規模な独立系の専門家集団は少ない。(町内会は多いが、グリーンピースのような大規模なものが少ない。グリーンピースは専属のメディア組織を持って世界にニュースを発信でき、国連環境計画より予算がある。)

日本には、30万以上の自治会がある。日本を地理的にみた場合、自治会がない地域はほとんどないだろう。アメリカには、こういう組織はないし、あっても網羅率が非常に低い。日本では、マンションでは共益費を徴収され、戸建てでは自治会に自主的に会費を払う。アメリカは宗教心が強いといわれるが、それでも、大衆の4人に3人が参加するような組織(町内会はそう)はない。アメリカでは、政府が主導して自治会を発足させるケースが多い(シアトル)。

日本では、自治会が政府の言いなりになっていると見下されるが、他の国の自治会と比べると非常に高い独立性を持っている(学者グループでアジア、アメリカの町内会を比較)。韓国は完全に政府に作られたもの、アメリカでも政府が介入している。

町内会の歴史には、いろいろな歴史が混じり合っている。防火のため、盗賊から守るため、1920年代に政府が有用性に着目したなど。政府はできるだけ多くの情報を回覧板に乗せたがるが、町内会は拒否することができる。

(辻中)明治期に7万あった自然村が戸籍と小学校を作るために合併させられて1万4千になる。自然村がそのまま残り、かつ都市化に伴って30万に増えた。

アメリカでは、教会が核になって、多くの住民がコミュニティに参加しているように想像していたが、彼に言わせると、日本の町内会の比ではないという。また政府が自治会を主導して発足させているとは知らなかった!

日本の自治会は、政府にさまざまなソリューションを求める立場にあるように思え、これはアメリカの自治会にはないスタンスとのこと。

アメリカでは、一人の人が非営利と営利セクターの間を行ったり来たりするが、日本では、これが難しい。

日本では、政府によって自治会、町内会づくりが奨励されてきたという経緯があるが、官僚のような専門性を持てない。一方、大規模な専門家グループは、官僚を監視し、ライバルになる存在なので、政府は、こうしたものが作られないよう、厳しき規制してきた。

日本では、環境団体などの財源に政府からお金が入っていない。アメリカの政府はかなりの資金を提供している。日本は、正当・合法な市民団体になるには、政府の承認を得なければならないというおかしな構造だ。

アメリカの政府は、どうして環境団体にお金を出すのだろう。別働隊として働いてほしいからなのか。また、アメリカでも、その団体に寄付した場合の税制優遇などを得るには、法的に認められないといけないのではなかったか(要チェック:民法34条のことらしい)。

民主主義の考え方には、参加と代議制、社会関係資本と多元主義などがあるが、日本はあまり多元化されていない。政策の議論に関わっていない。アメリカの老人団体であるAARPは、ロビー団体として洗練されているが、日本の老人会にはない。日本の老人会は健康増進やコミュニケーションにはかなり役立っているが、政策提言をしていない。一方、AARPは、政策提言できるが、社会関係資本は育っていない。

日本では、さまざまな政策課題に対する情報源は、マスコミだが、そのデータを提供しているのは政府だ。日本では政府からの情報が非常に大きい。日本では、市民団体は調査する能力をあまり持っていないので、世論形成に影響を与えることができない。アメリカの団体はこれができる。良い面も悪い面もある、組織化された団体の力が強く、皆の意図とは違う方向に政策を変えてしまうこともある。

アメリカでは、最高裁判事の任命には非常に意見が分かれるが日本では話題に上らない。社会保障政策も、アメリカでは必ずAARPが絡むが日本にはそのような団体はない。

彼が住んでいる町(アメリカ・たぶんシアトル)の回覧板は、近隣の注意事項、防犯、広告ページが書かれているが、これは郵送されてきたもので、会合はなく、スタッフはご近所だが会ったことがない。日本のように参加者の多い町内会、顔見知りというのはいいこと。

結論として、日本の町内会は重要なリソースである。新しいものを作るより有益だろう。ただ、NPOなどと連携がうまくいっていない。お互い不信感がある。また、地方の行政と町内会との協力が重要。町内会の世代交代、コミュニティの再活性化という課題もあるとしている。

いずれにしても、町内会・自治会を前向きに捉えているのは、面白い。彼は、イギリスのパリッシュについてはどう考えているのだろうか。

自治会が組織として政策を提言するには至らないと思うが、政策決定への参加は可能だと思う。問題は、だれがその政策を作るべきなのか。NPOは、政策提言に非常に有用だが、地域の意見を吸い上げるには町内会は重要。何らかの仕組みで協力体制を作れるようにすべき。

シアトルでは、活動家が市民全体の代表ではなかったので、行政がいろいろな人に参加してもらうために自治会を作った。市民に本当に権限を委譲しないと参加してくれないだろうと考え、きちんと予算をあてがった。自治会の長が牛耳るのではなく、アイデアを持っている人にマッチングファンドを提供する方法。

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Comments

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