« 『熟議民主主義のハンドブック』第二章 | トップページ | 『熟議民主主義』第14章「学習サークル」 »

2013年5月14日 (火)

『熟議民主主義』第三章

第三章以降は、さまざまな取り組みや方法についての記述となる。

三章以降については、気になったところを拾い読みしようと思っているが、最初の第三章は、「ナショナル・イシューズ・フォーラム(以下、NIF)」で、これは、スマ大にとっては、もっとも近似性が高いやり方だ。第二章の分類によれば、主催が市民団体やNPO、集まる人は、自薦か利害関係者。

アメリカでは、この方法は、ずいぶんいろいろな地域や目的で実施されている。

前の2章は、大学の教授等が書いている。なるほど、だからかと思ったのだが、「熟議民主主義」を支援しながらも、その効果が本物かどうかを評価することをすごく意識していて、効果がないという人への反論を数値で示せないことに自ら苛立っている。

一方、第三章は、フォーラムの実践をしている人が書いているので、フォーラム(熟議)をすると、参加者が変わっていくのが分かるということで興奮して書いている。私には、こちらの方が分かりやすい

1.NIFの始まり

1970年代の終わりに、元保険教育福祉長官でアラバマ大学学長のデイヴィッド・マシューズは、市民の政治離れを克服する方法を模索するために、学者、コミュニティの活動家、公職者、財団のリーダーらを招集→1981年にマシューズがチャールズ・F・ケタリング財団の理事長に就任、この財団の理事たちは、民主的な生活における一般市民の役割をこの財団の使命の中心をなすテーマとした。(マシューズは、世論分析のベテランであり、パブリック・アジェンダ財団の初代代表であるダニエル・ヤンケロヴィッチと連携)

1981年、NIFは立ち上げられた。この会議で、17の団体の代表者たちが国内政策協会を創設するために力を合わせることに合意した。この協会は、非党派的な全国ネットワークで、毎年、3つの喫緊の課題に焦点を当てることになった。

2.NIFとは

NIFは、市民的熟議のための市民フォーラムや研修機関を後援する諸々の組織や個人からなる特定の党派に属さない全国ネットワークで、他にもこうした組織はあるが、その中で最大のもの。

NIFのネットワークは、たとえば、2003年には、社会奉仕クラブ、大学、図書館、会員制の団体等によって、数千のフォーラムが開かれた。

現在、32の組織が30の州で「市民による熟議のための問題の枠組みを設定する仕方やフォーラムの運営や主催の仕方を学ぶことができる勉強会を行っている。

このネットワークで使用される教材の一部は、NIFI(ナショナル・イシューズ・フォーラム研究所)が開発したものである。NIFIは、①ある問題の背景をなしている情報を提供し、②熟議のための3つの一般的アプローチを説明する政策課題冊子(イシュー・ブック)、③司会進行役と主催者のための用例集、④学校における市民による熟議のためのカリキュラムである『教室のNIF』など、市民による熟議をサポートするための資料を開発し、普及に努めている。NIFIは、NIFネットワークのメンバーと共同して、問題の枠組みを設定することや議論のためのガイドブック作成なども行っている

発足間もない頃、課題を議論するための枠組みを設定するにあたって、パブリック・アジェンダ財団の力に頼っていた。→最近では、さまざまな団体と個人が、自分たち自身の課題を論じるための枠組みを設定する能力を身に付けるようになった。

この政策課題冊子は、公共の議論を行うための枠組みを与える媒体であり、人々が表面的で情報の裏付けのない意見を超えて、「公共的な判断」へと導かれるような会話のための触媒である。「公共的な判断」とは、「人々がある問題に参画し、それらをあらゆる側面から考察し、それがもたらす選択を理解し、自分たちが行う選択のすべての帰結を受け入れた場合に現れるところの高度に発達した市民の意見」(ヤンケロヴィッチ)

3.課題(イシュー)の選定と議論の枠組み

フォーラムの企画を始めるとき、主催者は、教育、違法薬物、リスクを抱える若者、移民、人種等々の論点について、既刊の政策課題冊子の一冊をしばしば用いる。過去22年にわたって70以上の論点に関する政策課題冊子がある。最近の課題としては、若者の暴力、政治とカネ、アメリカの統治、ギャンブル、アルコール濫用、人種・民族的緊張、テロリズムへの対応などがある。

これらは、大部分のアメリカ人の生活と直接関係があるものばかりで、これらの課題の大半は、今でも依然としてタイムリーなものである。(2004年にフォーラムが多く取り上げた問題は、移民、世界におけるアメリカの役割、健康の維持、ニュース報道と市民の信頼であった)

フォーラムの規模は、10数人から数百人まで、いろいろ。

司会進行役は、当該の課題についての専門家であることを期待されていない。むしろそうでない方が自由な意見交換を委縮させない。司会進行役は、政策課題冊子について、またあ、熟議をするグループが問題をただ話し合うよりもうまく目的を達成するのに役立つさまざまなガイドラインや実践について熟知しておくべきである。進行役は中立であり続けることを守るべき。

