名張市国津地区
名張市の住民自治について前の記事で紹介した。
今回は、最初に自発的に地域計画を策定した国津地域についてみてみる。
平成7年に策定されたくにつくり計画「アララギプラン」は、涙が出るくらい立派なものだ。
昭和29年の人口は420世帯、2200人であったが、平成7年当時は、320世帯、1100人と人口が半減している。少しでも流出を食い止めようと、ゴルフ場誘致を行ってきた。
しかし、平成9年には、小学校入学者がゼロになることが分かり、130年間、学校と地域は、さまざまな活動を共にし、共通の思い出と愛着を育む基盤であるのに、このままでは、廃校となり、この基盤が消滅してしまうという危機感から、若い人たちの強い要望で地域を挙げて「活性化委員会」が設立された。
先進地域である奈良県東吉野村に住民の3分の1が視察をし(東吉野村も過疎の町で、熱心に取り組んでいたらしいがネットではその内容を見つけられなかった)、アンケートには90%の回答があった。
議論を重ねるなかで、国津地区は、過疎だけれども、人口増加を続けている(大阪などのベッドタウンとして)名張市にあるということに気が付く。
そこで、トナリのトトロの役割を国津地区が担うことで意義ある町になれるのではないか。名張のなかで国津はなくてはならない地域となり、国津の人たちも地域の価値を認識できるようになる。そうなれば、ゆっくりとであろうが、過疎やいびつな年齢構成は解消されていくのではないか。・・と考えた。
そして、7つの計画と活動の目標を策定し、それぞれに、(1)自発的な活動と(2)具体的な施策を整理した。7つの計画とは;
①名張のふる郷づくり(やすらぎのある風景と魅力のある施設づくり、イベントと文化の情報発信)
②自然にふれあう山、川、里山づくり(里山などの自然環境の保全、やすらぎのある自然の再生)
③明るく心休まるふる郷づくり(住居・道路近辺の樹種の転換、森の資源の活用と雇用の場の確保)
④便利で安全な道づくり(街道づくりと道路整備促進委員会、郷のみちづくり・バス路線と駐車場の確保、散策道の整備)
⑤さわやかだ心温まる地域社会づくり(国津の日、コミュニティセンター、情報通信、くらしと生活)
⑥郷の良さを生かした教育環境づくり(なばり・自然の楽校、就学指定制の弾力的運用、保育の充実、国津地域教育連絡協議会)
⑦農を活かしたふれあいづくり(名張の菜園、農産物の情報提供と生産流通の組織づくり、くにつ「源流米」、薬草園)
それぞれの項目について、たとえば、①のやすらぎのある風景の魅力ある施設づくりでは、(1)自発的な活動としては、国津を訪れる人を温かい心で迎えます、無人販売所の設置や素朴な案内板などなつかしさを感じられる風景づくりをするとしている。
一方、(2)具体的な施策としては、子供たちや家族づれが自然と触れ合い、学び、体験できる自然観察公園を整備し、そこに自然の楽校(自然観察館)を整備するとか、薬草やハーブを栽培し、心にやさしいヘルスケアパークを作る、北畠具親城館跡地を城郭公園として整備し、国津に点在する中世城館跡をめぐるコースの拠点にする、水辺レクリエーション区行くを整備する、ハイキングコースを整備し源流域としてPRするなどが記されている。
この計画に書かれたことがどこまで実行できたか、詳しくは分からないが、その後、平成15年からできた「ゆめづくり地域予算」を使って国津が実施したことを挙げると、地区運動会、ホタル狩り(国津地区だけでなく、松坂の子供たちも一緒に)、花いっぱい、公園の整備や河川周辺の景観や案内板の点検補修、コミュニティバス運行、フェスティバルやフォトコンテスト、夏祭りなどが挙げられている。
なかでも、そもそもこの計画策定のきっかけであった国津小学校については、特認校としての指定を受けている(小学生で、少人数や空気の良いところで勉強したい子供が学区を超えて受け入れる)。
しかしながら、平成20年度に、人口は849人、高齢化比率が44.9%となり、さらに、過疎化と高齢化が進んでしまっているようだ。
ちなみに、平成7年の計画段階で、住民に実施したアンケートでは、何故過疎化が進んでいるかの大きな要因が地域に働く場所がないということであった。名張のトトロとしての整備は進んだように思われるのだが、それが住民増加には結びついてはいないようだ。
計画では、インターネットでの国津の情報発信とあるが、HPも見当たらないし、ブランド米づくりや有機農産物、薬草園などは、どうなっているのだろうか。実際、人口減少と高齢化が進むと、現在の公園やハイキングコースなどの整備でもおそらく手一杯であろうし、新しい販路開拓やブランド化などに取り組むには、人手が不足しているかもしれない。
自分たちで地域ビジョンを作り、自分たちも知恵や労力を出しながら、市や県などにも働きかけて地域づくりをしていく、というのは素晴らしい先進性だし、隣のトトロというコンセプトを打ち出したのも凄いと思う。
名張のトトロとしての評価が高まり、住民は、顔が明るくなっているのだろうか、それとも、人口減少を前に疲れてきているのだろうか。これだけ素晴らしい住民力がある地域を活性化するには、次に何をしたらよいのだろうか。日本中が人口減少なのだから、人口が増えることが活性化ではないだろうが、やはり、若者や壮年者が戻って・増えて、バランスが取れるということが一番なのだろうか。
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