●部活部屋のような雰囲気
前の記事で紹介した「仙人の家」に行く途中、東伏見コミセンでトイレをお借りした。
お役所なので、用もないのに、トイレを借りると怒られるかなぁと思いつつ、こそっと入り、一応自販機でお茶を買ってごまかした。
ところが、なんだか空気が違うのに気付いた。夜の19:30というのに、中学生か高校生か分からないけれど、子供たちがいっぱいいるのだ。それもただタムロしているという不良じみた感じではなく、皆、何人かでそれぞれ机を囲み、何かに取り組んでイキイキしている。
この空気って、とっても懐かしい。
言ってみれば、部活の部屋のような感じだ。
それぞれが好きなことをしながら、居心地がよく、居ついているというような感じ。
カップヌードルを食べている子もいる。
こんなことをしたら、部屋が汚れて怒られそうなのに、大丈夫なのだろうか。
事務局の人はいるようだが、別に注意したりもしていない。
こんな場所が田無にあるなんて!?と思った。
「仙人の家」は、大人も、子供も対象にした居場所づくりをするって聞いていたけれど、ええっ、もうあるじゃないの。「公的」にこんな場所があるのに、なんでまた別に作る必要があるの、と思った。
この疑問を田無ソメ研の人々にぶつけてみたら、あそこは、公設民営で、嶋田さんという人が長いことかけて、ああいうスタイルを実現するようになった、嶋田さんは、この「仙人の家」も、最初からかかわっているのだという。
そこで、急遽、嶋田さんにお目にかかりたくなり、メールをして、インタビューに応じてもらった。
●設計段階から子供たちが参加
嶋田さんは、もともと手話のボランティアなどをしてきた。結婚し、合併前の保谷に引っ越してきてから、ある保護司の方と知り合い、それをきっかけに子供たちの世話をするようになった。問題を抱えた子供には、警察や裁判所に幾度も出かけ、とことん面倒を見てきた。
道路拡張もあって、ここにコミュニティセンターを作ろうという話が持ち上がった時、日頃子供たちの面倒を見ている嶋田さんにも準備委員会に参加して欲しいと声がかかった。それなら、子供たちの声も反映して欲しいと提案、中学生3人を準備委員会に入れた。
すると、「食事が出来る場所が欲しい」、「音楽の練習がしたい」などの意見が出て、設計の段階から子供たちの意見を反映させた。
準備委員会は、その後運営協議会となり、さらにNPO法人西東京コミュニティひろばNCHを発足させた。現在は、指定管理者制度により、このNPO法人が西東京市から委託されて運営にあたっている。嶋田さんは、NPO法人の事務局長であり、東伏見コミセンのセンター長というお立場だ。
●自由に使えて、飲食もできる、ただしゴミは持ち帰り
1階の多目的ホールは、ゴミさえ持ち帰れば飲食自由なので、子供たちが勉強したり、イベントの相談などをしている。子供たちだけでなく、定年後、一日ここで過ごしている年配の方もおられるとか。すぐ近くに武蔵野北高校があるので、高校生が中学生に勉強を教えることもあるという。
「ゴミとか、食べかすとか、汚したりしないのですか」と聞いたところ、子供たちには、「君たちが汚したり、人に迷惑をかけると、規則が厳しくなって、居心地の悪いことになるよ」と言ってあるとのこと。
汚せば、自分たちにとって損だと分かれば、子供たちは、自分から綺麗に使おうとするのだ。
嶋田さんが子供たちを信頼していることが分かっているので、厳しいことを言われても、子供たちは納得してルールを守るのだ。
2階には、①調理室兼会議室、②会議室。調理室では、よく嶋田さんがカレーなど作って皆で食べるという。
●音楽機材の揃った部屋
3階には、③和室、④集会室兼音楽室がある。
この施設で、何よりうらやましいのは、④の音楽室だ。
ドラム、ギターアンプ、ベースアンプが揃っている。子供たちはもちろんのこと、最近では、フォーク世代のお父さんたちも結構使っているらしい。間仕切りで区切れる集会室ではダンスの練習もできる。
間仕切りを取り払えば、ちょっとしたイベントをここでやることも可能だ。
私は知らなかったのだが、こういう施設が揃ったコミセンは、他市にもあるらしく、東伏見に限ったことではないそうだ。時代が変わって、お茶室よりも、こうした音楽室の方が若者には喜ばれる時代なのだろう。
●子供たちが企画・運営する音楽イベント
ハードが揃っているだけでなく、子供たちが自主的に音楽祭を企画・運営できるというのも、ここの特徴と言えるだろう。
今年で第9回になる「ミュージック★パーティ・イン・西東京市」は、中学・高校生が企画から運営まで行っているダンス・バンドのコンサート。こもれびホールの大ホールを貸し切って行う。ホールを借りる予算は、市が負担してくれている。22歳まで出場資格があり、出身在学校は、小中高校から大学まで26校に及ぶ。
ドラえもんの世界には、いじめっ子もいるが、子供たちだけの世界が描かれている。しかし、最近では、塾通いやゲームなど個室で遊ぶ子が増え、子供たちが自分たちの世界を持つ機会はなかなか無いように思っていた。
でも、ここでは、それが可能だ。
それも、中学生や高校生、違う学校の生徒などが一緒に何かを成し遂げるチャンスがあるのだ。
なんだか羨ましい!
東伏見コミセンの年間延利用者数は5万5000人、約半分が中高生とのこと。予約の要らない1階の多目的ホールは年間2万6000人ほどが利用している。
集会室兼音楽室は、16時から19時、19時から22時の利用はほぼ100%で、年間延1万人が利用している。利用状況のエクセルはここ。「higashifushimikomisenriyoujyoukyou.xls」をダウンロード
武蔵野市など早くからコミセン利用が活発であったところは、自治会が運営しており、運営者も利用者も高齢化していることが課題らしい。青少年の利用が多い東伏見コミセンは、その意味でも注目されている。
なお、子供たちがきちんと利用しているといっても、壁を傷つけることもある。それを嶋田さんがこっそり壁紙を貼って修理し、さらに修理したところが見えないように、額を飾っていた。こういう細かい苦労はあるんですよと笑っておられた。
本当に、好きでなければできない仕事だ。
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