『熟議民主主義』第14章「学習サークル」
この本は、5部に分かれていて、4部が地域社会と熟議の文化なので、その最初にあたる第14章「学習サークル」を読んでみた。
1.ポーツマス市(人口約2万人)にとって熟議が文化になっている
ニューハンプシャー州ポーツマス市は、熟議による対話を当地の市民文化の不可欠な一部とする道をたどってきた。過去数年間にわたって、多様な地域社会のグループが数百人の住民を巻き込む学習サークルを何度も運営してきた。学習サークルが一つ成功するたびに、新しいグループのリーダーたちが刺激を受け、また、新たな問題について熟議を運営してきた。
①対話の日:尊敬できる学校(いじめと安全対策)
1999年、「対話の日:尊敬できる学校」というイベントで、ポーツマス市の住民は、初めて学習サークルを体験した。ポーツマス中学校から200人の6年生と、75人の大人が数回集まり、いじめなど、学校の安全に関する問題について議論した。
学習サークルが終わった後、生徒たちは、教育委員会と市議会に提案書を提出した。→その結果、学校の運営方針が変わり、いじめが減った。さらに学習サークルは、地域の異なる集団をつなげる役割も果たした。今では、学校と地域のリーダーは、より頻繁に交流するようになり、市民による熟議を前向きな変化へと向かうための道筋であるとみなしている。
②学区変更問題
その一年後、この学習サークルに参加したことのある一人の教育委員が同じプロセスを学区の変更問題についても行うことを提案した。→各校からの代表が同数になるようにして100人以上の人々が学習サークルに参加した。別々の小学校で各回の会合を開催したことによって、参加者は、それぞれの学校を尊重するようになり、過剰な児童数がもたらす結果を理解するようになった。
この学習サークルが作成した最終報告書『学区を変えず、考えを変える』は、学区変更計画に対して、10点からなる提案を盛り込み、転校する生徒を65人に絞り込んだ。以前の学区変更の試みと比べると、地域社会による受容の度合いは目覚ましいものだった。
③「ポーツマツは聴く!」(市の長期計画)
2002年の後半、市の計画委員会(市長、行政のトップ、計画部、市議会議員の後押しを受けて)は、市の基本計画に市民の意見を盛り込むため、学習サークルを支援した。市のリーダーたちは、学習サークルを先導するために、非公式組織である「ポーツマスは聴く!」を立ち上げた。
運営側は、地域社会を構成するあらゆる部分の住民がプログラムを計画し、熟議に参加できるようにした。プログラムは、3つの段階からなっていた。
2003年1月に実施された第一段階では、300人の人が参加して、ポーツマス市の住民にとって「生活の質」とは何を意味するのかを定義し、それを持続させる方法を提案し、それを例外的に建設的で出席率の高かった住民参加の会議の場で、市の計画委員会に報告した。
2003年4月には、基本計画について熟議の第二段階を開始した。今度は、学習サークルは、行動を強調した。7つのグループがそれぞれ、生活の質に影響を与える課題を明らかにし、実行できることを議論し、計画委員会に対して提案した。→改定された基本計画が公表されると、市が学習サークルからの助言を採用したことは明らかだった。
2004年の夏の間には、第三段階の参加者が大小のグループで集まり、気づいたことについて話し合い、優先順位を設定し、市への最終的な意見書について議論し、影響をもたらし変化を可能とするために、市と協働する方法を模索した。
学習サークルを使うことで、住民は、自分たちの間の違いを建設的に公表し、生産的に協働できる公共空間を創り出しつつある。
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