4.司会進行役は、5つのことを行う

①彼らは、基本的なルールを定め、敬意をもって聞くこと、自分自身のものとは異なる考え方を含むすべての考え方を考慮すること。そして、共通の土台を探究することを参加者に約束させる。聞くことが話すことと同じくらい重要であるという事実を強調しつつ全員に参加を促す。参加者が同意しない可能性がある考え方については、特にそうするよう心掛ける。参加者たちは互いに意見を表明し、そして理解するために人の話を聞くよう促す。

②進行役は、課題及びその課題に対する多様なアプローチを紹介する。進行役は、当該の課題の要約を含む短いビデオを流すこともある。大切なのは、参加者たちが関係する事実を調べることに時間の大部分を費やすことのないように、十分な情報を提供すること→参加者たちの教育水準や専門知識に関係なく、参加者を対等にする。

③進行役は、その課題に関する個人的な経験や関心について尋ねることで、人々を議論に引き入れる。特に課題が抽象的で馴染みのないものである場合、課題に関する個人的な経験を語ることは、議論に参加しているという感覚を作り出す助けとなる。

④進行役は、複数のアプローチについて熟議するよう仕向ける。進行役は、参加者がそれぞれのアプローチを十分にかつ公平に考慮し、それそれのアプローチを個人的な語りや経験を添えて説明し、それぞれのアプローチに関連するコストと結果を考慮するよう促す。進行役は、グループのメンバーが十分に言い表せていないさまざまな立場を考慮するように促す目的で、参加者たちにしばしば問いかける。たとえば、「仮にこのアプローチに同意しないとしても、このアプローチに賛同している議論のうちで、あなたが好意的に感じるもっとも説得力のある議論はどれでしょうか」と尋ねる。

⑤議論を1時間から数時間かけたあとで、進行役は振り返りと呼ばれる、議論の最期の部分をリードする。この段階では、進行役は、グループに対して、共通の主題と共通の土台を確認することを求める。進行役は、参加者に対して、本当に課題となっているのは何か、どの帰結が受け入れられないのか、どの点が未解決なのかを尋ねる。当該の課題についての共通理解をあえて口に出して表現することで、参加者は、それぞれが持ち寄った論点ではなく、グループとして言えることは何かという観点から話をする。そうすることで、参加者は、自分たちがどうしたら、一緒に前に進めるのかを理解しはじめる。多くの場合には、グループは、具体的な行動に移すための共通の土台を見出す。共通の土台がほとんど明らかにならない場合でも、参加者たちは、少なくとも、さらなる熟議を必要とする未解決の課題を言い表すことはでくる。

進行役に加えて、記録係りがつくこともある。記録係りは、議論を聞きながら、あるアプローチを支持するコメントとそれへの反対を表明するコメントをそれぞれ箇条書きすることで、話に出たことをまとめる。このようにして、参加者は、熟議の間に起きたことを比較考量することができる。

○この進行役と記録係りは、たとえば40人集まるフォーラムとして、それに1人ずつなのだろうか。あるいは、たとえば10人ずつグループ化し、それに1人ずつつくのだろうか。40人が一斉に議論するのではないだろう、たぶんグループ化するのだろうが、その流れが良くわからない。

5.概要報告書

ケタリング財団は、NIFと協働して、概要報告書の作成をサポートしてきた。報告書は、進行役の口頭での報告やまとめに基づいて作成される。これにより、地域のフォーラム・グループは、その声を全国的な話し合いの場に届けることができる。報告書は、全米規模のイベントで報告される。大統領図書館での会合や、連邦議会に対する説明会のかたちをとって行われる。

最近は、公共テレビ局で全米に放送される「ア・パブリック・ボイス」という1時間番組が特定の論点をめぐるフォーラムの結果を報告する。

連邦議会議員、全米ニュースのコメンテーター、当該の主題の専門家たちがワシントン特別区の全米記者クラブに集まり、全米各地でNIFのネットワークが実施したフォーラムの様子を録画したビデオを視聴する。

○論点を決め、その論点についての情報といくつかの異なるアプローチについて政策課題冊子をまとめるというのは、すごい。

○また、マスコミが取り上げ、連邦議会議員や発言力のある人たちがそのフォーラムの様子を参考にするまでになっているところはすごい。

 熟議の過程で、多くの参加者たちは、自己利益という狭量な感覚から、ある特定の行動方針が自分の地域社会において異なる状況にある他の人々に、さらには異なる世代に属する人々にどのような影響を与えるかを意識した、より懐の深い理解へと至る。参加者は、良識(コモンセンス)を共有するようになる。

 熟議は、コンセンサスや個人の見方における重要な変化を導くということを意味しない。実際に変化するのは、自分たちが合意しない相手に対する認識である。他の誰かの立場に同意しないとしても、しばしばその立場を認めてよりよく理解するようになる。

以下、本には、NIFの経験がもたらすインパクト(個人に、地域社会に)と3つの課題が書かれており、いずれも重要だが、ここでは、省略する。

« 『熟議民主主義のハンドブック』第二章 | トップページ | 『熟議民主主義』第14章「学習サークル」 »

市民」カテゴリの記事

民主主義」カテゴリの記事

熟議」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/89550/57383215

この記事へのトラックバック一覧です: 『熟議民主主義』第三章:

« 『熟議民主主義のハンドブック』第二章 | トップページ | 『熟議民主主義』第14章「学習サークル」 »

最近のトラックバック

2017年6月
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30  
無料ブログはココログ